無愛想な仕立て屋と、ふわふわ受付嬢 〜ぬいぐるみ仕立て屋さんの日常〜

miigumi

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【第3話:グルルの大暴れと、針と手と】

「こら、グルル! 走らないの!」

 カラン、と扉が勢いよく開く音と一緒に、
 ぬいぐるみの姿をした小さなドラゴンが、店内に転がり込んできた。

「わっ、ごめんなさいゼクさん! この子、また来たくて……!」

 ココが慌てて追いかけてきて、小さく頭を下げる。

 ゼクは布をたたむ手を止め、床でばたつくグルルをひと睨みした。

「……また羽が裂けてる。こいつ、前回直したばかりだろ」

「はい。でも……“飛びたかった”みたいで……」

「ぬいぐるみがか?」

 ココは少しだけ頬を染めて、小さくうなずいた。

「そう言ってる気が、するんです。ほら、ベリィさんも笑ってますし……」

 ゼクは、棚の上でじっとしているベリィに視線を向ける。
 変わらず微動だにしないくまのぬいぐるみ。
 だが、確かに――どこか、楽しそうに見えた。

「……持ってこい」

「はいっ」

 ココは嬉しそうにグルルを抱えてゼクのもとへ運ぶ。
 ゼクは静かに道具を揃え、羽の縫い目に指を滑らせた。

「……暴れすぎだ」

 針を通すゼクの手は、いつもより少しだけ早く、柔らかい。
 ココはその隣で、小さな布と糸を握っていた。

「私……ここにいると、落ち着くんです。ギルドだと、ちょっと背伸びしてて」

 ゼクは返事をしない。だが、グルルの縫い目が整った瞬間、

「……おまえが笑ってると、ぬいぐるみも落ち着いてる気がする」

 その一言に、ココが目を丸くする。

「えっ、いま褒められました……?」

「……気のせいだ」

 針を置くゼクの横で、ベリィがこてりと首を傾けたように見えた。
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