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8話 魔術師 ーMagicianー
しおりを挟む「正面突破って!?」
正面突破なんて無謀に決まってる。もうすでに、私達の周りには大量の魔道士達が包囲している。それもそこらの魔道士達とは全くもってレベルが違う、選び抜かれた『王宮の魔導士』達。フォースさんの力が、どんな力なのかはわからないけれど、普通に考えればこの難局を無事に乗り切るなんて不可能に近い話なのだ。
「大丈夫ですシャリオットさん! 言ったでしょ? 僕だって、あなたと同じ『オリジン』だって!」
既に、こちらに向けて魔法を放とうとしていた王宮の魔道士達。彼らの放った炎の弾が、私達目がけて一気に襲いかかってくる。
だが、フォースは、そんな危機的状況を前にしても全く慌てる素振りを見せなかった。冷静に小さく言葉を口にしたフォース。
「シェルシールド」
その言葉と同時に、私達の前に、大きな水のバリアが展開する。魔道士達の放った炎の魔法は、水のバリアへと直撃し、そのままシューっと煙を上げながら消えていった。
「なんだ…… 水魔法か!?」
「相手は魔法使いだぞ! 油断するな!」
少し戸惑う様子を見ながらも、なおも魔道士達は私達の包囲を続ける。
「さあ、行きますよシャリオットさん」
平然とした様子で、私に向かって笑みを受かべながらそう口にしたフォース。ゆっくりと歩みを進めたフォースに対し、奴らはじりじりと後ずさりをしながら、警戒を続けていた。
「相手は水魔法使いだ! 雷だ! 雷の魔道士を呼んでこい!」
一人の魔道士がそう叫ぶ。その言葉ににやりと笑みを浮かべたのはフォース。そして、フォースは男達に聞かせるかのように、語り出した。
「確かに、『水魔法』の使い手相手には、『雷魔法』は有効です……」
そう、フォースが言っているように、魔法にも相性というモノがある。例えば、先ほど魔道士達が使った『炎の魔法』は水魔法に弱く、風魔法には強い。『炎』、『水』、『雷』、そして『風』。これら基本属性と呼ばれる魔法は、それぞれ、『得意な属性』と、『苦手な属性』を持っている。
「サンダーボルトオオ!」
そして、すぐに応援に駆けつけた魔道士が叫び声を上げる。魔道士が放った雷魔法は、悠々と歩みを続けていたフォース目がけ飛んでいった。フォースの『水魔法』には、愛作の相性である『雷魔法』。だが、その雷魔法を前にしても、なおフォースは、笑顔を崩す素振りもなければ、慌てるような素振りも見せなかったのだ。
「素晴らしいです。やはり選ばれた魔法使い達ですね…… でも……!」
そして、自らの身へと迫る雷魔法に向けて、手を上げたフォース。再びフォースの口元が静かに動く。
「エアーカッター!」
直後、フォースから放たれた、凄まじい鋭風が、迫っていた雷魔法を両断した。そのまま、風魔法は私達を包囲していた魔道士達へと襲いかかったのだ。魔道士達の悲鳴と共に、私達の目の前が一気に開ける。
「さあ、行きますよ! シャリオットさん!」
フォースは私の手を握ると、私の手を引っ張りながら一気に駆けだした。
「フォースさん! 今のは!?」
息を切らしながら、私は一緒に走っていたフォースへと問いかける。魔法の属性は、一人に一つが基本。複数の属性を使う魔法使いなんて、私は見たことがなかった。
「僕の魔法です」
「そうじゃなくて! どうして! いくつもの属性を!」
「シャリオットさん、忘れたのですか? 僕はあなたと同じ『オリジン』だって。アルカナによって『造られた』魔法使いは、あなたの言うとおり一つの魔法しか使えない。だけど、こと『オリジン』に関してはそうじゃない」
「それって……!」
「僕のこの力は『魔術師 ―Magician《マジシャン》―』と呼ばれています。四つの魔法属性を全て使いこなす。これが僕に与えられた『オリジン』の力です」
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