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6話 残された家族達

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「シャリオット! シャリオットはどこに行った!」

 その頃、ルシファーレン邸では、突如として姿をくらましたシャリオットの消息を、両親が焦りながら探していた。何せ、今回の件は王宮から来た話。王の下で働いている息子アルフレッドの今後の為、そして何よりルシファーレン家の為にも、シャリオットの身を引き渡せねばなるまいと彼らは必死になっていたのだ。

「アルフレッド! 何をぼうっとしている。そなたも探せ!」

 彼らの父である『アルバート』は、平然とした様子で座っていたアルフレッドへと声を荒げる。

「……父上、もう良いではありませんか。シャリオットはルシファーレンを追放されたのでしょう? ならば、シャリオットがどこに行こうが、我々には関係の無い……」
「何を言っているか! 王との約束を反故にすると言うことが、どういうことを意味するのか…… そなたわかっているのか!」

 冷静に言葉を返したアルフレッドに対し、声を荒げた父アルバート。おろおろとしていた母親が二人の間へと割って入る。

「やめてください二人とも。そんな言い合いをしている場合では…… それに、シャルロットが見つからなかったら…… アルフレッドあなたの今後だって……」

 母の言葉に深いため息をついたアルフレッド。彼は両親に対し失望していたのだ。自らの娘が居なくなったというのに、心配をするどころか、自らの心配しかしていない彼らに。 

 今まで自分やシャリオットに笑顔を向けていたのも、きっと彼らにとって自慢の息子、娘だったからに過ぎないのだろう。そう、彼らは自分たちのことを、道具としか見ていないと言うことに気が付いてしまったのだ。

「今後? そんなものは無いさ」
「何を言っている? アルフレッド」
「ルシファーレンは終わりだって言ってるんだ。今後もクソもない」
「アルフレッド!!」

 父アルバートはアルフレッドの胸ぐらへと掴みかかった。初めて見る父親の激昂した表情。

――ああ、これが…… シャリオットが見ていた風景なんだな

 と、また一つ失望を重ねたアルフレッド。

「アルフレッド、貴様…… まさか、シャリオットを逃がしたとか言うわけではあるまいな?」
「っ!? そうなの!? アルフレッド!?」

 詰め寄る両親に、アルフレッドはにやりと笑みを浮かべる。

「ああ、俺が逃がした。あいつのために」

 冷静にそう言い切ったアルフレッド。その態度がまたアルバートの逆鱗へと触れる。

「どうしてだ? 理由をいえ、アルフレッド」
「父上、あんたが言ったんだろう? シャリオットに出て行けと」
「……っ!? それは!」
「アルカナに選ばれなかったから? 自分の理想の娘じゃなかったから? そんなクソみたいな理由で、あいつを傷つけたあんたらを俺は許せない」
「……ッ! アルフレッド!」

 父アルバートの顔は真っ赤になっており、血管が浮き出るほどに怒りを露わにしていた。胸ぐらを捕まれていてもなお、平然としているアルフレッドの様子がまたアルバートの怒りを増長させていた。

「……父上」

 アルフレッドがそう呟いたときだった。慌てた様子で、家族の元に召使いの一人が駆け込んできたのだ。息を切らしながら、召使いの男は声を上げた。

「アルバート様! 奥様! それにアルフレッド様! 王様からの使いの者が! たった今、到着した模様です! 明日にも…… ここに迎えに上がると!」
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