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第二十四話
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「棒、ですか?」
キョトンとしてリザベルトは首を傾げる。
「そう、この棒に少しずつ魔力を流し込んでいくと……」
テオドールの魔力に反応するように木がぼんやりと赤くなっていく。
「こうやって魔力の流れに反応して木の色が変わるんだ。ちょっとやってみてよ。使うのはどの木でも大丈夫だから適当に拾って」
いわれるがままにリザベルトは足元に落ちていた小さめの木の棒を拾う。
「えっと、魔力を少しずつ流し込んでいくんですよね」
「そうそう、まずは好きにやってみて」
先ほどもテオドールの言う通りにしたら自分にできるとは思っていなかったこともできたため、またやってみようと思ったリザベルトはゆっくりと木の棒へと魔力を流していく。
彼女の場合は青い色になっていた。
「うんうん、いい感じだね。ちなみに魔力を流しすぎると……」
テオドールが話している途中で、リザベルトが試していた木の棒がパチンと音をたてて割れる。
「きゃっ、わ、割れてしまいました……」
リザベルトはボロボロと崩れた木の棒とテオドールの顔を見比べて、不安そうな表情になっている。
「ははっ、予想どおりだから大丈夫だよ。ちょうどそのことを話そうとしていたところだったからね。えっとね、魔力を流していくんだけど、そのまま流していくと膨張してさっきみたいに割れちゃうんだ。だからこうやって……」
テオドールが木の棒に魔力を流していくと、先ほどと同じく木が赤くなる。
さらに、その魔力が光の筋となってグルグルと木の中を回っているのが見て取れた。
「すごい! ただ流すだけじゃなくて、循環させているんですね!」
テオドールは何気なくやっていたが、失敗しているリザベルトからすれば感動すべきことだった。
「正解、この循環も魔力が多すぎるとさっきみたいに割れるし、弱すぎるとそもそも目で確認することができない。し・か・も! 木の種類や大きさによっても耐えられる魔力量が変わってくるんだ」
「……む、難しすぎません?」
思っていた以上にテオドールが高度なことをやっていたため、少ししかめっ面になったリザベルトは思わず弱気な言葉を口にしてしまう。
「うーん、確かに最初は難しいかもしれないね。でも、これを繰り返してれば魔力操作がかなり上手になって攻撃の幅も広がると思うよ」
言いながら、テオドールは手にした木に適当に魔力を流している。
木は青、赤、木、緑と順番に色を変えていく。
更に、先っぽから色のついた魔力が流れ出て綺麗な火花を散らしながら模様を描いていく。
「まあ、これは手遊びみたいなものだけど、こんな感じでね。リザも慣れれば意識せずにできるようになるさ」
「……がんばります!」
テオドールが見せてくれた魔力練習、そしてそれができるようになった自身をイメージしたリザベルトは決意を新たにしていた。
「さ、それじゃ移動中も練習を続けていこうか。予備にいくつか木の棒も拾っておいて、と」
テオドールは風魔法で木の棒を拾い集めると、闇魔法で収納していく。
「すごい……」
流れるように簡単に行っているが、テオドールがやっていることは魔力を繊細に操作している。
リザベルトは今回の練習の難しさを知ったからこそ、これが高等技術の塊であると理解していた。
「さ、これでいいかな。それじゃ、行こうか」
「あれ? 草原で戦うんじゃないんですか?」
ここで腕試しをする。そう聞いていたため、リザベルトはテオドールに問いかける。
「リザの簡単な練習はできたから、次は本来の目的のために動こうかなと思ってね。さすがに草原じゃ弱い魔物の核を手に入れられるくらいだから、あそこに行こう!」
笑顔のテオドールはそう言いながら東の方角を指さしている。
「えっと、そう言われましても草原が広がっているだけなのですが……」
視界に広がる広大な草原。指さす方向にも草原しかないため、困ったような表情のリザベルトは首を傾げている。
「あー、さすがにここからじゃ見えないけど、あっちにしばらく進んだところに岩山があるんだよ。あそこなら魔物も美味しいのがいるし、鉱石もとれるからいいかなって」
「えええぇっ!?」
テオドールの言葉に、リザベルトは思わず大きな声を出してしまった。
その理由は……彼がニコニコしながら指さした岩山は、ここから徒歩で移動すれば二日はかかる場所であるためだった。
「ええっと、しばらくと言っても、あの岩山はだいぶ離れていますよね? 旅の準備をしていないのですが……岩山まではまさか徒歩、ですか?」
困惑しきったリザベルトは岩山までの道のりを思い浮かべ、念のため確認をとる。
「そうだねえ。馬車も飛竜もないから、基本的には徒歩……なんていうのは冗談だよ。さすがに歩いていたら、リザが言うようにかなり、そうだなあ……二日はかかっちゃうね。だから、ちょっとズルというか特殊な方法を使ってみようか」
言うと、テオドールは両手を大きく掲げる。
「さあ、リザも早くこっちにきて」
「は、はい!」
これから何が起こるのかわからないが、テオドールが急かすためリザベルトも慌てて駆け寄った。
「それじゃ、行くよ! 精霊さん、集まって!」
テオドールは手から魔力を放って、大気にいる風の精霊に呼びかける。
「?」
呼びかけても何も起こらないため、目をぱちぱちしながら身体を固くしたリザベルトは首を傾げている。
「――えっ? きゃっ!?」
次の瞬間、彼女は強い風に包み込まれているのを感じて驚きの声をあげる。
すると二人の身体は一気に宙へと浮かび上がり、まるで背中に羽が生えたかのように身体が軽く感じられた。
「さあ、飛ぶよ! しっかり掴まって!」
「は、はい!」
テオドールが声をかけるとリザベルトは慌てて彼の右腕にしがみついた。
「みんな頼むよ!」
その声に応えるように二人の身体がふわりと浮き上がって、そのまま岩山がある方向へと風が押し上げていく。
「いっけーーー!」
「わわわわあああああ!」
テオドールは懐かしい風が頬を撫でて空飛ぶ感覚に笑顔になっており、リザベルトは身体が浮かぶという初めての感覚に不安で声をあげてしまう。
「大丈夫大丈夫! 風の精霊が力を貸してくれてるから落ちないよ!」
「は、はいいいいいい!」
どんどんスピードと高度が上がっていくため、リザベルトは目を閉じ、必死になってテオドールに掴まっていた。
「リザ、僕たちは風に包まれているから大丈夫。僕に掴まったままでいいから、ゆっくりと目をあけてごらん」
高度が安定したので、テオドールは落ち着かせるような優しい声音で語りかける。
借金:3600万
所持金:約30万
キョトンとしてリザベルトは首を傾げる。
「そう、この棒に少しずつ魔力を流し込んでいくと……」
テオドールの魔力に反応するように木がぼんやりと赤くなっていく。
「こうやって魔力の流れに反応して木の色が変わるんだ。ちょっとやってみてよ。使うのはどの木でも大丈夫だから適当に拾って」
いわれるがままにリザベルトは足元に落ちていた小さめの木の棒を拾う。
「えっと、魔力を少しずつ流し込んでいくんですよね」
「そうそう、まずは好きにやってみて」
先ほどもテオドールの言う通りにしたら自分にできるとは思っていなかったこともできたため、またやってみようと思ったリザベルトはゆっくりと木の棒へと魔力を流していく。
彼女の場合は青い色になっていた。
「うんうん、いい感じだね。ちなみに魔力を流しすぎると……」
テオドールが話している途中で、リザベルトが試していた木の棒がパチンと音をたてて割れる。
「きゃっ、わ、割れてしまいました……」
リザベルトはボロボロと崩れた木の棒とテオドールの顔を見比べて、不安そうな表情になっている。
「ははっ、予想どおりだから大丈夫だよ。ちょうどそのことを話そうとしていたところだったからね。えっとね、魔力を流していくんだけど、そのまま流していくと膨張してさっきみたいに割れちゃうんだ。だからこうやって……」
テオドールが木の棒に魔力を流していくと、先ほどと同じく木が赤くなる。
さらに、その魔力が光の筋となってグルグルと木の中を回っているのが見て取れた。
「すごい! ただ流すだけじゃなくて、循環させているんですね!」
テオドールは何気なくやっていたが、失敗しているリザベルトからすれば感動すべきことだった。
「正解、この循環も魔力が多すぎるとさっきみたいに割れるし、弱すぎるとそもそも目で確認することができない。し・か・も! 木の種類や大きさによっても耐えられる魔力量が変わってくるんだ」
「……む、難しすぎません?」
思っていた以上にテオドールが高度なことをやっていたため、少ししかめっ面になったリザベルトは思わず弱気な言葉を口にしてしまう。
「うーん、確かに最初は難しいかもしれないね。でも、これを繰り返してれば魔力操作がかなり上手になって攻撃の幅も広がると思うよ」
言いながら、テオドールは手にした木に適当に魔力を流している。
木は青、赤、木、緑と順番に色を変えていく。
更に、先っぽから色のついた魔力が流れ出て綺麗な火花を散らしながら模様を描いていく。
「まあ、これは手遊びみたいなものだけど、こんな感じでね。リザも慣れれば意識せずにできるようになるさ」
「……がんばります!」
テオドールが見せてくれた魔力練習、そしてそれができるようになった自身をイメージしたリザベルトは決意を新たにしていた。
「さ、それじゃ移動中も練習を続けていこうか。予備にいくつか木の棒も拾っておいて、と」
テオドールは風魔法で木の棒を拾い集めると、闇魔法で収納していく。
「すごい……」
流れるように簡単に行っているが、テオドールがやっていることは魔力を繊細に操作している。
リザベルトは今回の練習の難しさを知ったからこそ、これが高等技術の塊であると理解していた。
「さ、これでいいかな。それじゃ、行こうか」
「あれ? 草原で戦うんじゃないんですか?」
ここで腕試しをする。そう聞いていたため、リザベルトはテオドールに問いかける。
「リザの簡単な練習はできたから、次は本来の目的のために動こうかなと思ってね。さすがに草原じゃ弱い魔物の核を手に入れられるくらいだから、あそこに行こう!」
笑顔のテオドールはそう言いながら東の方角を指さしている。
「えっと、そう言われましても草原が広がっているだけなのですが……」
視界に広がる広大な草原。指さす方向にも草原しかないため、困ったような表情のリザベルトは首を傾げている。
「あー、さすがにここからじゃ見えないけど、あっちにしばらく進んだところに岩山があるんだよ。あそこなら魔物も美味しいのがいるし、鉱石もとれるからいいかなって」
「えええぇっ!?」
テオドールの言葉に、リザベルトは思わず大きな声を出してしまった。
その理由は……彼がニコニコしながら指さした岩山は、ここから徒歩で移動すれば二日はかかる場所であるためだった。
「ええっと、しばらくと言っても、あの岩山はだいぶ離れていますよね? 旅の準備をしていないのですが……岩山まではまさか徒歩、ですか?」
困惑しきったリザベルトは岩山までの道のりを思い浮かべ、念のため確認をとる。
「そうだねえ。馬車も飛竜もないから、基本的には徒歩……なんていうのは冗談だよ。さすがに歩いていたら、リザが言うようにかなり、そうだなあ……二日はかかっちゃうね。だから、ちょっとズルというか特殊な方法を使ってみようか」
言うと、テオドールは両手を大きく掲げる。
「さあ、リザも早くこっちにきて」
「は、はい!」
これから何が起こるのかわからないが、テオドールが急かすためリザベルトも慌てて駆け寄った。
「それじゃ、行くよ! 精霊さん、集まって!」
テオドールは手から魔力を放って、大気にいる風の精霊に呼びかける。
「?」
呼びかけても何も起こらないため、目をぱちぱちしながら身体を固くしたリザベルトは首を傾げている。
「――えっ? きゃっ!?」
次の瞬間、彼女は強い風に包み込まれているのを感じて驚きの声をあげる。
すると二人の身体は一気に宙へと浮かび上がり、まるで背中に羽が生えたかのように身体が軽く感じられた。
「さあ、飛ぶよ! しっかり掴まって!」
「は、はい!」
テオドールが声をかけるとリザベルトは慌てて彼の右腕にしがみついた。
「みんな頼むよ!」
その声に応えるように二人の身体がふわりと浮き上がって、そのまま岩山がある方向へと風が押し上げていく。
「いっけーーー!」
「わわわわあああああ!」
テオドールは懐かしい風が頬を撫でて空飛ぶ感覚に笑顔になっており、リザベルトは身体が浮かぶという初めての感覚に不安で声をあげてしまう。
「大丈夫大丈夫! 風の精霊が力を貸してくれてるから落ちないよ!」
「は、はいいいいいい!」
どんどんスピードと高度が上がっていくため、リザベルトは目を閉じ、必死になってテオドールに掴まっていた。
「リザ、僕たちは風に包まれているから大丈夫。僕に掴まったままでいいから、ゆっくりと目をあけてごらん」
高度が安定したので、テオドールは落ち着かせるような優しい声音で語りかける。
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