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第二十三話
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ヤマトとユイナが自分の力を認めたことで気をよくしたグタールは本題に移る。
「それで、お前たちがオーガとジェネラルゴブリンの魔石を持ってきたんだな? そして、冒険者ランクはEとF、それであってるか?」
ヤマトたちを疑うというよりはただ確認しているその質問に二人は黙って頷く。
「はあ、なるほどなあ。しかも、自分たちで倒したと言い張っているって話だが……ふっ、あながち嘘でもないようだな」
腕を組んで一息ついたグタールはヤマトとユイナを見ながらにやりと笑っている。
「……わかるんですか?」
ヤマトは二つの意味を込めて質問をする。
「あぁ、なんとなくだがお前たちがそこらの冒険者よりも上の力を持っているということはな」
自信満々に頷いて答えたその言葉にヤマトは内心安堵する。ユイナもヤマトの隣で同様に安心しているようだった。
「強者は相手の力がわかる――みたいなものですかね?」
更にヤマトは念のため確認をする。自分たちのようにステータスとして見えているのか知りたかった。
「まあ、そんなもんだな。お前たちの力がそれなりに強いというのはわかる。……ま、何が強いのかまではわからんがな」
肩を竦めたグタールは自分が二人に持った印象を口にした。
「それで、お前たちが持ってきた魔石だがな、ギルドとして買い取るのは少し難しい」
「なんでですか?」
ヤマトは単純に疑問を口にした。ユイナも彼の隣できょとんと首をかしげている。
「お? 今の俺の話を聞いて怒るかと思ったんだが、落ち着いているな」
その反応はグタールにとって予想していなかったものだったようだ。
「別に怒るような話ではないですからね。俺はただ理由が聞きたいだけです」
何か理由があってのことだろうと語るヤマトの言葉にユイナも笑顔で頷いている。
「ほう、余裕があるんだな。それだったら話が早いな、まずは買取ができない理由から話そう。他の素材に関して、例えば皮や骨や角の買取は問題なく行える。ただ魔石は貴重だし、値段が高いから、うちでは実力に見合った……つまり提出した冒険者のランクに見合ったものしか買取できない仕組みになっている」
なぜそんなことになっているのか、ヤマトとユイナにはわからないため、二人とも首をかしげている。
「不思議そうな顔をしているな。これは決まりだから――ということで納得、はしないだろうな……」
大きく息をついたグタールの言葉に今回も二人は頷いていた。
「……昔、低いランクのものが魔石を持ち込んでギルドで買い取ったことがあるらしい。しかし、それは別の冒険者が倒したものであって、そいつはたまたまモンスターの死体から手に入れたらしい。それで低ランクの冒険者のほうが貴族のボンボンでな。まあ、揉めに揉めたわけだ……そこからはグダグダでな。まあそんなことから、それ以降、そういうルールになったんだ」
困ったようにやれやれと仕草をしながら話すグタールの説明を聞いた二人は、そんな設定があったかどうかゲーム時代のことを思い出していたが、どうにもそんな話を聞いた記憶がなかった。
「……そんなに考え込むことか? まあいい、それでギルドとしては買取はできないんだが、これをそのまま返すのもあれだから俺が個人的に買い取ってやろう。もちろん値段も適正価格でな」
考えに集中しようとしていた二人だったが、買い取ってもらえるというグタールの話によって一気に意識を引き戻された。
「えっ? 買い取ってもらえるんですか?」
「あぁ、別にその魔石代くらい出しても俺の懐は対して痛まんからな」
さすがのギルドマスターといった態度のグタール。ふんっと鼻を鳴らしている。
「それで、ものは相談なんだがランクを上げるつもりはあるか?」
そして見極めるようにヤマトたちをじっと見つめながら切り出したグタールの言葉を聞いて、ユイナは期待に大きく目を見開いていた。この展開こそがユイナが待ち望んでいたものだった。
「あります!」
「はい」
大きく手を挙げたユイナはいきいきとした様子で、こくりと頷いたヤマトは冷静に返事を返した。
「ふむ、だったら一つ依頼を受けてくれると助かる。それをクリアできたら、二人のランクをCに上げてやろう」
これによってユイナは二ランク、ヤマトに至っては一気に三ランク上がることとなる。これは早いランク上げをしたかったヤマトたちにとってまさにチャンスだった。
冒険者はランクをあげることで、受けられる依頼の幅が広がり、また今回のような魔石買取に関するトラブルは避けることができる。
更に言えば、Cランクになれば貴族などからの依頼を受けることもできるため、依頼の価格が破格になることもある。
「やります!」
そのことを知っているユイナは即答するが、隣のヤマトは顎に手を当てて考えていた。
「……どんな依頼ですか? まずは内容を聞いてから判断したいと思います」
勢いのユイナ、冷静なヤマト。ここでも二人は良いバランスをとれていた。
「まあ、そうだろうな。依頼っていうのは調査だ、ここから北に武の街ザイガってのがあるのは知っているか?」
そこは獣人が多く住む街であり、格闘士と斧士のスタートの街でもあった。
「はい、一応知ってます。最近は行ってませんが、昔何度か行ったことがあるので」
ふわりとほほ笑んだヤマトはある意味では嘘をついていない返答をする。
「そうか、だったら話が早いな。その街に向かうまでに大平原があるのは知っているな?」
グタールの質問に真剣な表情で二人は頷いた。そのあたりはゲームの頃と変わらない地理のようだった。
「実はそこに、大量のモンスターが沸いているせいで街との行き来ができなくて困っているんだ。その原因の調査を頼めるか?」
「もっちろん!」
またユイナが即答したため、グタールはヤマトの顔を見て大丈夫かと確認する。二人の間で最終的な決定権を持つのは彼だろうと予想したからだ。
「了解しました。ただ一つ確認があるんですけど……」
「――なんだ?」
気になることは解消しておきたいと、グタールはどんな質問でも答える用意はしていた。
「原因、取り除いちゃってもいいんですよね?」
爽やかな笑顔でそう言いきったヤマトにグタールは一瞬何を言ったのか理解できず、絶句してしまった。
ヤマト:剣士LV35、魔術士LV25
ユイナ:弓士LV30、回復士LV15
エクリプス:馬LV15
「それで、お前たちがオーガとジェネラルゴブリンの魔石を持ってきたんだな? そして、冒険者ランクはEとF、それであってるか?」
ヤマトたちを疑うというよりはただ確認しているその質問に二人は黙って頷く。
「はあ、なるほどなあ。しかも、自分たちで倒したと言い張っているって話だが……ふっ、あながち嘘でもないようだな」
腕を組んで一息ついたグタールはヤマトとユイナを見ながらにやりと笑っている。
「……わかるんですか?」
ヤマトは二つの意味を込めて質問をする。
「あぁ、なんとなくだがお前たちがそこらの冒険者よりも上の力を持っているということはな」
自信満々に頷いて答えたその言葉にヤマトは内心安堵する。ユイナもヤマトの隣で同様に安心しているようだった。
「強者は相手の力がわかる――みたいなものですかね?」
更にヤマトは念のため確認をする。自分たちのようにステータスとして見えているのか知りたかった。
「まあ、そんなもんだな。お前たちの力がそれなりに強いというのはわかる。……ま、何が強いのかまではわからんがな」
肩を竦めたグタールは自分が二人に持った印象を口にした。
「それで、お前たちが持ってきた魔石だがな、ギルドとして買い取るのは少し難しい」
「なんでですか?」
ヤマトは単純に疑問を口にした。ユイナも彼の隣できょとんと首をかしげている。
「お? 今の俺の話を聞いて怒るかと思ったんだが、落ち着いているな」
その反応はグタールにとって予想していなかったものだったようだ。
「別に怒るような話ではないですからね。俺はただ理由が聞きたいだけです」
何か理由があってのことだろうと語るヤマトの言葉にユイナも笑顔で頷いている。
「ほう、余裕があるんだな。それだったら話が早いな、まずは買取ができない理由から話そう。他の素材に関して、例えば皮や骨や角の買取は問題なく行える。ただ魔石は貴重だし、値段が高いから、うちでは実力に見合った……つまり提出した冒険者のランクに見合ったものしか買取できない仕組みになっている」
なぜそんなことになっているのか、ヤマトとユイナにはわからないため、二人とも首をかしげている。
「不思議そうな顔をしているな。これは決まりだから――ということで納得、はしないだろうな……」
大きく息をついたグタールの言葉に今回も二人は頷いていた。
「……昔、低いランクのものが魔石を持ち込んでギルドで買い取ったことがあるらしい。しかし、それは別の冒険者が倒したものであって、そいつはたまたまモンスターの死体から手に入れたらしい。それで低ランクの冒険者のほうが貴族のボンボンでな。まあ、揉めに揉めたわけだ……そこからはグダグダでな。まあそんなことから、それ以降、そういうルールになったんだ」
困ったようにやれやれと仕草をしながら話すグタールの説明を聞いた二人は、そんな設定があったかどうかゲーム時代のことを思い出していたが、どうにもそんな話を聞いた記憶がなかった。
「……そんなに考え込むことか? まあいい、それでギルドとしては買取はできないんだが、これをそのまま返すのもあれだから俺が個人的に買い取ってやろう。もちろん値段も適正価格でな」
考えに集中しようとしていた二人だったが、買い取ってもらえるというグタールの話によって一気に意識を引き戻された。
「えっ? 買い取ってもらえるんですか?」
「あぁ、別にその魔石代くらい出しても俺の懐は対して痛まんからな」
さすがのギルドマスターといった態度のグタール。ふんっと鼻を鳴らしている。
「それで、ものは相談なんだがランクを上げるつもりはあるか?」
そして見極めるようにヤマトたちをじっと見つめながら切り出したグタールの言葉を聞いて、ユイナは期待に大きく目を見開いていた。この展開こそがユイナが待ち望んでいたものだった。
「あります!」
「はい」
大きく手を挙げたユイナはいきいきとした様子で、こくりと頷いたヤマトは冷静に返事を返した。
「ふむ、だったら一つ依頼を受けてくれると助かる。それをクリアできたら、二人のランクをCに上げてやろう」
これによってユイナは二ランク、ヤマトに至っては一気に三ランク上がることとなる。これは早いランク上げをしたかったヤマトたちにとってまさにチャンスだった。
冒険者はランクをあげることで、受けられる依頼の幅が広がり、また今回のような魔石買取に関するトラブルは避けることができる。
更に言えば、Cランクになれば貴族などからの依頼を受けることもできるため、依頼の価格が破格になることもある。
「やります!」
そのことを知っているユイナは即答するが、隣のヤマトは顎に手を当てて考えていた。
「……どんな依頼ですか? まずは内容を聞いてから判断したいと思います」
勢いのユイナ、冷静なヤマト。ここでも二人は良いバランスをとれていた。
「まあ、そうだろうな。依頼っていうのは調査だ、ここから北に武の街ザイガってのがあるのは知っているか?」
そこは獣人が多く住む街であり、格闘士と斧士のスタートの街でもあった。
「はい、一応知ってます。最近は行ってませんが、昔何度か行ったことがあるので」
ふわりとほほ笑んだヤマトはある意味では嘘をついていない返答をする。
「そうか、だったら話が早いな。その街に向かうまでに大平原があるのは知っているな?」
グタールの質問に真剣な表情で二人は頷いた。そのあたりはゲームの頃と変わらない地理のようだった。
「実はそこに、大量のモンスターが沸いているせいで街との行き来ができなくて困っているんだ。その原因の調査を頼めるか?」
「もっちろん!」
またユイナが即答したため、グタールはヤマトの顔を見て大丈夫かと確認する。二人の間で最終的な決定権を持つのは彼だろうと予想したからだ。
「了解しました。ただ一つ確認があるんですけど……」
「――なんだ?」
気になることは解消しておきたいと、グタールはどんな質問でも答える用意はしていた。
「原因、取り除いちゃってもいいんですよね?」
爽やかな笑顔でそう言いきったヤマトにグタールは一瞬何を言ったのか理解できず、絶句してしまった。
ヤマト:剣士LV35、魔術士LV25
ユイナ:弓士LV30、回復士LV15
エクリプス:馬LV15
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