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私たちはギルドへと戻ってきた。
「えっと……クエストをクリアしたら、受付の人に言えばいいんだよね?」
私は確認するようにマリリンに聞く。
「うん。今回は私が話すね」
「わかった」
ギルドの扉を開き、私たちはまっすぐ受付へ向かう。
「ルークさん、すみません。クエストをクリアしました」
私がそう告げると、受付にいたルークさんは穏やかに頷いた。
「お疲れ様でした。では、内容確認のため、聖水の提出をお願いします」
私はマリリンの方を見る。すると、彼女が一歩前に出た。
「ルークさん。聖水の提出ですが……他の人に見られない場所でお願いできますか?」
「……なぜですか?」
ルークさんの目がわずかに鋭くなる。
「ここでは話せません。私は“陽剣マリリン”です。信じてください」
真っ直ぐな視線に、ルークさんは少し黙り込んだあと、静かに息を吐いた。
「……わかりました。今回限りです」
そう言って立ち上がり、私たちはギルドの奥へ案内される。
辿り着いたのは、落ち着いた雰囲気の応接室だった。
「どうぞ、こちらへ」
「「はい」」
椅子に座ると、マリリンが小声で言う。
「ココ、聖水を出して」
私はバックパックから聖水を取り出した。
「ルークさん、鑑定をお願いします」
「……鑑定」
次の瞬間、ルークさんの表情が固まる。
「――★5の聖水……!」
「少々お待ちください。経緯を含め、上の者を呼びます」
そう言い残し、ルークさんは急ぎ足で部屋を出ていった。
扉が閉まり、静寂が戻る。
「マリリン……これ、大丈夫なのかな?」
不安で胸がぎゅっとなる。
「大丈夫、とは言えない。でも……あそこで知られるよりは、ずっとマシ」
「どうして?」
「人に狙われる。ココは初心者で、しかも未熟天使でしょ?」
その言葉に、はっとする。
「……忘れてた。ありがとう」
しばらくして、扉がノックされた。
「ルークです。失礼します」
扉の向こうには、ルークさんと――もう一人。
長髪で、穏やかな気配をまとった男性天使が立っていた。
「初めまして。私はラファエル。君がココさんですね」
「……はい」
白と金のラインが入ったローブ、緑の刺繍。
杖とオーブを携えたその姿から放たれる存在感は、明らかに別格だった。
「では、聖水を鑑定させていただきますね」
ラファエルがオーブを掲げる。
「鑑定」
オーブが淡く輝き、彼の瞳が緑から金色へと変わる。
光が私にも触れ、胸の奥がじんわりと温かくなった。
やがて光が収まる。
「……見事ですね。聖水で★5とは。何か特別なことをしましたか?」
その問いに、言葉が詰まる。
「ココ……? 泣いてる?」
マリリンの声で、初めて自分が涙を流していることに気づいた。
「……だ、大丈夫。理由はわからないけど……勝手に出ちゃって」
慌てて袖で拭う。
「すみません。浄化の光が、少し強く当たってしまったようですね」
「ココに、何をしたんですか?」
マリリンが一歩前に出る。
「純正な浄化を行っただけです」
「……ラファエル様は、四大天使のお一人です」
ルークさんが補足する。
「ココさん、経緯を教えてください」
「はい……私は、聖水に聖魔法の《浄化》をかけただけです」
いつの間にか、祈るように手を組んでいた。
「嘘ではないことは分かっています。ただ……未熟天使がこの品質を出せるのは異常です。
どうか、信頼していない相手の前では使わないでください」
「……はい」
私は強く頷いた。
「ココのことは、私が守るよ」
マリリンが言う。
「ですが、あなた一人では、いずれ足りなくなる」
ラファエルは穏やかに、しかしはっきりと言った。
「必要なときは、四大天使を頼りなさい」
聖水は預かられ、私たちは報酬としてお金と羽のブラシを受け取った。
「お疲れ様でした。お気をつけてお帰りください」
私たちはギルドを後にした。
「えっと……クエストをクリアしたら、受付の人に言えばいいんだよね?」
私は確認するようにマリリンに聞く。
「うん。今回は私が話すね」
「わかった」
ギルドの扉を開き、私たちはまっすぐ受付へ向かう。
「ルークさん、すみません。クエストをクリアしました」
私がそう告げると、受付にいたルークさんは穏やかに頷いた。
「お疲れ様でした。では、内容確認のため、聖水の提出をお願いします」
私はマリリンの方を見る。すると、彼女が一歩前に出た。
「ルークさん。聖水の提出ですが……他の人に見られない場所でお願いできますか?」
「……なぜですか?」
ルークさんの目がわずかに鋭くなる。
「ここでは話せません。私は“陽剣マリリン”です。信じてください」
真っ直ぐな視線に、ルークさんは少し黙り込んだあと、静かに息を吐いた。
「……わかりました。今回限りです」
そう言って立ち上がり、私たちはギルドの奥へ案内される。
辿り着いたのは、落ち着いた雰囲気の応接室だった。
「どうぞ、こちらへ」
「「はい」」
椅子に座ると、マリリンが小声で言う。
「ココ、聖水を出して」
私はバックパックから聖水を取り出した。
「ルークさん、鑑定をお願いします」
「……鑑定」
次の瞬間、ルークさんの表情が固まる。
「――★5の聖水……!」
「少々お待ちください。経緯を含め、上の者を呼びます」
そう言い残し、ルークさんは急ぎ足で部屋を出ていった。
扉が閉まり、静寂が戻る。
「マリリン……これ、大丈夫なのかな?」
不安で胸がぎゅっとなる。
「大丈夫、とは言えない。でも……あそこで知られるよりは、ずっとマシ」
「どうして?」
「人に狙われる。ココは初心者で、しかも未熟天使でしょ?」
その言葉に、はっとする。
「……忘れてた。ありがとう」
しばらくして、扉がノックされた。
「ルークです。失礼します」
扉の向こうには、ルークさんと――もう一人。
長髪で、穏やかな気配をまとった男性天使が立っていた。
「初めまして。私はラファエル。君がココさんですね」
「……はい」
白と金のラインが入ったローブ、緑の刺繍。
杖とオーブを携えたその姿から放たれる存在感は、明らかに別格だった。
「では、聖水を鑑定させていただきますね」
ラファエルがオーブを掲げる。
「鑑定」
オーブが淡く輝き、彼の瞳が緑から金色へと変わる。
光が私にも触れ、胸の奥がじんわりと温かくなった。
やがて光が収まる。
「……見事ですね。聖水で★5とは。何か特別なことをしましたか?」
その問いに、言葉が詰まる。
「ココ……? 泣いてる?」
マリリンの声で、初めて自分が涙を流していることに気づいた。
「……だ、大丈夫。理由はわからないけど……勝手に出ちゃって」
慌てて袖で拭う。
「すみません。浄化の光が、少し強く当たってしまったようですね」
「ココに、何をしたんですか?」
マリリンが一歩前に出る。
「純正な浄化を行っただけです」
「……ラファエル様は、四大天使のお一人です」
ルークさんが補足する。
「ココさん、経緯を教えてください」
「はい……私は、聖水に聖魔法の《浄化》をかけただけです」
いつの間にか、祈るように手を組んでいた。
「嘘ではないことは分かっています。ただ……未熟天使がこの品質を出せるのは異常です。
どうか、信頼していない相手の前では使わないでください」
「……はい」
私は強く頷いた。
「ココのことは、私が守るよ」
マリリンが言う。
「ですが、あなた一人では、いずれ足りなくなる」
ラファエルは穏やかに、しかしはっきりと言った。
「必要なときは、四大天使を頼りなさい」
聖水は預かられ、私たちは報酬としてお金と羽のブラシを受け取った。
「お疲れ様でした。お気をつけてお帰りください」
私たちはギルドを後にした。
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