婚約破棄され家も追放されましたが、私には最愛のお兄様がいるので心配ありません

惟名 水月

文字の大きさ
8 / 9

8話 魔術師 ーMagicianー

しおりを挟む

「正面突破って!?」

 正面突破なんて無謀に決まってる。もうすでに、私達の周りには大量の魔道士達が包囲している。それもそこらの魔道士達とは全くもってレベルが違う、選び抜かれた『王宮の魔導士』達。フォースさんの力が、どんな力なのかはわからないけれど、普通に考えればこの難局を無事に乗り切るなんて不可能に近い話なのだ。

「大丈夫ですシャリオットさん! 言ったでしょ? 僕だって、あなたと同じ『オリジン』だって!」

 既に、こちらに向けて魔法を放とうとしていた王宮の魔道士達。彼らの放った炎の弾が、私達目がけて一気に襲いかかってくる。

 だが、フォースは、そんな危機的状況を前にしても全く慌てる素振りを見せなかった。冷静に小さく言葉を口にしたフォース。

「シェルシールド」

 その言葉と同時に、私達の前に、大きな水のバリアが展開する。魔道士達の放った炎の魔法は、水のバリアへと直撃し、そのままシューっと煙を上げながら消えていった。

「なんだ…… 水魔法か!?」
「相手は魔法使いだぞ! 油断するな!」

 少し戸惑う様子を見ながらも、なおも魔道士達は私達の包囲を続ける。

「さあ、行きますよシャリオットさん」

 平然とした様子で、私に向かって笑みを受かべながらそう口にしたフォース。ゆっくりと歩みを進めたフォースに対し、奴らはじりじりと後ずさりをしながら、警戒を続けていた。

「相手は水魔法使いだ! 雷だ! 雷の魔道士を呼んでこい!」

 一人の魔道士がそう叫ぶ。その言葉ににやりと笑みを浮かべたのはフォース。そして、フォースは男達に聞かせるかのように、語り出した。

「確かに、『水魔法』の使い手相手には、『雷魔法』は有効です……」

 そう、フォースが言っているように、魔法にも相性というモノがある。例えば、先ほど魔道士達が使った『炎の魔法』は水魔法に弱く、風魔法には強い。『炎』、『水』、『雷』、そして『風』。これら基本属性と呼ばれる魔法は、それぞれ、『得意な属性』と、『苦手な属性』を持っている。

「サンダーボルトオオ!」

 そして、すぐに応援に駆けつけた魔道士が叫び声を上げる。魔道士が放った雷魔法は、悠々と歩みを続けていたフォース目がけ飛んでいった。フォースの『水魔法』には、愛作の相性である『雷魔法』。だが、その雷魔法を前にしても、なおフォースは、笑顔を崩す素振りもなければ、慌てるような素振りも見せなかったのだ。

「素晴らしいです。やはり選ばれた魔法使い達ですね…… でも……!」

 そして、自らの身へと迫る雷魔法に向けて、手を上げたフォース。再びフォースの口元が静かに動く。

「エアーカッター!」

 直後、フォースから放たれた、凄まじい鋭風が、迫っていた雷魔法を両断した。そのまま、風魔法は私達を包囲していた魔道士達へと襲いかかったのだ。魔道士達の悲鳴と共に、私達の目の前が一気に開ける。

「さあ、行きますよ! シャリオットさん!」

 フォースは私の手を握ると、私の手を引っ張りながら一気に駆けだした。

「フォースさん! 今のは!?」

 息を切らしながら、私は一緒に走っていたフォースへと問いかける。魔法の属性は、一人に一つが基本。複数の属性を使う魔法使いなんて、私は見たことがなかった。

「僕の魔法です」
「そうじゃなくて! どうして! いくつもの属性を!」
「シャリオットさん、忘れたのですか? 僕はあなたと同じ『オリジン』だって。アルカナによって『造られた』魔法使いは、あなたの言うとおり一つの魔法しか使えない。だけど、こと『オリジン』に関してはそうじゃない」
「それって……!」

「僕のこの力は『魔術師 ―Magician《マジシャン》―』と呼ばれています。四つの魔法属性を全て使いこなす。これが僕に与えられた『オリジン』の力です」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...