蓬莱皇国物語Ⅱ~飛翔

翡翠

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   至情

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 乳母…… それがどんな存在なのか、武にはわからない。 けれど実母との思い出がほとんど残っていない夕麿には、彼女が母親に匹敵するような存在なのだと何となくわかってしまう。 

 夕麿の話に度々登場した彼女が本人が目の前にいる。 何もかも失った。 そう言っていた夕麿に戻って来た大切な人。 夕麿にとっては本当の家族。 きっと武に縋るように求めていたものは、これからは彼女が満たしていく。 そうして…少しずつ自分は夕麿には必要のない、用済みの存在になっていくのかもしれない。 学院の呪縛から解放され後で夕麿を失ったらどうなるのだろう? そういえば…この邸には牢のような離れがあった。 あれはもしもの時の幽閉場所なのかもしれない。 

 六条家へ乗り込むのを提案して置きながら武はそんな事を思っていた。 

 夕麿が幸せならば…それでも構わない。 願うのはそれだけだから。 その為ならば何だってする。 自分に出来る事なんて…ホンの少ししかないのは十分に理解している。 武はほとんど味のわからない朝食を笑顔て嚥下えんかした。 

「久我 周さまがいらっしゃいました」 

 元六条家の執事 唐橋 光重からはしみつしげと前後して、約束通り周が御園生邸を訪れた。 武は夕麿に乳母の絹子や唐橋と、ゆっくり話が出来るように自分たちの部屋へ案内させ、周には来客用の部屋へ移動してもらった。 

「昨日の今日でごめんなさい。 

 まず旅行の事。 ありがとう、周さん。 楽しかった」 

「至らぬ事ばかりで心苦しく思っておりましたが、そう仰っていただけると嬉しゅうございます」 

 周は今日、覚悟を決めてここへ来た。 秘めた筈の想いはとっくに、武も夕麿も知るところになってしまった。 全ては自業自得。武に何を言われても受け入れるつもりだった。 どうしても忘れる事が出来なかった想いだから。 

「周さん…俺が何の為に呼んだかわかってるよね?」 

「はい」 

 嘘偽りも隠し立ても一切しないという決心で真っ直ぐに武を見つめた。 視線をそらしたのは武の方だった。 

「それは…捨てられないんだよね?」 

 問い掛けた姿は余りにも痛々しく儚はかなげに見えた。 本来ならば周を罵倒して当たり前なのに…これではまるで横恋慕して悩んでいるのは武の方に見えた。 

「ごめんなさい…何も知らないで」 

「武さま…僕が悪いのです。 いつまでも未練がましいのは自覚しております」 

 悪い方へ悪い方へと考えてしまう、武の今の状態を自分が引き起こしたかもしれない。 そう思うと周は強い自責の念にかられていた。 

「…止めて欲しい」 

「武さま…」 

「って言いたいけど……捨てられるなら…恋でも愛でもないよね…だから辛いし悲しいんだものね」 

 武の瞳から零れ落ちる涙を見て周は高辻の言った、『一時凌ぎ』がこんなに脆いものなのだと強い痛みを以て知った。 

「何か…あられましたか?」 

「ううん。 たいした事じゃない」 

 そう夕麿の願いが幾つか叶っただけ。 

「本当は周さんに夕麿にもう近付かないでって…言うつもりだった。 でもやめる。 

 ねえ、周さんが望む事は何?」 

「僕はただ夕麿に笑っていて欲しいだけです。 夕麿が幸せに笑っているなら何もいりません」 

「……俺と同じなんだ…周さんも。 

 わかった」 

「武さま?」 

「そのままで良いよ。 夕麿がロサンゼルスに戻ったら…夕麿の事、一緒に話そう?俺の知らない夕麿の事を聞かせて?」 

「それは…多分、夕麿が嫌がると思いますが…」 

「うん。 義勝兄さんが中等部の写真を出して来ただけで去年は大騒ぎだったから」 

 思い出の中で生きて行けたら良い。 それが出来なくなったら…… 

「武さま、僕は幾らでもあなたに彼の話をするのは構いません。 ですが…」 

「ありがとう。 ねぇ、今日は他に予定ある?」 

 周がそれ以上何かを言うのを止めるように武は話を切り替えた。 

「いいえ」 

「じゃあ、六条家に夕麿のお母さまの遺品を取りに行くから一緒に来てくれる?」 

「六条家へおもむかれるのでございますか?」 

「うん。 乳母って人と執事だった唐橋って人が見付かったんだ。 夕麿の為にも透麿の為にも、佐田川 詠美の残したものを排除したい」 

 夕麿を守る為。 幸せでいる為。 その為ならば鬼にでも悪魔にでもなる。 

 武のそんな決意を周は思い出していた。 六条家を以前の姿に戻す。 そうすれば夕麿には後の憂いがなくなる。 いやそれだけではない。 武は自分の傍から夕麿が去った時、彼が帰れる場所をつくろうとしている。 

 全てを整えたら武はどうするのか? 

 そう考えると恐ろしくなった。 

「わかりました。 それで何時頃に参られますか?」 

「午後1時の約束になってる」 

「承知いたしました。 それまで清方さんと話をしたいのですが?」 

「成瀬さんと奥にいるよ? ちょっと待って。 

 文月、周さんを高辻先生のお部屋へ案内して」 

 ドアを開けて控えていた文月を呼ぶ。 

「ご案内いたします」 

 周は武に礼を言って高辻の所へと向かった。 

 武は無言で来客用の部屋に座り続けていた。重くなるだけの気持ちに見切りを付けて居間に戻って来た。

「武、お話は終わったの?」

「うん。あ、お茶頂戴、喉渇いた」

「武、餡餅あんもち食べる?」

「うん」

 お茶と一緒に出された餡餅に武は満面の笑みを浮かべた。

「本当に武まで六条家に行くつもりなの?」

「行くよ?夕麿が生まれた家って見たいから」

「そう…」

 小夜子は何かに躊躇ためらうような顔をした。

「どうしたの?」

多治見 絹子たじみきぬこさんなんだけど…」

「うん?」

「あなた方の結婚を快く思ってみたいなの」

「…普通の反応だろ…?諸手上げて賛成する人間がむしろ珍しくない、母さん?」

「あなたは大丈夫なの?」

「何が?むしろ……俺より、夕麿が心配だ…」

 そこへ文月に抱えられるように夕麿が蒼い顔で戻って来た。

「夕麿、どうしたの!?」

眩暈めまいがしただけです、大した事はありません」

「何を言ってる!

 文月、高辻先生を!」

「すぐにお呼びいたします」

 文月が居間から出て行った。

「武…武…」

 縋り付いて来る夕麿を抱き締めながら武は小夜子と頷き合った。

「夕麿、お茶飲む?」

 気分を変えさせようと声をかけるが首を振るばかりだ。

「夕麿…?」

 武のシャツを握り締めている指が、微かに震えているのに気が付いた。

「夕麿!?夕麿、薬は!?」

 過呼吸を起こしかけていた。彼の衣服のポケットを探る。

「ない!」

 ここのところ発作らしい発作を起こしていない夕麿は、薬を常に携帯しなくなっていた。

「薬は部屋?」

 小さく頷く。

「私が持って来るわ」

「テーブルになかったら、ベッドの辺りだと思う」

「わかったわ」

 一度過呼吸を経験した武には夕麿の苦しみがわかる。背中を撫で続けて何とか落ち着かせようと努力する。複数の足音がして文月が呼びに行った高辻たちが駆け付けて来た。

「武さま、夕麿さまは?」

「過呼吸を起こしてる…」

「薬は?」

「母さんが部屋に取りに行ってくれた」

「失礼いたします」

 高辻が脈拍を見ようと夕麿の手を取る。とその手は夕麿自身に荒々しく振り払われた。

「武、夕麿の薬だ!」

 義勝が薬のケースを手渡し雅久が水を持って来た。小夜子が絹子と唐橋を連れて居間に戻って来る。武はその様子をチラリと見てから夕麿に声を掛けた。

「夕麿、薬が来たよ?」

 反応が鈍い。雨が降った時の錯乱状態とは違う感じがする。ケースから出した薬を指先に挟んで、夕麿に差し出すが首を振って拒否する。

「……先生、過呼吸は治まったみたいだけど…飲ませた方が良い?」

「お願いします。過呼吸の薬ではありませんので」

「了解」

 処方されている薬は既にパニック発作のものではなかった。高辻は敢えて口にはしなかったが、それはもっと強いものに変わっていたのだ。確かに発作は減った。だが別の部分で夕麿の症状は悪化していたのである。

 武はグラスを手に取り水を一口含んだ。まず水だけを口移しで飲ませてみる。

「…ン…」

 わずかな抗いを見せながらも夕麿は水を嚥下した。今度は唇に薬を挟んでゆっくりと唇を重ねて舌先で中へ入れる。すぐに水を含んで飲ませた。もう一度水を飲ませてから、今度は唇を普通に重ねて夕麿の口腔内を確認した。

「先生、飲ませた」

「では、お部屋へ。すぐに眠られると思います」

「わかった。夕麿、部屋へ行こう?立てる?」

 夕麿はノロノロと立ち上がった。武が彼を支えて居間を出て行こうとすると絹子が夕麿の腕を掴んだ。

「!?」

 その瞬間、彼女は夕麿に振り払われた。バランスを崩しかけた彼女をとっさに唐橋が支えた。

「…触る…な…私…に…触る…な…!」

「夕麿!」

 慌てて武が抱き締めてなだめるように背を撫でた。

「大丈夫だから。何も心配しなくて良いよ。さあ部屋へ行こう」

 常になく過敏な反応を見せた夕麿を、武が連れ去るのを全員が言葉もなく見守った。

「マズいですね…」

 高辻が渋い顔で呟いた。

「いつもの発作ではないですよね?」

 義勝が問い返した。

「パニック発作と呼んでよいのかどうか…武さま、夕麿さま、双方に長期間離れているストレスが弊害へいがいとなって症状に出始めています」 

 高辻は深刻な面持ちで黙り込んでしまった。 

 しばらくして武が戻って来た。 

「御眠りになられましたか?」 

「俺に縋り付いて。 離すのにちょっと苦労した。 先生…あの薬、どれくらいで醒める?」 

「1時間程ですね」 

「今何時?」 

「10時を少し過ぎたくらいです」 

「30分したら戻る。 目が覚めた時に俺がいなかったら、また発作を起こしそうな気がする」 

「どういう事なのか…説明をしていただけますか?」 

 絹子が武に詰め寄った。 すかさず周が遮る。 

「無礼であろう、多治見 絹子」 

 夕麿大事の気持ちはわかるが彼女の身分では通常、許可なく武の側に寄って直接言葉を交わせはしない。 学院ではその辺りを簡略化してあるがここは外なのだ。 まして彼女は武に良い感情は持っていないように周には見えた。 そんな彼女を武に近付けるわけには行かなかった。 

「あなたは…どなたです?」 

 絹子は不快そうに問い返した。 

「紫霞宮家の宮大夫みやのたいふ、久我 周です」 

「久我…周さま…? 浅子さまの!?」 

「武さまは気さくでお優しいお方ですが、それに甘えないでいただきたい。 よろしいですね?」 

 武の為にも夕麿の為にも周は譲る気持ちはなかった。 二人の結び付きを理解しないならば、まずは身分差をわきまえさせなければならない。 絹子は周の厳しい口調にたじろいだ。 

「武さま、まずはお座りになってください」 

 武は無言で頷いて雅久と義勝の間に座った。 

「高辻先生、夕麿は良くなってるの? 悪くなってるの?」 

 不安な声を上げる武をいたわるように雅久が頭を抱く。 武の指が震えているのが見えたからだ。 

「パニック発作の種類が変わった…とご説明するのが今は相応しいと思われます。 やはり武さまと長期間離れておられますのが、大変なストレスになられてます。 夕麿さまは責任感の強い方です。 武さまがロサンゼルスに渡られる時の御為、様々事を手配されていらっしゃいますのがご負担になられているのかもしれません」 

「そう…俺がまた…心配させたしな…」 

「ご自身をお責めにはなられませぬように。 あなたさまも治療をお受けになられていらっしゃいます事をお忘れになられませんように」 

「でも…」 

「それを仰いますならば、周はもっと自分を責めなければならなくなります。 周の罪を問われますか?」 

 高辻の言葉に顔を上げて武は周を見た。 彼は目を伏せて立っていた。 

「周さんは……悪くない」

「そうお思いなされますならば、ご自身をお責めになられますな。 それは同時に周を責める事になります」 

「清方さん…僕は責められて当然の立場、しかし武さま。 熱を出した者を責める事は出来ません。 それと同じ事だと僕も思います」 

 俯く武に雅久が言葉を繋いだ。 

「武さま、夕麿さまに申し訳なくお思いになられるのでしたら、皆さまが申される事をご理解なさいませ。 あなたさまがご自身をお責めになられましたら、夕麿さまはより一層お苦しみになられましょう」 

「…うん…わかった」 

 唇を噛み締める武の頭を義勝が撫でた。 

「夕麿は大丈夫だ」 

 気休めでも武の心には響く。 

「夕麿はお前が守るんだろう?」 

 その言葉に武が顔を上げた。 そしてしっかりと頷いた。 

「俺…部屋に戻る」 

「ああ、側にいてやってくれ。 夕麿はお前じゃないとダメなんだから」 

「うん…義勝兄さん、雅久兄さん、周さん、先生、ありがとう」 

 幾分明るい表情になって武は居間を出て行った。 それをしっかりと見送ってから高辻が口を開いた。 

「雅久君、義勝君、お見事でした」 

「俺たちは表向きは、武さまの兄だからな。 それに嘘は言ってない。 俺は今でも武さまが学院に初めて、足を踏み入れられた日の夕麿の様子をはっきりと覚えている」 

「それは初耳ですね? お二方共に一目惚れだったと申されていますが」 

 高辻が興味津々に問い掛けた。 

「夕麿が申請していたpartnerパートナー制度の廃止の条件として、武さま…当時はこの御園生の養子として編入されたけど… partnerになる事が提示されたんだ。 当時の夕麿は今更とかなり嫌がっていたが渋々了承した。 

 資料を渡されて自らゲートまで出迎えに行った。 だが昼過ぎに生徒会室に戻って来た時には表情が変わっていたんだ」 

 そうあの事件以来、本当の意味で夕麿は笑わなくなった。 恐らくは本人も気付いてはいなかっただろう。 自分の笑顔が笑顔ではなかった事に。 

「笑ってたんだ。 楽しそうに。 そして言った……」 

『慣れない場所に投げ込まれた子猫のようで、なかなか可愛い子でしたよ?』 と。 

 義勝はその時に思ったのだ、直感的に。 やっと夕麿を救ってくれる者が現れたと。 

「まあ…互いに素直になるのに色々あったけどな…半ば慈園院 司じおんいんつかさのお蔭か…」

「ちょっと待て、そこで何故、慈園院 司の名前が出て来る!?」 

 司の事をよく知っている周としては、武と夕麿の結び付きに彼の名前が出て来るのかわからない。 

「武さまにちょっとな…」 

「手を出したのか!?」 

「未遂ですよ? 残っていた星合 清治ほしあいせいじの記述から判断するとワザとだったみたいです。 彼らは武さまの事を恐らく知ってた。 夕麿が伴侶の第一候補として、partnerになる事を強制された理由も。 あの時点で中等部の事件の被害者として、学院に残っていたのは慈園院 司と夕麿の二人だけでしたしね」 

「それは知っている。 多々良たたらを刺した生徒は、今でも精神科の隔離病棟にいる。 二人以外は…転校して行って、その後の消息は不明になっている。 慈園院が星合と心中した今、安否がはっきりしているのは夕麿だけだ」 

「安否はわかっている」 

 雫が低く答えた。 

「被害者は夕麿さまを入れて8人。 一人は学院の病院。 一人は従者で恋人だった者と昨年夏に青酸カリを飲んで心中。 それが君たちが知っている範囲だろう? 夕麿さまを入れて3人しか君たちは知らない。 だが学院都市警察は把握している。 2人が学院から出た後に自殺。 1人は精神科に現在も入院している。 1人はヨーロッパへ赴任した伯父夫婦に連れられて留学」 

「雫さん…あと一人、残っていますよ?」 

 周が雫を振り返ると彼はスッと視線をそらした。 

「佐田川一族に親が売り飛ばしたらしい。 現在、どこにいるのか、生きているのか死んでしまったのかわからない」 

「夕麿が辿ったかもしれない道を…本当に行ってしまったのがいるのか… 

 成瀬さん、名前、わかりますか?」 

「訊いてどうする?」 

「何となく…」 

本庄 直也ほんじょうなおやだ」 

「本庄だって!? 」 

「知り合いか?」 

「中等部生徒会で本当は彼が副会長になる筈でした。 雅久と並んで注目された美形でした。 

 本庄がそんな事に……」 

 義勝はがっくりと肩を落とした。 周はそれに哀しげに首を振ると絹子の方へ視線を向けた。 

「あなた方が六条家を追われた後、夕麿が佐田川 詠美を含む佐田川一族に、どんな目に合わされたのか…話そう。 それでもなお武さまと夕麿を裂きたいと言うならば、今度は僕があなた方を追い出す」 

 夕麿を想い続けても良いと言ってくれた武の恩に報いる為にも、どんな事もする覚悟を決めていた周は周の知っている事を、義勝は義勝が知っている事を全て唐橋と絹子に話した。 最初は憤っていた二人も、次第に蒼褪めて言葉をなくした。 

 そして…全てを知った武の報復も。 

「あの時の武さまはお止めしなければ本当に、その手で佐田川一族を殺しに行かれそうでした」 

 文月が答えた。 

「それでも武さまは…六条家の生活費や維持費を、ずっとお出しになられておられます。 六条 透麿さまが学院に入られたのはご存知なくても、その学費そのものは武さまが出されている中から、捻出されている筈でございます」 

 義勝たちには初耳だった。 中等部の一般生徒で寮費や食費、授業料、細々とした生活必需品や雑費を合わせれば、月額で数十万円が必要とされる。 これが高等部の特待生になると低く見積もっても月額百万円前後、武のように特別室に入ると隣室の経費が入るのでその倍以上が必要になる。 だから特待生は株式や先物の取引が特例で認可されているのだ。 実際、御園生に養子に入るまで義勝は、基本的な学費は離婚した両親が半分ずつ出してくれていた。 だが特待生であり生徒会副会長の部屋はそれに上乗せが必要だった。 その分を自分で稼いでいたのだ。 武の特別室の隣室に移って寮費は必要なくなったがそれでも上乗せは存在した。 紫霄学院はそれ程の高額を必要とする学校なのだ。 

「文月、武さまは一体、どれだけを六条家に出していたんだ?」 

「私がお届けいたしておりましたから、よく存じ上げております。 5000万円程でございます」 

「夕麿は知ってるのか?」 

「いいえ、存じ上げておりますのは、奥さまと私だけでございます」 

「義勝、武さまは夕麿さまに六条家とお父上さまと決別させたのを、気に病んでいらっしゃったのではありませんか?」 

「多分な…」 

 義勝は武がそこまでしているとは思ってはいなかった。 

「となると…透麿のあの態度はいただけないな。 僕はもう少しあの子に喝を入れないとダメだね」 

 周も驚いていた。 武がそのような素振りを見せた事は一度もない。 

「これでもまだ、夕麿と武さまを引き裂くか? そんな事をすれば間違いなく二人とも死ぬだろう」 

 絹子は白い顔で首を振った。 

「本来ならば夕麿は、武さまの伴侶になれる状態ではなかった。 二人共、上が定めたお妃の条件は知っているだろう?」 

 二人はしっかりと頷いた。 

「実際にそれを理由に一度は別の方に決まりかけていた。 夕麿を選んだのは武さまだ。 選ばれなかったら彼は生涯、学院から出られなくなっていた」 

「何故でございますか?」 

 絹子が納得出来ないと周に詰問するように言う。 

「夕麿は…昨年の夏休み前に六条家から廃嫡になっている。 もちろん御園生に養子に入ると言う条件でそれは撤回されたが」 

 絹子と唐橋は夕麿が詠美によって追い詰められて、身動きも取れずボロボロにされてしまったのを知って激しいショックを受けていた。 

 そこへ高辻医師から彼の精神疾患について説明されて、とうとう絹子も唐橋も目許を拭わずにはいられなくなった。 夕麿の治療には武が必要不可欠である事。 このままでは夕麿の精神が崩壊する危険性がある事。 武には告げられない事実が、高辻の口から全員に知らされたのである。 

「治療は出来るのですか?」 

「現在も治療中ですが、本格的な治療には幾つかの条件が整わなければなりません」 

 今はそれでも小康状態とも言える安定を見せてはいる。 だがそれは今日のようにストレスの蓄積とわずかな刺激で簡単にバランスを失う。 武がいる為に何とか抑制は出来る。 今、高辻が心底恐れているのはこの休暇明けから、武の渡米までの半年という長い期間をどうするか……と言う問題だった。 せめて春休みに武を一時的に渡米させれないか。 それを周と雫が密かに根回し交渉していた。そこさえ 乗り越えれば必ず二人は誰もが羨む夫婦になる。 幸せに互いに支え合い大切な家族と生きて行く。 

 高辻はそれが武と夕麿への恩返しだとも思っていた。 もちろん主治医としての責任と義務もある。 だが自分たちを含める周囲の幸せを願い、心を尽くす二人が最も幸せであるべきなのだ。 その想いは義勝と雅久も同じだった。 武と夕麿が寄り添って微笑んでいられる未来を。 

 彼らの願いは一つ。 

 だからこそ夕麿に近い絹子と唐橋にはわかって欲しかったのだ。 

 二人の幸せの為に。 

 周の父 久我 周哉くがしゅうやのたっての願いで武たちは、荷物を御園生邸へ向かわせ久我家に寄る事になった。 以前、母の浅子が御園生邸に乗り込んだ経緯があり、周はどちらかというと二人を案内するのは気が重かった。 

 武にしても他家を訪問するのは、今回が初めての出来事である。 六条家は武と御園生家の庇護下にある。 それに何と言っても夕麿の生家だ。 だからさほど緊張はしなかった。 しかし…久我家にはそうはいかない。 午前中の発作もあって未だに不安定な夕麿に縋る事も出来ない。 もし何か間違えば夕麿にも周にも御園生にも、恥をかかせてしまう事になる。 

 絹子と雫を車に残して、二人は周の案内で久我邸の来客用リビングに入った。 

「ようこそお運びくださいました」 

 周哉と浅子がにこやかに出迎えた。 

「夕麿さま、ロサンゼルスは如何ですか?」 

 取り留めのない会話が交わされる。 しかし夫妻はお茶を出したまま、武は存在していないかのように無視した。 着替えの為に周は席を外してしまったので、武はただ黙って座っているしかない。 それでも夫妻は夕麿には叔母夫婦なのだから…と自分なりに納得していた。 

 しばらくして周は戻って来た、異母妹の由衣子を連れて。 

「夕麿お兄さま、素敵なお着物をありがとうございます」 

 淡いピンクのワンピースに同じ色の大きなリボンを、頭に付けた由衣子が夕麿に嬉しそうに礼を言った。 

「気に入っていただけましたか?」 

「はい、とっても綺麗で嬉しいです」 

 綺羅綺羅と瞳を輝かす彼女を見て武はやっぱり女の子だなと感心した。 

「武さま、お茶のお代わりは如何ですか?」 

 ジノリのティーカップが空になっているのを見て、周が気を利かせて声をかけた。 

「いえ、いりません」 

 いつものような軽い返事は出来ない。 緊張した面持ちの武に周は明るい笑顔を見せて頷いた。 それをまた無視するように今度は由衣子が仕切りに夕麿に話し掛けた。 久我夫妻はそれを楽しそうに眺めている。 雰囲気が奇妙だった。 周も気が付いた。 だが自分の両親が何を企んでいるのかがわからず、訝しげな眼差しでなり行きを見つめた。 

「それで、ロースクールを卒業したらどうされるのです?」 

「武と二人で御園生の経営に携わる事になっています」 

 どうやら夕麿はまだ気が付いていない様子だ。 

「六条の企業を継ぐ気はないのかね?」 

「現在、優秀な経営陣が立て直しを行ってくれていますし、私は六条を出た身ですから」 

 流石に夕麿も話の方向をいぶかり始めたように見えた。 

「では六条家の跡継ぎはどうなさいますの? まさかあの女の息子に継がせると?」 

「それはまだ保留状態です」 

 浅子は詠美が大嫌いだった。 

「夕麿さまがお継ぎになれないならお血筋を残される為にもやはり、紫霞宮さまとのご関係はそのままで、別に北の方(妻)を持たれるべきでしょう」 

 周哉の言葉に夕麿本人も武と周も絶句した。 

「うちの由衣子は如何でしょう? 10年もすれば良い年頃になります。 幸いに娘も夕麿さまの花嫁になりたいと先日、御園生家から帰宅してから申しております」 

「正室はご無理でも側室で構いませんの。 千年の血筋である六条と翠子さまのお血筋、双方を残すべきですわ」 

 二人はこの場に武がいる事をわかっていて夕麿に由衣子をめあわそうとしていた。 

「紫霞宮さま、あなたさまだっておわかりですわよね? 私どもでは側室は当たり前の事。 跡継ぎの為ならば皇家でも女御・更衣を持たれます。 もちろん国民への示しの為に誕生した御子は皆、ご正妃の御産みあそばされた事になります。 

 由衣子が夕麿さまの御子を産んでも、ちゃんと私どもで六条家の跡継ぎとしての手配はいたしますわ」 

 浅子は当たり前の事だと淡々と武に噛み含めるように言った。 

「よろしゅうごさいますよね、紫霞宮さま?」 

 武は蒼白になって震えていた。 

「申し訳ございません、私は生涯、武さまのみを伴侶として子は持たぬ誓いをいたしております。 従ってこのお話はお受け出来ません」 

 幾分、怒りを孕んだ夕麿の声が響いた。 

「そこは根回しで何とでもなるものです」 

「…私は女性は好きではありません」 

「あらでも専属の精神科医の方が…」 

「いい加減にしてください、おもうさん、おたあさん!」 

 耐えかねた周が怒声を発した。 

「恥知らずな! 武さま、夕麿さま、こんなご不快な話をする為に両親がご招待したとは思いませんでした。 心からお詫び申し上げます」 

 周が謝罪するその横で武は唇を噛み締めて俯いていた。 夫妻の言葉が胸に突き刺さった。 夕麿の為に…それを考えてはいた。 だが現実にこうしてまだ子供であっても女性を指し示され、夕麿の子を産む花嫁にと目の前で言われてショックだった。 元より子を持てない定めが下りている武を、不用な存在と言っているのと同じだった。 

「周さん、日頃のあなたの武さまへの忠義心に免じて今日は不問に付します。 しかしかような僭越せんえつ、次は許しません」 

「肝に命じて両親に申します」 

「武、帰りましょう」 

 夕麿に手を握られて立ち上がったがショックで声も出ない。 優しく抱き寄せられて来客用リビングを出た。 すぐに周が追って来た。 

「少し外で待っていてくれないか?」 

 切羽詰まったような周に夕麿は頷いた。 

 周はすぐに廊下の奥へと姿を消した。 

 待っていた雫と絹子に事の次第を夕麿が話す間も、武は涙を浮かべて震えていた。 突き付けられた現実。 それは武が思っていたものよりも、冷たく鋭く心を切り裂いた。 
 
 いつか来る現実。 夕麿を失う未来。 子を成して温かな家庭をつくれない武。 武が愛し武を愛したが故に夕麿まで普通の幸せを失った。 自分が耐えれば良いのだと。 頭の中ではわかっていても、夕麿のその腕が美しく成長した由衣子を抱き締めるとしたら… 嫌だと言うのは簡単だ。 だがそれは自分のわがままではないのか? 醜い嫉妬心ではないのか? 答えのない悲しみが心を満たしていた。 覚悟なんて出来ていない自分に今更ながら気付いてしまった。 どうして良いのかもわからなかった。


 周は自分の部屋に駆け込んで、バッグに手当たり次第に荷物を詰め込んだ。やはりこの家にはいたくない。両親の言葉が清華貴族として、当たり前の考え方だったとしても絶対に許せなかった。荷物を手に来客用リビングのドアを開けて中の両親に告げた。

「僕は出て行きます。あなた方は僕の気持ちも宮の大夫としての立場も今上の御心も踏みにじった。こんな家、もうごめんです。跡継ぎはそれこそ、由衣子に婿でもとるのですね」

 これで両親が周を学院に閉じ込めると言うなら、それこそ『暁の会』に救いを求める。夫婦仲はとっくに破綻しているのに、こんな時だけ手を組む両親が周は大嫌いだった。


 車に乗って夕麿に言った。

「どこか、適当なホテルの近くで降ろしてくれ」と。

「家を出るのか、周?」

「そうですよ?元から大嫌いでほとんど家には帰らないんです、僕は。今回、気まぐれを起こして帰ったらこれだ。あんな両親、こっちから願い下げです」

 武と夕麿を傷付けてしまった。両親が普通に二人をもてなすなど有り得ない事だと、何故気付かなかったのだろう?

「周さん、ホテルではなく、御園生邸へ滞在してください」 

「夕麿…」 

「構わないですよね、武?」 

 夕麿に抱き締められたま武は小さく頷いた。 その姿に周は掛ける言葉がみつからなかった。 

「武、私が結婚の折りにした誓いは絶対に破ったりはしません。 私はあなた以外を抱き締めたいとは思いません」 

 夕麿の言葉に武は無言で頷いた。 夕麿の言葉を嬉しいと思う。 だがその反面、夕麿の人生を犠牲にしているとも思う。 愛する人の幸せを願いながら、断ち切れない自分の想いが悲しかった。 涙が溢れても声を上げる事が出来なかった。 夕麿が辛く思うのはわかっていても自分の心も感情も制御出来ない。 誰かに助けを求めたくても求める先がわからない。 

 夕麿に自分が不必要になった時、彼の人生がどうなるのか。 六条家に帰るとすれば当然、普通に結婚して子をもうけ、生きて行くのだという漠然としたものだった。 その時、自分はどうやって生きて行けば良いのだろうか。 武は光への道が完全に閉ざされたと感じていた。 後に残ったのはどんよりと重くまとわりつく、タールのような闇だけしかなかった。

 御園生邸へ戻って周は小夜子と有人に手をついて謝罪した。 両親の企ては御園生家に対する挑戦とも受け取れた。 武の乳部としての御園生家の面目を潰す行為であるだけでなく、一つ間違えば武と夕麿を奈落の底へ突き落としかねない行為だった。 

「周君、申し訳ないが御園生としては、久我家にそれなりの報復をさせていただく。 ここでこのような企てを許せば紫霞宮家にも御園生にも傷が付く。 勲功貴族には勲功貴族なりの誇りがある。 ましてや武さまも夕麿さまも表では私の大切な息子たちだ。 こんな侮辱は決して許さない」 

 有人の言う事はもっともだった。 

「僕もそうすべきであると思います」 

 貴族社会では当たり前でも学院で育った矜持きょうじは真っ直ぐで誇り高い。 それは周も夕麿に引けを取らぬ程だった。 ましてや愛する夕麿を侮辱され、唯一の主と決めた武を蔑ろにされたのだ。 如何に相手が両親でも周は許すつもりは毛頭なかった。 

「もしご両親が君の身元引受を引き上げるならば御園生が身元引受になろう。 君も留学しなさい。 ご両親から離れるにはそれが一番だ。 妨害する暇はなくなるだろう」 

 その言葉の通り久我家の経営する全ての企業は、御園生ホールディングスの報復に何年も苦しむ事になる。 



「旦那さま」 

 夕麿に夕食を届けに行った文月がそのまま戻って来た。 

「文月さん、夕麿さまのご様子は?」 

 高辻は久我家から喪失状態で戻って来た武に薬を飲ませ眠りに就かせたのだが… 夕麿が武を抱き締めたまま動こうとしなかったのだ。 薬も彼は拒否してしまいと言って度々、鎮静剤を打つわけにもいかず、そのまま様子見をしていたのだ。 文月によると武を抱いてベッドの上に座り続けていると言う。 武のショックの受け方が余りの状態だった為に、夕麿までショックを受けてしまっていたのだ。 

 セクシャルマイノリティへの偏見は、少なくとも夕麿は身に沁みて知っている。 現実にロサンゼルスで直面しているのだから。 そして武も世間的な知識としては持っていただろう。 だが夕麿の近親者や身近に仕える者に、そのような扱いをされる事には武は未経験だった。 ましてや未来への不安に揺れる精神状態である今、打撃は半端ではなかった筈だ。 このまま安定させられなかった場合、夕麿と引き離すのは不可能になる。 

 そして周も深く傷付いていた。 周と両親の亀裂は元々は久我夫妻の不仲によるものだった。 母浅子は夕麿の父陽麿の8歳上の姉である。 浅子と陽麿の間にはもう一人姉妹がいたが病で早世した。 陽麿は両親と浅子に過保護に育てられ、優柔不断の坊っちゃん育ちで成長した。 浅子は男勝りですぐ隣の久我家へ20歳前に嫁いだが、10年近く子供が出来なかった。 それ故に夫周哉の女性関係に長年苦しめられた。 やっとの事で周が生まれたものの、夫婦間の亀裂は修復不可能だった。 それでも清華に名を連ねる家柄故に離婚を良しとしなかった。 そこへ浅子が乳母を務めて育てた高辻が、周に性的な悪戯をしていた事実が判明し、夫婦間の亀裂はさらに深まった。 

 隣家の六条家で後妻の詠美が、夕麿を虐待し始めたのもこの頃だった。 周もまた別の意味で追い詰められた人間だった。 

 高辻に断ってそっと夕麿の様子を見に行く。 ドアはノックをしても返事がなかった。 そっと開けて中へ入る。 ベッドの上で夕麿は眠る武を抱き締めて座り涙を流していた。 

「夕麿…」 

 周の声に夕麿はゆっくりと顔を上げた。 

「周さん…また武を傷付けてしまいました…」 

「お前が悪いわけじゃない! 僕が…両親の言う事にもっと警戒すれば良かったんだ…こんな…こんな事になるなんて…」 

「武…武…許してください…」 

 ずっと武を抱き締めて夕麿は謝り続けているのだろうか… 

 周は本当に腹立たしかった。 夕麿を学院に閉じ込めて救う事も出来なかったおとなたちが、今頃になって夕麿の進退に干渉してくる。 武を一途に愛している心を踏みにじる。 一体、どこにそんな権利があるのだと叫びたくなる。 本当はあの場で両親を殴って武と夕麿に謝罪させたかった。 

 無神経で厚顔無恥な両親。 

 武の気持ちも人格も無視して、自分たちの都合だけ欲しがる。 彼らの魂胆は見え見えだ。 由衣子に夕麿の子を産ませ六条家の跡継ぎにして、六条家を自分たちの自由にしようとしているのだ。 十分な富を持ちながらまだ欲する欲深さ。 その醜さを周は吐き気がする程に激しく嫌悪していた。 浅子が由衣子を引き取って育てているのもそんな魂胆だったとは。 

 周は二人にどう詫びて償えば良いのかわからなかった。

 

 どこかで泣き声が聞こえる。 水底から聴いているように音が不安定に反響する。

 泣いているのは…誰? ああ…この声は…夕麿だ……

 また悲しませた。 夕麿は少しも悪くはないのに。 傷付いたのは夕麿の筈なのに。 泣かないで欲しい。 夕麿が望むだけ側にいるから。

 夕麿……夕麿……愛してるから……お前だけを……

 だから…… お前はお前の望み通りに生きれば良い……

 幸せそうに笑うお前の傍らにいるのが俺でなかったとしても、それがお前の望みなら良い……

 もし…… もしも…… 変わらずに俺を側にいさせてくれるなら、 約束したみたいに 生まれ変わっても 一緒にいよう。

 夕麿……夕麿… お前を愛してるから……
 
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