『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』

miigumi

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11章

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第114話『ただいまを言いに来る家と、声のある地図』

 *

 朝。
 町の掲示板やパン屋のカウンター、冷菓屋台の前に、
 手のひらサイズの小冊子が並び始めた。



【しろくま通り・まんなか帖】

– ユル&設計室共同制作
– 「まちを歩く」「声を聞く」「夢を描く」ための案内帖
– モルの“ぬりえコーナー”付き
– ピノの「つめたい幸福論」コラム掲載(やや詩的)



 パン屋の奥さん:「ねえねえ、“裏ページの未来地図”、これ誰が描いたの?」
 ユル(少し照れながら):「……“まちの音”を描いた。歩くと、聞こえるように」



 その日の午後。
 リィナの家に、町の知り合いのおばさんとその孫娘が泊まりに来ることに。

 「突然ごめんなさいね。宿が満室で……でも“あの家なら安心”って聞いて」

 「もちろんです。わたしたちの家、“ただいま”って言われるのが、いちばん嬉しいから」



 その夜。
 レオが紅茶を淹れながらぽつりとつぶやく。

 「“家に客がいる夜”って、静かだけど……あたたかいですね」

 リィナは頷く。

 「わたし、昔は家に人が来るの、ちょっと苦手だったんです。
 でも今は、“誰かの居場所になる”って、すごく特別なことだって思える」



 一方ユルは、ノートに新しい構想を書き留めていた。



【声の地図(案)】

– 町の場所に、それぞれ“聞こえた言葉”を記す
– 例:「光のベンチ:ありがとうが風にのる」
– 移動するたび、“記憶”が重なる地図になる
– 声は“まちが生きている証拠”



 「……地図は、目じゃなくて“耳”でも描ける」



 セイルは設計室の一角で、店の看板を描いていた。

 『しろくま書房』というやわらかな手書き文字。

 「物語って、家と似てる。
 “帰るときに、扉が開いてる”感じがするから」



 夜。
 客室から聞こえる寝息に、リィナがぽそっと言う。

 「レオさん。今日、“うちに帰ってきた感じがした”って言われました」

 レオは隣で微笑んで答えた。

 「ええ、ここはもう、“ふたりの家”じゃなくて、
 “誰かの帰り道にある場所”なんですよ」
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