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#EXTRA 夕な(後)
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覚悟が決まらなくて返事をせず、のろのろしていた私に見切りをつけたように、アンデルが体を起こした。離れていってしまう。
反射的にその腕を掴んでいた。
「いかないで。続きを、……して。私も、したいから」
引き止めたくて、精一杯の勇気を振り絞って上半身を起こしてアンデルの唇に口づけた。
「喜んで。
ふふ。自分からしたいって言ってくれたのに恥ずかしそうにするんだね。裸になるのは結構平気なのに、面白い」
「もう初めてでもないのに、変かな……」
「いつも堂々としてるあなたが恥ずかしがっているところを見るの、僕は好きだよ」
「なんで……ん」
待ち望んでいた口づけは、静かで深い。いつも植物と対話しているときのように、アンデルは私のすべてを確認するかのごとく、口内の粘膜を慎重に優しく舌の先で探っていく。ただし、見逃しはしないというように、歯列の裏から舌の付け根まで何度も何度も執拗にそれを繰り返されるので、私の意識は自然とそちらに集中してしまう。上顎の粘膜を擦られ、鼻に抜けるようなむず痒さに耐えかねて、彼の舌に自分の舌を這わせた。
「あふ……ふぅ……」
舌を甘噛みされ、舌先でその付け根の部分や表面をくすぐられ、声がでてしまう。自分のこういう声が苦手だ。
「んぁっ」
きゅんと甘い刺激が胸の先に走って、声が漏れてしまった。アンデルの片手が、寝間着の上からまた乳首を摘んでこりこりと刺激してくる。先程まで煽られていた快感がすぐに蘇ってくる。つねられているのは胸の先なのに、腰の奥の方がそわそわしてしまって、落ち着かなくて膝をすり合わせた。陰核がずきずきと疼いていて、辛い。
「すごく硬くなってる。服の上からでもわかるよ」
「自分でそう仕向けたくせにぃっ、んっ! あうっ」
「そうだね。そのとおりだよ。ハイリーがどうすれば気持ちよくなるか、少しだけわかってきたから。本当はもう、嫌がる余裕もないくらい追い詰められるのが理想なんだけれど、そこまではまだかな」
「ふ、不吉なこと、いわない、で、ほしい……」
うん、と空返事をして、アンデルは私の寝間着の前を開いた。薄い生地が取り払われて、火照った肌に夜の冷えた空気が触れるのが心地よい。
だがほっとしている暇はなかった。
肌の上をアンデルの指先が滑る。胸の脂肪と骨の境目の部分をなぞっていく、そのくすぐったさに息をもらしたら、ふいに爪の先で乳首を弾かれた。
「っあう」
じんとした甘い痺れが胸全体に伝播する。ぴん、ぴんと弾かれるたびに波のように襲ってくるそれに、悶えた。
「ハイリーは痛いのは平気な顔をして『問題ない』と言って、手当てもさせてくれないのに、こんなちょっとした意地悪でびくびくしちゃうんだよね」
「んくっ、……ぁっ、それと、これとはぁ……別でっ、んっ。それ、やめ……っ」
「痛いときは知らんぷりするのに、こうして気持ちいいときはすぐに弱音を吐くのはどうして?」
問いの形のくせに、別段答えを求めていない様子で、アンデルは私の乳房を揉みしだく。指の隙間に乳首を挟んで絞り上げるようにされ、爪の先でかりかりと先端を引っかかれる。
彼の手の中で自分の乳房が卑猥な形にされるのが見ていられない。でも不意打ちでなにかされそうで、視線を逸らせない。
「そういう不安そうな顔も、普段だったら見せてくれないでしょう。だから嬉しいな」
「はっ、……あ……、自分でそうさせておいて、ひどい……ぃぅっ」
「うん、ハイリーが可愛いから」
あーんと大きく口を開け、これみよがしに乳房にむしゃぶりついて、アンデルは歯の間に乳首を挟んで軽く引っ張った。つんとした痛みのあとに燃えるような快感がやってくる。高い声が抑えられない。手で口を塞ぐ。
わざと見えるように、ゆっくり舌先でそこをいじったりしなくていいから。
たしかに続きをしたいと言ったのは私だが、いじめられたいわけじゃない。
胸に舌を這わせているアンデルの髪を梳く。幼い頃よりは硬くなった黒い髪は、それでも今も指に優しい触り心地だ。
「ハイリー、気持ちいい?」
「ひ……はぁ……あ、そこ……は……」
私は仰向けのまま、ぐいっと腰を掴まれ引き寄せられ、あぐらを掻いたアンデルの膝の上に臀部だけを乗せるような恰好になった。慌てて膝を閉じるが一足遅く、寝間着の上から疼いているところを指でなぞられた。
ルジットの気候に合わせ、薄手で涼しいワンピース型の寝巻きは、手の感触をあっさり伝えてくる。触れられたせいで、下着と擦れたその部分がねっとりしているのが自分でもわかる。
いたたまれなくて太ももをぎゅっと閉じ合わせたが、彼の手を追い出すことはできなかった。
何度もそこを擦られると脚を閉じ続けるのも難しくなってくる。じくじく疼く腰の奥が辛くて、その快感を逃したくて腰をよじると、膝が開いてしまう。その隙に、服越しに陰核をぐりと押しつぶされた。駆け抜ける甘い痺れに、つま先が敷布を蹴ってしまった。胸への愛撫も再開される。
「あッ! あう……!」
――そこはもう、我慢できなくなるからだめだって。変な声も、ねだるように腰を動かしてしまうのも、自分ではどうしようもなくなってしまうのに。どうしてそこを執拗にいじめてくるの。
逃げようとしていたはずが、いつの間にか自分で脚を開いて、彼の指をその部分に導こうとしている。そのことに気づいても、どうしようもないほど膨らんだ下腹の熱を処理する方法はひとつしか思いつかない。
「アン、デル……お願いだから……っ」
アンデルは、きょとんとした顔をした。手が止まっている。焦らさないでとお願いしているのに、聞いてくれないのか? 素直にねだったら、叶えてくれるのではなかったの?
手を伸ばして少し体を起こし、張り詰めたままの彼のパンツの前を引っ掻いた。
「ねえ……んっ」
キスされた。いつもの繊細さを捨て去った荒々しいキスだ。息がしづらくて口を大きく開くが、舌を絡め取られて結局息はし辛いまま。
性急に寝巻きの裾をからげられ、下着を引っ張られた。それを手伝い腰を浮かせる。
大きく太ももを開かされ抱え上げられて、熱いものをひくつく入り口に宛てがわれた。一息に貫いて、中を満たしてほしい。この辛い状態にとどめをさして。期待で喉が鳴る。覆いかぶさってきたアンデルの背中に腕を回して、ぎゅっとその服を掴んだ。
だというのに、侵入はゆっくりだった。じわじわ焦れるほどの速度で進んでくる。
意地悪だ。ひどすぎる。いつの間にこんな残酷さを身につけたんだろう、この子……この男は。
我慢できなくなって、彼の腰に脚を回して、自分から飲み込んだ。
「あんっ、あぁっ……はぁ」
たまらない充足感があった。腰の奥に蓄積していた澱のような快感が、かき乱されて舞い上がる。
軽く達してしまった。頭の奥がふわっと白くなる多幸感に、大きく息をつく。足にまとわりついた波の泡が、儚く弾けるようなあの感触が、全身に散っていく。
「……はぁ……気持ちいい顔してるね、ハイリー。ぐずぐずになってる……。僕もすごく気持ちいいんだ」
「ん……いぁっ?!」
うっとり、余韻に酔っていたのに、それをぶち壊すような凶暴な快感が襲ってきた。抜けるぎりぎりまで下がっていったアンデルの肉の槍が、根本までずっぽりと飲み込むほど奥に差し込まれる。絶頂の残滓で震えている私の隘路は、その侵入におののく。
「あっ! あ、ぁ、まっ、まってぇっ……うくぅっ! ひっぁあ」
ごまかすように頬に、額にキスをされても、責め立てられている体は苦痛じみた快感を拾ってしまう。直前に解放したはずの熱の塊が、粘度と質量を増してどろどろとヘソの下に再度蓄積されていく。アンデルに貫かれるたびにそこに向けて重いしびれが走る。それだけでも耐え難いのに、いじめられて熱を帯びた乳首がまた指先でつねられる。
「はあっ……ここをこうすると、あなたの中もぎゅうってなるんだよ」
「あっ、いっ、あぁあッ」
また達してしまう。何度味わっても、追い詰められて解放されるその直前までの不安は慣れない。期待しているくせに怖い。とくにこんな、一方的に責められると。
「あ……ッ、はぁっ……ぁああっ」
ず、と奥に槍を打ち込まれ、我慢していたものが決壊した。一度目の絶頂より重い快感が全身を震わせる。自分のものではないように膝ががくがく震えて、爪先が勝手に丸くなる。
「どうしたの、今日はすごくよさそうだ」
「ふ……ぁう……」
息が苦しい。全力疾走したときのよう。アンデルに満たされているところが、きゅんと甘くしびれている。断続的にその疼きが襲ってくる。そこを擦りあげて、アンデルの雄茎が抜けていった。
どろりとしたものが股に垂れたから、てっきり、彼も達したのだと思っていた。並んで寝転び、羽交い締めのようなかたちで拘束され、背中がアンデルの胸に密着した。
その段階で、それは私の勘違いだと気づいた。こぼれ出たのはきっと私のものだ。まだひくついている穴に背後から宛がわれたものは、熱いままで、ちっとも萎えていない。
「やっ、やぁっ……だめぇ……」
横になったまま、挿入された。抜けきっていない快感が、戻ってきて凝縮しはじめる。背中から回された片方の手で太ももを引き上げられ、大きく脚を広げられた。
体勢が不安定で枕にすがりつくと、その脇の下からもう片方の腕が回されて、じんと熱くしびれている乳首を摘ままれた。またそこ! そう指摘したくてもちゃんと言葉にできない。
正面には壁しかなく、誰もいないとわかっている。背後に回ったアンデルからだって、自分の秘めた部分は見えないとわかっているのに、ひどくみだらな格好をしていることが恥ずかしい。どうして今回に限って、こんな恥ずかしい恰好ばかりさせられる?
擦りあげられ、奥を抉られ、声が裏返ってしまう。
「ぁふ、ぅんん…っ、はぁ」
「ハイリーは首と耳も弱いよね。こうするときゅうきゅう締め付けてくれる。気持ちいい?」
「やぁあっ、やめっ……ひぁっ」
つつつ、と舌で首を舐めあげられ、乳房を掴んでいた手で次は脇腹を撫でられる。全身の産毛が逆立つ。体位のせいで深くは繋がれないけれど、反り返った硬いもので腹の内側を引っかかれる。低温の炎がそこを舐めていくような錯覚。
眼の前がじんわり白っぽくなってきて、三度の絶頂を予感させた。
「ハイリー……は、いりぃ……はぁっ……」
アンデルも限界が近いらしい。上ずった声をあげて、私の耳をかりかりと甘噛みしていく。甘えるように鼻先で頬をさぐられて、多少無理をして顔をそちらにむけると、唇を舐められた。口づけたいけれど、うまく唇を密着できなくて、お互いに伸ばした舌を絡め合う。熱く湿った吐息が溶け合って頬に当たる。
「……好き、だよ、ハイリー……。あなたが好き」
「――あっ」
私も、と伝える時間がなかった。脇腹から降りてきた手が張り詰めていた花芯をすりあげた。体の中心を通った焦がすような快楽の波が、逃げ道を探していた。体内でアンデルの肉の槍が震えている。それを食いしばるように締め付けながら、私は全身を駆け抜ける激しい快感に身を委ねた。
アンデルが、私を背後から抱きしめたまま、ゆっくり体の力を抜いてベッドに沈む。彼の胸も腕も汗を掻いていて、背中に触れる胸は激しく上下していた。まだ硬度のある槍はそのままだ。
息を整えながら身を起こし、アンデルと離れた。少し時間を置いて、股ぐらに生暖かいものが伝った。またシーツを一枚駄目にした。明日の洗濯の手間を思うと嫌になってしまうので、考えないことにする。まずは体をきれいにしたい。
ベッドから足を床に降ろしたら、ぼんやりしていたアンデルがはっとなって、追いすがるように私の肘を掴んだ。
私は、行為のあとは一定時間くっついていたいらしい彼の好みに最近気づいたところだ。こういうところを可愛いと思うのだが……指摘すると痛い目を見ると学習したから言わないことにした。
「私も、アンデルのことが好きだよ。だから恥ずかしいことされても許してる。でも今度不満を打ち明けるときは、ベッド以外でしてもらう」
「……ベッドは嫌なの? いたっ」
形の良いアンデルの鼻をぎゅっと一回摘んでやる。
わざわざ自分の苦手な場所で戦う兵士はいないのだ。つんとそっぽを向いていたら、ねだるように肘をつつかれた。
汗を含んでぱさついた黒髪を、わしゃわしゃと撫でてあげる。
「守るべきレディのことをいたぶったナイトを解雇しないでいてあげるんだ、そこだけでも喜んでほしいな」
彼はぱちぱち瞬きしたあと頬を緩めて、私の手をとって甲に口づけた。
「うん、……ありがとう」
頬を手の平に擦り寄せてくる。さっきまであんなに勇ましかったのにとからかえば、照れたように顔を隠すので、私は、嬉しくなってしまって、彼の隣に寝そべって、その頭を胸に抱えてぎゅっとした。
反射的にその腕を掴んでいた。
「いかないで。続きを、……して。私も、したいから」
引き止めたくて、精一杯の勇気を振り絞って上半身を起こしてアンデルの唇に口づけた。
「喜んで。
ふふ。自分からしたいって言ってくれたのに恥ずかしそうにするんだね。裸になるのは結構平気なのに、面白い」
「もう初めてでもないのに、変かな……」
「いつも堂々としてるあなたが恥ずかしがっているところを見るの、僕は好きだよ」
「なんで……ん」
待ち望んでいた口づけは、静かで深い。いつも植物と対話しているときのように、アンデルは私のすべてを確認するかのごとく、口内の粘膜を慎重に優しく舌の先で探っていく。ただし、見逃しはしないというように、歯列の裏から舌の付け根まで何度も何度も執拗にそれを繰り返されるので、私の意識は自然とそちらに集中してしまう。上顎の粘膜を擦られ、鼻に抜けるようなむず痒さに耐えかねて、彼の舌に自分の舌を這わせた。
「あふ……ふぅ……」
舌を甘噛みされ、舌先でその付け根の部分や表面をくすぐられ、声がでてしまう。自分のこういう声が苦手だ。
「んぁっ」
きゅんと甘い刺激が胸の先に走って、声が漏れてしまった。アンデルの片手が、寝間着の上からまた乳首を摘んでこりこりと刺激してくる。先程まで煽られていた快感がすぐに蘇ってくる。つねられているのは胸の先なのに、腰の奥の方がそわそわしてしまって、落ち着かなくて膝をすり合わせた。陰核がずきずきと疼いていて、辛い。
「すごく硬くなってる。服の上からでもわかるよ」
「自分でそう仕向けたくせにぃっ、んっ! あうっ」
「そうだね。そのとおりだよ。ハイリーがどうすれば気持ちよくなるか、少しだけわかってきたから。本当はもう、嫌がる余裕もないくらい追い詰められるのが理想なんだけれど、そこまではまだかな」
「ふ、不吉なこと、いわない、で、ほしい……」
うん、と空返事をして、アンデルは私の寝間着の前を開いた。薄い生地が取り払われて、火照った肌に夜の冷えた空気が触れるのが心地よい。
だがほっとしている暇はなかった。
肌の上をアンデルの指先が滑る。胸の脂肪と骨の境目の部分をなぞっていく、そのくすぐったさに息をもらしたら、ふいに爪の先で乳首を弾かれた。
「っあう」
じんとした甘い痺れが胸全体に伝播する。ぴん、ぴんと弾かれるたびに波のように襲ってくるそれに、悶えた。
「ハイリーは痛いのは平気な顔をして『問題ない』と言って、手当てもさせてくれないのに、こんなちょっとした意地悪でびくびくしちゃうんだよね」
「んくっ、……ぁっ、それと、これとはぁ……別でっ、んっ。それ、やめ……っ」
「痛いときは知らんぷりするのに、こうして気持ちいいときはすぐに弱音を吐くのはどうして?」
問いの形のくせに、別段答えを求めていない様子で、アンデルは私の乳房を揉みしだく。指の隙間に乳首を挟んで絞り上げるようにされ、爪の先でかりかりと先端を引っかかれる。
彼の手の中で自分の乳房が卑猥な形にされるのが見ていられない。でも不意打ちでなにかされそうで、視線を逸らせない。
「そういう不安そうな顔も、普段だったら見せてくれないでしょう。だから嬉しいな」
「はっ、……あ……、自分でそうさせておいて、ひどい……ぃぅっ」
「うん、ハイリーが可愛いから」
あーんと大きく口を開け、これみよがしに乳房にむしゃぶりついて、アンデルは歯の間に乳首を挟んで軽く引っ張った。つんとした痛みのあとに燃えるような快感がやってくる。高い声が抑えられない。手で口を塞ぐ。
わざと見えるように、ゆっくり舌先でそこをいじったりしなくていいから。
たしかに続きをしたいと言ったのは私だが、いじめられたいわけじゃない。
胸に舌を這わせているアンデルの髪を梳く。幼い頃よりは硬くなった黒い髪は、それでも今も指に優しい触り心地だ。
「ハイリー、気持ちいい?」
「ひ……はぁ……あ、そこ……は……」
私は仰向けのまま、ぐいっと腰を掴まれ引き寄せられ、あぐらを掻いたアンデルの膝の上に臀部だけを乗せるような恰好になった。慌てて膝を閉じるが一足遅く、寝間着の上から疼いているところを指でなぞられた。
ルジットの気候に合わせ、薄手で涼しいワンピース型の寝巻きは、手の感触をあっさり伝えてくる。触れられたせいで、下着と擦れたその部分がねっとりしているのが自分でもわかる。
いたたまれなくて太ももをぎゅっと閉じ合わせたが、彼の手を追い出すことはできなかった。
何度もそこを擦られると脚を閉じ続けるのも難しくなってくる。じくじく疼く腰の奥が辛くて、その快感を逃したくて腰をよじると、膝が開いてしまう。その隙に、服越しに陰核をぐりと押しつぶされた。駆け抜ける甘い痺れに、つま先が敷布を蹴ってしまった。胸への愛撫も再開される。
「あッ! あう……!」
――そこはもう、我慢できなくなるからだめだって。変な声も、ねだるように腰を動かしてしまうのも、自分ではどうしようもなくなってしまうのに。どうしてそこを執拗にいじめてくるの。
逃げようとしていたはずが、いつの間にか自分で脚を開いて、彼の指をその部分に導こうとしている。そのことに気づいても、どうしようもないほど膨らんだ下腹の熱を処理する方法はひとつしか思いつかない。
「アン、デル……お願いだから……っ」
アンデルは、きょとんとした顔をした。手が止まっている。焦らさないでとお願いしているのに、聞いてくれないのか? 素直にねだったら、叶えてくれるのではなかったの?
手を伸ばして少し体を起こし、張り詰めたままの彼のパンツの前を引っ掻いた。
「ねえ……んっ」
キスされた。いつもの繊細さを捨て去った荒々しいキスだ。息がしづらくて口を大きく開くが、舌を絡め取られて結局息はし辛いまま。
性急に寝巻きの裾をからげられ、下着を引っ張られた。それを手伝い腰を浮かせる。
大きく太ももを開かされ抱え上げられて、熱いものをひくつく入り口に宛てがわれた。一息に貫いて、中を満たしてほしい。この辛い状態にとどめをさして。期待で喉が鳴る。覆いかぶさってきたアンデルの背中に腕を回して、ぎゅっとその服を掴んだ。
だというのに、侵入はゆっくりだった。じわじわ焦れるほどの速度で進んでくる。
意地悪だ。ひどすぎる。いつの間にこんな残酷さを身につけたんだろう、この子……この男は。
我慢できなくなって、彼の腰に脚を回して、自分から飲み込んだ。
「あんっ、あぁっ……はぁ」
たまらない充足感があった。腰の奥に蓄積していた澱のような快感が、かき乱されて舞い上がる。
軽く達してしまった。頭の奥がふわっと白くなる多幸感に、大きく息をつく。足にまとわりついた波の泡が、儚く弾けるようなあの感触が、全身に散っていく。
「……はぁ……気持ちいい顔してるね、ハイリー。ぐずぐずになってる……。僕もすごく気持ちいいんだ」
「ん……いぁっ?!」
うっとり、余韻に酔っていたのに、それをぶち壊すような凶暴な快感が襲ってきた。抜けるぎりぎりまで下がっていったアンデルの肉の槍が、根本までずっぽりと飲み込むほど奥に差し込まれる。絶頂の残滓で震えている私の隘路は、その侵入におののく。
「あっ! あ、ぁ、まっ、まってぇっ……うくぅっ! ひっぁあ」
ごまかすように頬に、額にキスをされても、責め立てられている体は苦痛じみた快感を拾ってしまう。直前に解放したはずの熱の塊が、粘度と質量を増してどろどろとヘソの下に再度蓄積されていく。アンデルに貫かれるたびにそこに向けて重いしびれが走る。それだけでも耐え難いのに、いじめられて熱を帯びた乳首がまた指先でつねられる。
「はあっ……ここをこうすると、あなたの中もぎゅうってなるんだよ」
「あっ、いっ、あぁあッ」
また達してしまう。何度味わっても、追い詰められて解放されるその直前までの不安は慣れない。期待しているくせに怖い。とくにこんな、一方的に責められると。
「あ……ッ、はぁっ……ぁああっ」
ず、と奥に槍を打ち込まれ、我慢していたものが決壊した。一度目の絶頂より重い快感が全身を震わせる。自分のものではないように膝ががくがく震えて、爪先が勝手に丸くなる。
「どうしたの、今日はすごくよさそうだ」
「ふ……ぁう……」
息が苦しい。全力疾走したときのよう。アンデルに満たされているところが、きゅんと甘くしびれている。断続的にその疼きが襲ってくる。そこを擦りあげて、アンデルの雄茎が抜けていった。
どろりとしたものが股に垂れたから、てっきり、彼も達したのだと思っていた。並んで寝転び、羽交い締めのようなかたちで拘束され、背中がアンデルの胸に密着した。
その段階で、それは私の勘違いだと気づいた。こぼれ出たのはきっと私のものだ。まだひくついている穴に背後から宛がわれたものは、熱いままで、ちっとも萎えていない。
「やっ、やぁっ……だめぇ……」
横になったまま、挿入された。抜けきっていない快感が、戻ってきて凝縮しはじめる。背中から回された片方の手で太ももを引き上げられ、大きく脚を広げられた。
体勢が不安定で枕にすがりつくと、その脇の下からもう片方の腕が回されて、じんと熱くしびれている乳首を摘ままれた。またそこ! そう指摘したくてもちゃんと言葉にできない。
正面には壁しかなく、誰もいないとわかっている。背後に回ったアンデルからだって、自分の秘めた部分は見えないとわかっているのに、ひどくみだらな格好をしていることが恥ずかしい。どうして今回に限って、こんな恥ずかしい恰好ばかりさせられる?
擦りあげられ、奥を抉られ、声が裏返ってしまう。
「ぁふ、ぅんん…っ、はぁ」
「ハイリーは首と耳も弱いよね。こうするときゅうきゅう締め付けてくれる。気持ちいい?」
「やぁあっ、やめっ……ひぁっ」
つつつ、と舌で首を舐めあげられ、乳房を掴んでいた手で次は脇腹を撫でられる。全身の産毛が逆立つ。体位のせいで深くは繋がれないけれど、反り返った硬いもので腹の内側を引っかかれる。低温の炎がそこを舐めていくような錯覚。
眼の前がじんわり白っぽくなってきて、三度の絶頂を予感させた。
「ハイリー……は、いりぃ……はぁっ……」
アンデルも限界が近いらしい。上ずった声をあげて、私の耳をかりかりと甘噛みしていく。甘えるように鼻先で頬をさぐられて、多少無理をして顔をそちらにむけると、唇を舐められた。口づけたいけれど、うまく唇を密着できなくて、お互いに伸ばした舌を絡め合う。熱く湿った吐息が溶け合って頬に当たる。
「……好き、だよ、ハイリー……。あなたが好き」
「――あっ」
私も、と伝える時間がなかった。脇腹から降りてきた手が張り詰めていた花芯をすりあげた。体の中心を通った焦がすような快楽の波が、逃げ道を探していた。体内でアンデルの肉の槍が震えている。それを食いしばるように締め付けながら、私は全身を駆け抜ける激しい快感に身を委ねた。
アンデルが、私を背後から抱きしめたまま、ゆっくり体の力を抜いてベッドに沈む。彼の胸も腕も汗を掻いていて、背中に触れる胸は激しく上下していた。まだ硬度のある槍はそのままだ。
息を整えながら身を起こし、アンデルと離れた。少し時間を置いて、股ぐらに生暖かいものが伝った。またシーツを一枚駄目にした。明日の洗濯の手間を思うと嫌になってしまうので、考えないことにする。まずは体をきれいにしたい。
ベッドから足を床に降ろしたら、ぼんやりしていたアンデルがはっとなって、追いすがるように私の肘を掴んだ。
私は、行為のあとは一定時間くっついていたいらしい彼の好みに最近気づいたところだ。こういうところを可愛いと思うのだが……指摘すると痛い目を見ると学習したから言わないことにした。
「私も、アンデルのことが好きだよ。だから恥ずかしいことされても許してる。でも今度不満を打ち明けるときは、ベッド以外でしてもらう」
「……ベッドは嫌なの? いたっ」
形の良いアンデルの鼻をぎゅっと一回摘んでやる。
わざわざ自分の苦手な場所で戦う兵士はいないのだ。つんとそっぽを向いていたら、ねだるように肘をつつかれた。
汗を含んでぱさついた黒髪を、わしゃわしゃと撫でてあげる。
「守るべきレディのことをいたぶったナイトを解雇しないでいてあげるんだ、そこだけでも喜んでほしいな」
彼はぱちぱち瞬きしたあと頬を緩めて、私の手をとって甲に口づけた。
「うん、……ありがとう」
頬を手の平に擦り寄せてくる。さっきまであんなに勇ましかったのにとからかえば、照れたように顔を隠すので、私は、嬉しくなってしまって、彼の隣に寝そべって、その頭を胸に抱えてぎゅっとした。
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