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1章
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◆第12話 「魔王陛下、静かに守り始める」
「……また来てしまったな」
店の扉をくぐると同時に、ディアボロスは小さく呟いた。
目立つのは良くない。自分でもわかっている。
だが、あの料理――いや、あの“店主”の作る空間には、何かがある。
魔力でも、加護でもない。
ただ……心地よい。
「いらっしゃいませ……あ、あの、こないだの……!」
ミレイアが少し驚いたように顔を上げる。
その声に、ディアボロスの口元がわずかに緩んだ。
「……席は空いているか?」
「も、もちろんです! 今日もラテプレートで……?」
「……それを」
まただ。また、あのプリンとコロッケとハンバーグ。
だが認めざるを得ない。あれは“うまい”。
* * *
「そういえば……お名前、うかがってませんでしたね」
「名乗るほどの者ではない」
「えっ……? えっと……じゃあ、あの、お好きな名前とか……あだ名とか……」
「…………“ディア”とでも呼べばいい」
「……えっ、意外と可愛い」
「な……」
ラテが足元で小さく「くふっ」と鳴いた。
明らかに笑っている。魔王に向かって笑っている。
「“ディアさん”、ですね。ありがとうございます!」
(……この娘、やはり恐ろしい)
笑顔で、魔王にあだ名をつけてくる人間など、これまでいなかった。
だが――悪くない。いや、むしろ、気に入ってしまっている自分がいた。
(……この娘は、“我々”には過ぎた存在だ)
そして、彼は静かに立ち上がると、
帰り際、誰にも見られないように手のひらを逆さに掲げ、
店の土間に、わずかな魔力で円陣を描いた。
見えない。感じない。
だがそれは確かに存在する“守りの結界”。
魔族すら侵入をためらう、高位の魔法陣だ。
「……娘を守るなど、俺のすることではない。だが」
“彼女の料理を奪われるのは――許せん”
「また来る」
その一言だけを残して、ディアボロスは静かに去った。
ラテだけが、残された魔力の余韻にしっぽを揺らしていた。
「……また来てしまったな」
店の扉をくぐると同時に、ディアボロスは小さく呟いた。
目立つのは良くない。自分でもわかっている。
だが、あの料理――いや、あの“店主”の作る空間には、何かがある。
魔力でも、加護でもない。
ただ……心地よい。
「いらっしゃいませ……あ、あの、こないだの……!」
ミレイアが少し驚いたように顔を上げる。
その声に、ディアボロスの口元がわずかに緩んだ。
「……席は空いているか?」
「も、もちろんです! 今日もラテプレートで……?」
「……それを」
まただ。また、あのプリンとコロッケとハンバーグ。
だが認めざるを得ない。あれは“うまい”。
* * *
「そういえば……お名前、うかがってませんでしたね」
「名乗るほどの者ではない」
「えっ……? えっと……じゃあ、あの、お好きな名前とか……あだ名とか……」
「…………“ディア”とでも呼べばいい」
「……えっ、意外と可愛い」
「な……」
ラテが足元で小さく「くふっ」と鳴いた。
明らかに笑っている。魔王に向かって笑っている。
「“ディアさん”、ですね。ありがとうございます!」
(……この娘、やはり恐ろしい)
笑顔で、魔王にあだ名をつけてくる人間など、これまでいなかった。
だが――悪くない。いや、むしろ、気に入ってしまっている自分がいた。
(……この娘は、“我々”には過ぎた存在だ)
そして、彼は静かに立ち上がると、
帰り際、誰にも見られないように手のひらを逆さに掲げ、
店の土間に、わずかな魔力で円陣を描いた。
見えない。感じない。
だがそれは確かに存在する“守りの結界”。
魔族すら侵入をためらう、高位の魔法陣だ。
「……娘を守るなど、俺のすることではない。だが」
“彼女の料理を奪われるのは――許せん”
「また来る」
その一言だけを残して、ディアボロスは静かに去った。
ラテだけが、残された魔力の余韻にしっぽを揺らしていた。
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