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第二十四話

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 その後、二人は冒険者ギルドを出て街を歩いていた。

「ふふっ、さっきのグタールさんの顔、すっごく面白かったねー!」
 ユイナはヤマトの言葉に反応できなかったグタールを思い出してふふふと口元に手を当てて笑っていた。
「……さすがに最低ランクの冒険者が言うには生意気すぎたかな?」
 心配そうな表情のヤマトは反対に自分の発言を反省しているようだった。

「うーん、いいと思うけどねっ――それより今度のも橋と同じだと思う?」
 橋での大量のモンスターの登場、その後の瘴気をまとった謎のモンスターの襲来、それが大平原でも起こっているのだろうか? それがユイナの予想だった。

「可能性は高いね。ルフィナとリーガイアでもそうだったけど、何かが起こっているのかもしれない……そうだ、話は変わるけど、ユイナは誰か知ってるNPCに会ったかい?」
 普段の雰囲気を取り戻したヤマトの質問にユイナは自分の記憶を辿っていく。

「……そういえば、ない、かもしれない」
 忘れているだけで会ったのかもしれないし、自分自身がNPCの名前をそこまで細かく覚えていないだけの可能性もあるため、断定はしなかったが、それでも一人も思い浮かばなかった。

「だよね、俺もそうなんだ。デザルガには結構長くいたから、NPCの名前や顔なんかもなんとなく覚えていたはずなんだけど、誰一人として一致しなかった……」
 考え込むようなヤマトの言葉に、ユイナは絶句して足を止めてしまう。

「どういうことなんだろ……?」
「わからない、けど俺が行ったダンジョンのことや橋でのことに加えて今回の依頼。どれをとってもゲームとの大きな相違点だと思う。結論は出せないけど今のところの予想としては、俺たちはゲームと異世界のハイブリッドな場所にいるんじゃないかと思っているんだ。間違えていても、そう考えていれば対応しやすいと思うんだよね」
 真剣な表情で語るヤマトの説明を聞いて、ユイナはなるほどと納得していた。

「そう考えていれば納得できるかも……ねえ、私の考えも聞いてもらってもいいかな?」
「もちろん」
 ふわりとほほ笑み合った二人は再び歩を進めて、人の少ない場所へと移動していた。

 それは街の北にある小さな公園だった。通りの外れにあるからか、静かな場所で誰も居ない。

 等間隔にいくつか並べられたベンチに腰掛けたユイナが話を始める。
「……私は最初、ゲームの世界だと思っていたの。その理由はメニューを使えるし、アイテムボックスも当然のように使える。それに、ステータスも見ることができるからね。逆に他の人たちがそういうのが見えないのはやっぱりNPCだからなのかなあって」
 静かな声音で話し出したユイナのそれはヤマトも最初に思ったことだった。

「でも……」
「そう……でも、なんだよね。やっぱりここはゲームとは色々違って、複数の職業をつけられるとか色々とやれることが増えてるし、ゲームの頃は設定だけだったギルドマスターまで出てきたりとなると、やっぱりゲームによく似た異世界なのかなとも思ったり」
 真面目な表情でユイナは自分の考えを次々に話していき、ヤマトは頷いて聞いていく。

「だから、そのどちらもでない、どちらでもあるという考えが一番しっくりくるなあって思ったんだよね」
 話をすることでユイナは気持ちの整理を着けたかったのだろう。一通り話し終えてふにゃりと柔らかく微笑んだユイナの表情には曇った色はない。一番信頼するヤマトが同じ考えだったことで安堵したような表情だ。

「うん、考えてもわからないからね。それは徐々に調べて行こう。ただ、ゲームだとたかをくくっていても危険だし、逆に異世界だと思っているとゲームの頃にできたことを忘れてしまいそうになるからどっちも気をつけないとだね」
「うん!」
 最後にヤマトが話をまとめて、ユイナは大きく頷いた。そこで彼女は思い出したように口を開く。

「そういえばさ、ギルドの職員さんとかギルドマスターさんもそうだけど、いっぱいいろんな種族の人たちがいて、さすがは中央都市リーガイアだよね!」
「そうだね、俺らもヒューマン族とエルブン族なわけだけど、ずっとこの姿でゲームしてたからこっちに来てもそこらへん違和感なかったし」
 ギルド職員のエルブン族とジャイズ族の男性。ギルドマスターのチャイル族のグタール。ここに来るまでにも街のあちこちに他の種族の人たちの姿も見られた。

「もしかしたらゲームの時になかった種族の人たちにも会えちゃうかもだね! 楽しみー!」
「楽しみだね――それじゃ、そろそろ出発しようか」
 穏やかな口調で言ったヤマトが立ち上がるのと同時に、二人の耳に何やら騒々しい声が聞こえてきた。
「なんだろ? 街の北門のほうみたいだけど……行ってみよっか!」
 考えるより行動するユイナはそう言った時には既に走り始めていた。



 走った二人が北門に到着した頃には、既に人だかりができ始めていた。
「はあはあっ、誰か、誰か話のわかる人に取り次いでくれ!!」
 必死に叫ぶその声の主はアニマ族といわれる猫耳をもつ獣人の男性だった。装備を見る限り、恐らくは冒険者でそれなりに腕に自信がありそうな顔をしている。

 息を乱しながら言う彼は決死の表情で周囲にいる人たちに声をかけていた。
 しかし、話のわかる者といっても、大きな街であるがゆえに誰にどう声をかければいいのか、住民たちも判断しかねて動けずにいた。

 ヤマトたちは、人ごみの中心を見ようとするがあまりの人の多さにそれはかなわず、後方から様子をうかがうことしかできないでいる。
 獣人の男性は状況が変わらないことに苛立ちを覚えていたが、その彼の希望はしばらくしてかなえられることになる。

「――どけ、どいてくれ!」
 その時、人だかりをかき分けて騎士たちがぞろぞろとその場に姿を現す。その中心には、一人だけ様子の違う鎧を身にまとったヒューマン族の男性が真剣な表情で口を固く一文字に結んで歩いている。

「ふむ、道をあけてくれたまえ」
 また別の方向からもゆったりとした足取りでエルブン族の貴族らしき男性が顔を見せる。

「悪いな、ここはお前たちがどうこうできるところじゃない。さっさと引き上げてくれ」
 冒険者たちが率先して道を開けたところから姿を現したのは先ほどヤマトと話をしていたグタールだった。

 騎士はこの街を防衛する騎士隊の者で、その中央にいるのが隊長のようだ。
 そして、貴族の男はこの街の領主。グタールは冒険者ギルドのマスターである。


 この街の『話のわかる者』三人がそろい踏みとなった。


「それでは、うちの屋敷に来てもらおうか」
 それは領主の言葉だった。





ヤマト:剣士LV35、魔術士LV25
ユイナ:弓士LV30、回復士LV15
エクリプス:馬LV15
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