わたし、九尾になりました!! ~魔法と獣医学の知識で無双する~

惟名 水月

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九尾転生編

32話 電撃制圧作戦

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「もう少しで帝国領だ」

 1人の兵士が俺へと報告に来た。ついに決戦の時が近づいてきた。俺達は飛空船に乗り、帝国へと向かっていた。

 あの事件から数日後、連邦は帝国との全面戦争を掲げたのだ。おそらく、あの事件で、帝国は連邦を一気に沈めるつもりだったようだ。そのためにラヴィルと言う男を大神の足止めに用いてたのだろう。

 しかし、作戦は完全には成功しなかった。叩くなら今しか無い。そういう王様の判断であった。敵に回したら恐ろしい男である。

「イーナ様……大丈夫だよね……?」

 ルカが不安そうに呟く。

「大丈夫だよ。きっと」

 根拠は無かったが、自分自身を鼓舞させるように俺はルカへと答えた。

 作戦はこうだ。まず、帝国がフリスディカに攻めてきたときの飛空船で帝国の首都へと移動する。そして、連邦軍の兵士達が、一気に帝国の首都へと突入する。そして、混乱に乗じて、俺達や夜叉で一気に敵の中枢を抑えると言ったものだ。

 電撃制圧作戦

 それが今回のミッションであった。少人数での制圧作戦である。現状、連邦には戦力が不足しているのもあり、時間をかけた戦いは不利になるという判断だ。



 そして、船は帝国の首都、エールヴィアへとついたのである。

 ゆっくりと空港へと飛空船は下りていく。やけに静かである……

「流石に…… ばれてるかな……」

「イーナ! ばれてても関係ない。ここまで来たら、やるしかないのだ」

 ミドウは力強く答えた。そう、もはや後戻りは出来ない。そして、ゆっくりと飛空船の扉が開く。

「やっぱり……」

 どこから現れたのか、大量の兵士がこちらへと銃を向けている。

「ミドウ、シナツ……」

 俺の呟きに、2人も頷く。

「行くぞ、一気に突破だ!」

 ミドウが叫ぶと、俺達は一気に飛空船から走り出した。それと同時に銃声が鳴り響く。

 銃も、大神のスピード、それに夜叉の肉体の前では意味をなさなかった。大神や夜叉達はどんどん帝国の兵士達を崩していく。

 帝国の兵士の軍団の方に向けて炎を放つ。鎧をまとった兵士達は灼かれてもがき苦しんでいる。罪悪感が無いといえば嘘になるが、もはやそんな感情は殺していた。

「な、なんだあいつらは……?」

 次第に帝国軍は混乱を極めていく。中には逃げ出すもの、戦意を喪失したものもいる。かくして、とりあえず上陸の第一段階は成功した。結果オーライだが作戦は成功だ。

「イーナよ!このまま中心部へ突っ込むぞ!」

 ミドウの言葉に皆、鼓舞されて士気が上がる。

「中枢の位置は分かるの!?」

 俺はミドウに問いかける。

「ああ、こっちだ!ついてこい!」

 味方は街中へと分散していった。そもそもただの人間では神通力を使うものの前では歯が立たない。味方軍の役目はあくまで敵軍の攪乱である。

「時間との闘いだ。相手が立て直す前に一気にたたきつぶす!」

 ミドウは再び俺達に叫ぶ。そしてその時、目の前に1人の兵士が立ちはだかった。ただ者ではないオーラを放っている。おそらく神通力を使いこなす奴であろう。

 消えた…… と思いきや、急に俺達の前へとそいつは現れた。そいつが振ってきた剣は鈍い音を立てて、シータによって防がれた。

「イーナ!先に行け!」

 シータが俺達に叫ぶ。

 今は、こんなところで足を取られている場合では無い。それにシータなら大丈夫。俺は信じている。

「後から!追いつく!」

 その言葉に、俺は頷く。

 そして、シータに奴の相手は任せ、俺達はさらに先へと進んだ。



「いいのか?奴ら……死ぬかも知れないぞ」

 兵士はシータに向かって、言い放つ。その言葉に、シータは笑って答える。

「さて、どちらが最後に立っているのか、それは誰にも分からん。だが……」

「俺はイーナを信じて、全力を尽くすまでよ!」

 そう言うと、シータは兵士へと一気に斬りかかった。しかしかわされたようだ。

「早いな……」

 シータが呟くと、再び男は突然にシータの前へと現れ、剣を振るってきた。その激しい剣をシータは的確に防いでいく。

「ほう、やるな…… お前は何者だ?」

 兵士は、感心した様子でシータへと問いかけた。

「シータ…… 今はただの、旅人さ」

 シータは剣を構えながら、ゆっくりと、何か感慨にふけるような様子で自分の名を口にする。

「ただの旅人だと、嘘を言え、お前の正体、帝国第4部隊長ルキウスが見極めてやろう」

 ルキウスはシータの言葉に、不敵に笑いながら返した。シータもその言葉に、笑みを浮かべる。

――しかし……

――この男、やはり強い。私も全力で行かねばなるまいな……



 シータの姿を見たルキウスは少し驚いた様子で口を開く。

「やはり…… ただの旅人ではないではないか…… ドラゴンよ!」

 いまここに、再びファニフシータは蘇ったのである。
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