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20 監視状況の報告
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ブーロン城では昼食後にマルクの部屋に集まり、ドローンの録画映像から王宮内での動静を探ることが日課になりつつあった。
ただ、録画映像をそのまま覗き見るのは抵抗があるらしく、ロイドが簡単な報告をして、ほんの参考程度に静止画像を映すという具合だ。
「陛下はベッドから起き上がれるようになられたのですね」
ミッチェルは珍しくフレーバーティーを飲んでいる。
マルクは、いつもと同じアルコールを数滴垂らしたダージリンティーだ。
ロイドは未詳Xの画像を映し報告を続けた。
「それから、モーリンのところにならず者風の男が訪ねてきましたが、この男はマクシミリアン第二王子殿下と同じ日にブーロン城に侵入した男でした」
「は? 待ってください。侵入したですって? 今、初めて聞きましたよ。どうして報告しなかったのです?」
ロイドが答えるのを手で制してミッチェルが自ら答えた。
「いえ、結構です。なんの脅威も感じなかったのですね」
「はい。城に侵入はしたものの何も見ずに出て行きました」
「はあ――。次からは――」
「はい。全て知っておきたいのですよね。ですので、こうして報告しています」
ロイドは「問題ないですよね」とけろりと言ってのける。
「ただ、私の魔術でもカーテンを閉められていては覗けません。モーリンもこの男も常に周囲を警戒していたため、開いたドアの隙間から忍び込むことができませんでした。何を話していたかは不明です。家を出てからは跡をつけていますから、動きがあれば報告します」
「よろしく頼みますよ」
「はい。それから渓谷にいた男ですが、結局、鷹を連れたまま東へ、ポリージャ国の方へ移動しました。申し訳ありませんが、私の魔術も渓谷までしか有効に作用しないため、覗き見はできなくなりました。尾行は継続できますので一ヶ月後にブーロン城に戻ってくるよう設定しました。こちらに戻ればその間の記録を見ることができます」
(国境の辺りがリンクの限界のようです)
「それは仕方あるまいの」
「ちなみに王妃が書いている日記にモーリンの名前がでてくるのですが、読まれますか?」
王妃の部屋の様子を映すと、二人はギョッとして身を強張らせた。
「お前、アリシア様まで覗いておったのかいの」
マルクは妃殿下と呼ぶことに抵抗があり、今でも十年前と同様に「アリシア様」と呼んでいる。
「じょ、女性の部屋を覗き見など、なんて破廉恥な! ま、まさかサーシャ王女も?」
「はい、王族は全員が監視対象ですから」
(女性たちの話は有用だと思うのですが)
ミッチェルは憤りを隠さずロイドを非難した。
「だめです。そんなことは許されません」
「確かにの。いくらなんでも、王妃と王女の覗き見はなしじゃの」
(この世界では、女性というのはそれほど特別な存在なのですか)
「わかりました」
多少の心残りはあるものの、ロイドは指示に従いドローン離脱させた。
「やれやれ。なんだか心配になってきました。ちなみに今、君が王都で覗き見をしている対象は誰ですか」
(王都で監視している対象ですね)
「王様、王子二人、モーリン、モーリンの間者二人です」
「王子二人……」
ミッチェルの罪悪感を察したマルクが言葉をかける。
「ふむ。無礼は承知の上で許す。あのようなことがあった後だしの。ワシの命令じゃわい」
「はい……」
ミッチェルがそっと目を伏せた。
ロイドは映像無しで王妃の日記の内容をかいつまんで報告しておくことにした。
「王妃は先王の一人息子である王子が、いまだに行方知れずであることを案じているようです」
マルクとミッチェルに分わかりやすく緊張が走った。
「ロイド。もう結構です。妃殿下の日記のことは忘れてください」
(申し訳ありませんが削除要請には応じられません)
ロイドは「わかりました」と返事をして、日記の映像にタグを付けておいた。
ただ、録画映像をそのまま覗き見るのは抵抗があるらしく、ロイドが簡単な報告をして、ほんの参考程度に静止画像を映すという具合だ。
「陛下はベッドから起き上がれるようになられたのですね」
ミッチェルは珍しくフレーバーティーを飲んでいる。
マルクは、いつもと同じアルコールを数滴垂らしたダージリンティーだ。
ロイドは未詳Xの画像を映し報告を続けた。
「それから、モーリンのところにならず者風の男が訪ねてきましたが、この男はマクシミリアン第二王子殿下と同じ日にブーロン城に侵入した男でした」
「は? 待ってください。侵入したですって? 今、初めて聞きましたよ。どうして報告しなかったのです?」
ロイドが答えるのを手で制してミッチェルが自ら答えた。
「いえ、結構です。なんの脅威も感じなかったのですね」
「はい。城に侵入はしたものの何も見ずに出て行きました」
「はあ――。次からは――」
「はい。全て知っておきたいのですよね。ですので、こうして報告しています」
ロイドは「問題ないですよね」とけろりと言ってのける。
「ただ、私の魔術でもカーテンを閉められていては覗けません。モーリンもこの男も常に周囲を警戒していたため、開いたドアの隙間から忍び込むことができませんでした。何を話していたかは不明です。家を出てからは跡をつけていますから、動きがあれば報告します」
「よろしく頼みますよ」
「はい。それから渓谷にいた男ですが、結局、鷹を連れたまま東へ、ポリージャ国の方へ移動しました。申し訳ありませんが、私の魔術も渓谷までしか有効に作用しないため、覗き見はできなくなりました。尾行は継続できますので一ヶ月後にブーロン城に戻ってくるよう設定しました。こちらに戻ればその間の記録を見ることができます」
(国境の辺りがリンクの限界のようです)
「それは仕方あるまいの」
「ちなみに王妃が書いている日記にモーリンの名前がでてくるのですが、読まれますか?」
王妃の部屋の様子を映すと、二人はギョッとして身を強張らせた。
「お前、アリシア様まで覗いておったのかいの」
マルクは妃殿下と呼ぶことに抵抗があり、今でも十年前と同様に「アリシア様」と呼んでいる。
「じょ、女性の部屋を覗き見など、なんて破廉恥な! ま、まさかサーシャ王女も?」
「はい、王族は全員が監視対象ですから」
(女性たちの話は有用だと思うのですが)
ミッチェルは憤りを隠さずロイドを非難した。
「だめです。そんなことは許されません」
「確かにの。いくらなんでも、王妃と王女の覗き見はなしじゃの」
(この世界では、女性というのはそれほど特別な存在なのですか)
「わかりました」
多少の心残りはあるものの、ロイドは指示に従いドローン離脱させた。
「やれやれ。なんだか心配になってきました。ちなみに今、君が王都で覗き見をしている対象は誰ですか」
(王都で監視している対象ですね)
「王様、王子二人、モーリン、モーリンの間者二人です」
「王子二人……」
ミッチェルの罪悪感を察したマルクが言葉をかける。
「ふむ。無礼は承知の上で許す。あのようなことがあった後だしの。ワシの命令じゃわい」
「はい……」
ミッチェルがそっと目を伏せた。
ロイドは映像無しで王妃の日記の内容をかいつまんで報告しておくことにした。
「王妃は先王の一人息子である王子が、いまだに行方知れずであることを案じているようです」
マルクとミッチェルに分わかりやすく緊張が走った。
「ロイド。もう結構です。妃殿下の日記のことは忘れてください」
(申し訳ありませんが削除要請には応じられません)
ロイドは「わかりました」と返事をして、日記の映像にタグを付けておいた。
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