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第八十七話

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「これが話に聞いた銃剣か……トリガーがあるからもしやと思ったが……」
 しげしげと銃剣シュトゥークを見る店員は、ヤマトの武器を知っているようだった。所有者である彼の確認をひとつひとつ取りながら、鞘を外してみたり、いたるところをいろんな角度から見ている。

「銃剣を知っているんですか?」
 確かめるようなヤマトの質問に、銃剣から目を離さずに店員は頷いた。
「あぁ、話には聞いたことがある。特定の職業に就くことで使うことができる武器だと聞いている。ここで長いこと武器屋を営んでいるが、この武器は初めて見たよ……いやあ、やっぱり店頭には出ないとなあ」
 珍しいものを見れた感動をしみじみと感じ入りながら店員は嬉しそうに目を細める。そこまで言うと、店員は名乗っていないことにハッとしたように気づいた。

「あ、すまない。武器のほうにだけ気が向いていた。俺はこの店の武器屋の店長でアムスという。普段は下のものに任せることが多いんだが、いやあ、今日は店に顔を出して本当に正解だったよ。ありがとう、いいものを見せてもらった」
 ニコニコと満面の笑みのアムスは、珍しいものを見せてくれたヤマトに感謝の気持ちを伝え、大事なものを扱うようにしてゆっくりと銃剣を返却する。

「そんなに珍しいものだったんですか……確かに俺もこの手の武器はこれが初めてですけど」
 なるまでかなりの経験を積まなければならない聖銃剣士という職業自体がかなりレアなものであり、その武器となっては一般的には流通していないようだ。ヤマトはそんな職業に就けたことを誇りに思った。
「そこらに売ってることはないだろうな。一点もので鍛冶師に作ってもらう……というのも、技術的になかなか難しいだろう」
 これと同じものを作れる職人がいても、需要が少ないため、そうそう作る機会はない。アムスは困ったような表情で首を振った。

「そうですか……では上位の武器を手に入れるとなると、色々手順が必要になりそうですね……」
 あくまでこれは初期武器であり、上を目指すとなるとそれ相応のランクの武器が必要になる。そう考えると同種の武器の入手方法を考える必要が出てくる。

 ヤマトたちの家の倉庫にもさすがに銃剣は置いてなかったため、そこをアテにすることも難しかった。

「そうそうあるもんじゃないが、もし情報が入ったら調べておいてやるよ。値段が手の届く範囲だったら、うちで購入して陳列するのもいいかもな」
 噂の中にだけ存在した銃剣が目の前にあるという事実が、彼の武器収集欲に火をつけた。アムスは何度も頷いて銃剣を手に入れる構想を練り始めている。

「もちろん、手に入ってあんたが客として来たら優先的に売ろうじゃないか。――金はもらうがな!」
 カラカラと笑いながら堂々と宣言するアムスの物言いは快活な人柄を表しており、ヤマトは嫌な印象を抱くことはなかった。

「はい、よろしくお願いします。多分ですけど、俺以外で買いに来る人がいたら、その人は完全な収集目的、もしくは展示したいんでしょうね」
 だからこそ爽やかな笑顔で返事をする。
 珍しい武器を展示すれば、それだけで目玉になり、客引き効果を持つこともあるだろうとヤマトは考えた。

「武器を売る身としては使えるやつに買ってもらいたいもんだな。もちろんコレクションというのもわかるし、俺だってその気持ちがないと言えばうそになる。だけど――あんたは使えるんだろ?」
 首の後ろを掻きながらそこまで言ったアムスは、最後の言葉はニヤリと意味ありげに笑いながらヤマトに確認する。
 ヤマトの銃剣を持っている姿――そのたたずまいから、ファッションで装備しているのではないことはわかっていた。

「えぇ、職業の名前は言いませんけど、それであっていますよ。これは知る限り、俺しか装備できない逸品だと思います」
 銃剣の入った鞘を大事そうにそっと撫でながらヤマトはしっかりと頷いた。それはアムスの心を奮い立たせた。

「それさえわかれば十分だ。俺のほうでも同じ武器を持っているやつや、情報がないかあたってみる。あとは作れないか、もだな」
 これだけ大きな店を営んでいればたくさんの人脈があるようで、アムスは頭の中でどうすれば作れるかを思案していた。

「作れないかって……可能なのですか? それこそ分解でもしないと、構造がわからないと思ったんですが……」
 先ほどアムスは銃剣をじっくりと確認していた。しかし、それは外観を確認しただけであり、武器の中身まではわからないはずだった。

「まあ、さすがに珍しいものを見たからって、それを分解したいから貸してくれとは言えないからなあ。あとは、その外観から予想される機能と、文献にある情報から推測して作るしかないな……まあ、そっちのほうは期待しないでくれ。一応鍛冶師として武器を作ったりもしているが、さすがに情報が少ないものをそうそう簡単に作れるとは思わないからな」
 口では期待するなと言いながら、それでもなんとかしてできないものかと、考えを巡らせている様子がうかがえる。職人としての魂にも火をつけたのだろう。

「その……この武器を使っているところを見せたら、それ捗ったりしますか?」
 彼のやる気に触発されたヤマトの提案を聞いたアムスは、カッと目を大きく見開く。そして、ヤマトとの距離を一気に詰めて力強くその手をとった。

「是非! 捗る! 役にたつ! なにより、単純に見せて欲しい!」
 もう少しで唇同士がくっついてしまうのではないかと思わされるほど距離を詰め、すごい勢いで言ってくるアムスにヤマトはやや引き気味になるが、それでも彼の意欲がうまい方向にいけば、上位武器が作れるかもしれないと考えていた。

「わかりました。……でも、どこで?」
「あのカウンターの裏から、裏庭に行けるのでそこでお願いします」
 それまでのフランクさをかき消し、深々と頭を下げるアムス。この機会を逃しては銃剣を見ることができないため、最後のチャンスと考えていた。

「ヤマトー、どうしたのー?」
「ご主人様、いかがなされました?」
 その時、ユイナとルクスの二人がちょうど同じタイミングで買い物を終えてヤマトのもとへと戻ってきた。
 店員と思しき森林の民に頭を下げられているヤマトを不思議そうな表情で見ている。

「あぁ、この武器を使うところを見せて欲しいっていう話でさ。それを参考にすれば、銃剣を作り出せるかもしれないということなんで、別に見せてもいいかなって思ってるんだよ」
 そう説明するヤマトの後ろでアムスが何度も懇願するように頷いていた。

 まさかヤマトに同行者がいると思っておらず、その同行者に反対されてしまっては話がおじゃんになってしまうとハラハラしながら必死の頷きだった。

「へー、いいんじゃない? 私たちも使ってるとこみてみたい! ねー?」
 面白そうな話に興味を持ったユイナの問いに、ルクスは大きく頷いていた。
 そもそも二人がどれだけの実力なのかもちゃんと知っておきたいと思っているルクスだった。

「というわけで、二人の了承もとれたから行ってみましょうか」
「――やった! こっちだ、来てくれ!」
 気が変わらない内にと、アムスはやや足早に三人を裏庭へと案内していく。









ヤマト:剣聖LV207、大魔導士LV203、聖銃剣士LV1
ユイナ:弓聖LV204、聖女LV193、聖強化士LV67、銃士LV1、森の巫女LV1
エクリプス:聖馬LV133
ルクス:聖槍士LV1、サモナーLV1
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