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1章
婚約破棄された公爵令嬢
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──この世界は、四季の神に祝福された四つの国に分かれている。
その中でも春の国は最も華やかで、文化と礼節の中心とされていた。
春の国の中心に建つ宮廷――その大広間で、今まさに前代未聞の春の嵐が巻き起ころうとしていた。
「――リシェル=フロラリア! 貴様の罪、すでに聞き及んでいる!」
壇上からこちらを見据え、春の国の第一皇子、ロラン・ベルフルールは高慢な笑みを浮かべて言った。
彼の背後には、か弱げに肩を震わせるリシェルの妹、セレナ。
その瞳には、恐怖とも哀れみとも違う、どこか愉悦めいた色があった。
家族であるはずの妹と、婚約者であるはずの第一皇子が自分を告発するためにあの場所に立っている。
リシェルは思った。
どうしてこんなことになってしまったのだろうと。
まるで悪夢のようだ――いや、これが現実なのだ。
「妹を虐げ、皇族の威信を損ねるとは……愚かにもほどがある。貴様は、俺の婚約者でありながら、どれだけ俺に恥をかかせるつもりだ?」
重苦しい沈黙の中で、リシェルは静かに頭を垂れていた。
だが、心の奥では、戸惑いとわずかな恐れが渦巻いていた。
(セレナを私が……? どうなっているの……?)
知らぬ間に掌を握りしめていた。爪が食い込むほどに。冷や汗が背を伝う。
それでも、彼女は毅然として言った
「なにかの間違いではございませんか?私が妹を虐げていたという事実はございません」
――ただ、事実を述べただけだ。それが、かえって挑発に映ったのだろう。
「しらじらしい奴だ!」
ロランの怒声が響く。
「俺の愛するセレナを虐げる奴など、俺の婚約者にふさわしくない。それにお前はロゼリア様の加護がセレナの能力の高さとは比べ物にならないくらい弱いじゃないか! この国の国母としてふさわしくないだろう! 今この時をもって、お前との婚約を破棄する!」
貴族たちがざわめいた。
――ロラン殿下が婚約破棄を?
――セレナ様が虐げられていたなんて……本当なの?
――でも、あのリシェル様が? まさか……
――加護の量の多いセレス様を妬んでいたのか?
誰もはっきりとは言えない。ただ、この場で権力を持つのは第一皇子だ。異を唱える者などいない。
(確かに私の春の神《ロゼリア》の加護は強くない。けれど、今日まで礼儀も教養も磨き、公務にも励んできたはずなのに……)
心臓は早鐘を打っていたが、ロランを説得しようとリシェルは一歩、前へ出る。
「殿下。お待ちくださいませ」
その声は静かでありながら、宮廷の空気を切り裂くような鋭さがあった。
ロランが目を細め、鼻を鳴らす。
「……まだ何か言うつもりか?」
「はい。どうか、わたくしの話を少しだけでもお聞きいただけませんか」
リシェルは一礼し、ゆっくりと顔を上げる。
「わたくしは確かにロゼリア様の加護に恵まれてはおりません。ですが、だからこそ、一歩一歩、努力を積み重ねてまいりました。礼儀も、政務も、王妃としての資質も、常に『春の国の未来』を想いながら……」
その中でも春の国は最も華やかで、文化と礼節の中心とされていた。
春の国の中心に建つ宮廷――その大広間で、今まさに前代未聞の春の嵐が巻き起ころうとしていた。
「――リシェル=フロラリア! 貴様の罪、すでに聞き及んでいる!」
壇上からこちらを見据え、春の国の第一皇子、ロラン・ベルフルールは高慢な笑みを浮かべて言った。
彼の背後には、か弱げに肩を震わせるリシェルの妹、セレナ。
その瞳には、恐怖とも哀れみとも違う、どこか愉悦めいた色があった。
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リシェルは思った。
どうしてこんなことになってしまったのだろうと。
まるで悪夢のようだ――いや、これが現実なのだ。
「妹を虐げ、皇族の威信を損ねるとは……愚かにもほどがある。貴様は、俺の婚約者でありながら、どれだけ俺に恥をかかせるつもりだ?」
重苦しい沈黙の中で、リシェルは静かに頭を垂れていた。
だが、心の奥では、戸惑いとわずかな恐れが渦巻いていた。
(セレナを私が……? どうなっているの……?)
知らぬ間に掌を握りしめていた。爪が食い込むほどに。冷や汗が背を伝う。
それでも、彼女は毅然として言った
「なにかの間違いではございませんか?私が妹を虐げていたという事実はございません」
――ただ、事実を述べただけだ。それが、かえって挑発に映ったのだろう。
「しらじらしい奴だ!」
ロランの怒声が響く。
「俺の愛するセレナを虐げる奴など、俺の婚約者にふさわしくない。それにお前はロゼリア様の加護がセレナの能力の高さとは比べ物にならないくらい弱いじゃないか! この国の国母としてふさわしくないだろう! 今この時をもって、お前との婚約を破棄する!」
貴族たちがざわめいた。
――ロラン殿下が婚約破棄を?
――セレナ様が虐げられていたなんて……本当なの?
――でも、あのリシェル様が? まさか……
――加護の量の多いセレス様を妬んでいたのか?
誰もはっきりとは言えない。ただ、この場で権力を持つのは第一皇子だ。異を唱える者などいない。
(確かに私の春の神《ロゼリア》の加護は強くない。けれど、今日まで礼儀も教養も磨き、公務にも励んできたはずなのに……)
心臓は早鐘を打っていたが、ロランを説得しようとリシェルは一歩、前へ出る。
「殿下。お待ちくださいませ」
その声は静かでありながら、宮廷の空気を切り裂くような鋭さがあった。
ロランが目を細め、鼻を鳴らす。
「……まだ何か言うつもりか?」
「はい。どうか、わたくしの話を少しだけでもお聞きいただけませんか」
リシェルは一礼し、ゆっくりと顔を上げる。
「わたくしは確かにロゼリア様の加護に恵まれてはおりません。ですが、だからこそ、一歩一歩、努力を積み重ねてまいりました。礼儀も、政務も、王妃としての資質も、常に『春の国の未来』を想いながら……」
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