五百年後に再召喚された勇者 ~一度世界を救ったから今度は俺の好きにさせてくれ~

かたなかじ

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第二十五話

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 武器を注文した二人は次に防具屋へと向かう。

 一軒目はいわゆる量販店のような場所であり、一定の品質の防具を安価で提供している。
 そこではリツが気に入るものはなく、セシリアも自分の命を守る防具として選べるものはなかった。

「うーん……街の周囲で戦う冒険者とかにはああいうものがいいのかもしれないけど、さすがに俺たちが戦う相手のレベルを考えると難しいなあ」
「ですねえ……」
 とりあえず身を守るというレベルの装備では、彼らの戦いにおいて有効ではない。
 彼らの敵は魔王だからだ。

 収穫が得られずにつぶやきながらブラブラ街の中を歩いていくが、なかなか目ぼしい防具屋が見つからないため、先に冒険者ギルドへ向かうことにした。

 そこは冒険者と思しき人たちでごった返しており、ガヤガヤと騒がしい。
 
「こっちはわかりやすくて助かるが……」
「すごい人の数ですね」

 魔物がはびこっている昨今では、誰でもなることができる冒険者を志望する者は多い。
 弱い魔物を数倒す仕事もある。強力な魔物を倒す仕事もある。素材を集める仕事もある。

 この街でも冒険者の数は多く、今も建物を出入りする者はかなりの数いるのがわかった。

「ま、入ってみようか」
「はい!」
 やや気圧された二人だったが、自分たちの目的のためにはひるんでいる暇もないと、建物の中に入っていく。

 中に入ると、それだけで熱気が感じられた。
 受付では依頼を受ける者や、依頼の達成報告をする者が受付嬢とやりとりをしている。

 掲示板前では何人かが集まってどの依頼を受けるのかを吟味しているようだ。
 広いフロア内にはテーブルと椅子が設置されており、そこで休憩しながら今日のことや明日からのことなどを話し合っている。

「……俺たちがいくのは受付か」
 まずは冒険者登録をしなくてはならないため、二人は空いている受付に向かう。

 そこには、おっとりとした様子の犬の獣人女性がいた。
 垂れ耳と大きく愛らしい顔立ちは癒し系美女を思わせる。

「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
 口調も耳障りのいい優しいもので、笑顔で出迎えられたリツとセシリアは内心でホッとしている。

「あの、俺たち冒険者登録をしたいのですが……」
 それだけ言うと、彼女はふわりとほほ笑んで二枚の用紙を取り出す。

「それでは、こちらに必要事項の記入をお願いします。お名前と、年齢と、得意な戦闘方法ですね。最後の項目に関しては自己申告制なので、言いたくないことは未記入で大丈夫ですよ」
 中には特殊な戦い方をする者もいるため、記入の義務はない。
 丁寧で優しい物腰の受付嬢の言葉にリラックスして話を聞けていた二人は顔を見合わせて頷きあう。

「なるほど、了解です。じゃあセシリア、確認しながら一緒に書こう」
「はい」
 リツは少し身体を横にずらして、二人は隣り合って受付カウンターで書類の記入をしていく。

 二人とも名前の欄は苗字はいれない。
 年齢は正直に、戦闘方法は二人そろって片手剣とだけ書いていた。

「はい、それではそれぞれの書類の一番下の丸に一滴だけ血を垂らして下さい」
 リツたちから受け取った書類を一通り書き漏らしがないか確認した受付嬢は、台座に針がついたものを二人の前に一つずつ用意する。

 指示に従って、二人が血を垂らすと一瞬ぼやっと光を放つ。

「この書類をもとにして冒険者ギルドカードを作りますので少々お待ち下さい」
 書類を持って、奥に行った彼女は次の手続きに移っていくようだった。

 この書類に記入された内容、そして血による個体識別。
 これは魔導具によって行われ、全てのデータが登録されるとカードの形になってできあがる。

 少し待っていると、受付嬢はそれを持って戻って来た。
 ブロンズ色のカードがカウンターテーブルの上に二枚並んでいる。

「はい、これがお二人のカードになります。冒険者に関する説明は必要でしょうか?」
「一応お願いします」
 過去の知識の中にも冒険者のことはあったが、数百年の間にどんな変化があったかを知りたかった。

「それでは始めます。こほん……」
 一つ咳ばらいをしてから受付嬢は説明を始める。

・ギルドカードは初回発行時は無料、再発行は金貨一枚
・Fランクから始まり、E、D、C、B、Aと上がっていき、特別功績が認められるとSになる
・依頼には難易度がつけられ、自分のランクの一つ上の難易度まで受けられる
・報酬は基本的には満額、結果によって減額、増額されることもある 
 例)家の魔物を倒してほしいという依頼で家を壊せば、減額、もしくは修繕費支払い
・Cランクまでは、依頼の達成回数によってランクアップがある
・B、Aランクに上がるには試験に合格する必要がある
・依頼は掲示板に貼られ、朝、昼、夕に更新される

「――といったところですが、ご質問はありますか?」
 一つずつゆっくり説明し終えると、今度はリツたちから質問があるかを確認してくる。

「俺は……特にないですね」
 システム的なものは以前と大きく変わっていないため、リツは説明に満足している。

「そうですねえ……依頼の達成はどうやって判断されるのでしょうか? 素材集めならそれを納品すればいいと思いますが、魔物討伐だとその証拠が……」
 たまたま魔物がいなかったから、討伐したと嘘を吐く――という冒険者がいてもおかしくはない。
 セシリアは自分たちが正当な成果を上げても評価されないシステムならばどうしようと不安に感じているようだった。

「いいご質問ですね。魔物を倒すと、そのデータが自動的に冒険者ギルドカードに登録されていきますので、それが証拠になります。場所が指定されている依頼の場合、それに即した場所データでなければ討伐対象外となります」
(意外としっかりしたシステムだな。昔はそのあたりわりとガバガバだった気がする)
 リツが考えているとおり、この冒険者ギルドカードのシステムは過去のものよりも格段にグレードアップしており、身分証としての機能も強固になっている。

「ありがとうございます。あとは、複数人で同じ依頼を受けた場合はどうなるんですか? 例えば私たち二人でなにか魔物を倒す依頼を受けた場合です」
 二人ともそれぞれが依頼達成扱いになって報酬をもらえるのか。
 それとも先に報告した者のみが成功扱いになるのか、報酬だけは先のものだけだが、依頼達成実績だけはつくのか。

 セシリアは少しでも不安に思ったことは確認しておこうと慎重に質問していた。

「ふふっ、セシリアさんはなかなか良い質問をされますね。そちらもご説明しましょう。例えばお二人がなにか依頼を受ける場合は、パーティ登録をして頂いてパーティ全体で依頼を受ける形になります。達成した場合は、実績は全員に、報酬はパーティに支払われます。えっと、今後もお二人で活動されるならパーティ登録しておきますか?」
「「もちろんです!」」
 これには二人が即答する。
 彼らはこれから魔王討伐という大きな目標のために一緒に戦っていく仲間だと思っていた。

「はい、それではこちらの用紙にご記入を、あとお二人のカードをお預かりしますね」
 食い入るような二人の返事に微笑ましさを感じた受付嬢はクスッと笑ったあとに二人のカードを手に取る。

 こうして、二人はパーティとして登録された。


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