夢と幻想の電脳迷路

振矢 留以洲

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夢と幻想の電脳迷路

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 私がパソコンなるものを初めて購入したのは、32年ほど前のことでした。そのPCの名前はPC-8001なるもので、日本電気(NEC)が、1979年5月に発表して、販売したものである。仕様は次の通りである。①CPU μPD780C-1(Z80-A互換)4MHz(DMA割り込みウェイトがあるため、実際には2.3MHz程度で動作する) ② ROM 24KB(最大32KB) ③RAM 16KB(最大32KB)  ④テキスト表示 36/40/72/80桁×20/25行 ⑤グラフィック表示 160x100ドット デジタル8色。この仕様を2013年の現在で見ると、信じられないくらい低能力のスペックであるが、金持ちでない個人が手に入れることができるコンピュータというだけで当時は夢のマシーンに思えたのであった。IT時代の現代、おもちゃにもならないようなこのマシーンが当時は夢のマシーンに思えたのであった。
 コンピュータというとローレンス・オリヴィエが出演していた『リトル・ロマンス』の中でコンピュータなるものに競馬の予想をさせていた場面が印象に残っている。そのマシーンはコンピュータ室に置かれており、今の冷蔵庫なんかよりも大きな筐体をしている。結果の出力は紙テープのようなものが出てきて、そこに打たれた穴で情報を表しているのである。そのマシーンは企業か大学のコンピュータ室に置かれた高価なもので、とても個人でもてるようなものではない。この映画の場面に出てくるようなマシーンのイメージである。この映画が上映されたのは1979年。PC8001が販売された年と同じであることはおもしろいと思った。コンピュータというとこのように高価な個人ではとても持つことのできないマシーンであるというイメージ。その時代に個人でコンピュータが持てる。ただそれだけでなんともいえないワクワク感を感じたのである。
 さて、このPC8001、当時本体だけで168,000円もしたのである。今だったら、windowsにしてもMacintoshにしても可成り高機能のPCが手に入る。当時現代のこのPCの世界を垣間見ることができたなら、心臓が止まるくらいの興奮をおぼえたかもしれない。ロバート・ゼメキス監督の『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の中でマーティ・マクフライが未来世界の中の骨董品屋のショウウインドウに置かれたマッキントッシュクラシックを見ている場面の逆バージョンのようなイメージである。さて、このPC8001,モニターは別売り、さらに、モニターと本体を繋ぐケーブルも別売り。確かケーブルだけ買うためにもう一度同じ店に行った記憶がある。そして外部記憶媒体としてデータレコーダ。これはカセットテープレコーダに毛の生えたものでした。さてこのマシーンで出来たことは何であったか。結局このマシーンで出来たことは、簡単なベーシック言語を入力して実行させることでした。なんともRAMが最大32KBすぐにパンクしてしまう空間である。半角英数字で32,768文字。当時カセットテープに記録されてあったものを購入して、本体に読み込ませたと思うが、『スペースインベーダー』をPC8001で実行させて遊んだ覚えがある。それよりさかのぼって数年前私がまだ学生であったとき、新宿のゲームセンターにある中心的なゲーム機はこれでした。ディスコが新宿に乱立した時代で、『スペースインベーダー』も爆発的にヒットした時代でした。あの初めて遊んだとき気が狂うほどおもしろかったゲームが自分の家で出来る。まあそれだけでも夢と幻想のマシーンでした。
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