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8 婚約破棄
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真紅のドレスを身に纏い、急いでパーティーホールへと向かう。
今日は私の一八歳の誕生日である。
そのため、以前より大規模な催しとなる。
エリオットにドレスを選んでもらったところ、かなりの時間がかかってしまった。
一月なので、雪の色にするかどうか悩んでいたのだ。
ちなみに、シャーロッテのドレスは私がチョイスした。
パーティーホールの扉を開ける。
バン、と大きな音がした。
皆の視線が私へと集まってくる。
「お待たせ致しました。皆様」
優雅にお辞儀をし、ボーイから飲み物を受け取る。
この葡萄ジュース、美味しいわね。
ボーイにジュースを製造したメーカーを尋ねようとした時である。
アランがズンズンと歩いて来た。
なぜこんなにも間の悪い男なんだろうか。
腕を掴まれ、引っ張られる。
敢えて抵抗はしない。
「ちょっと、お辞めになって」などと叫んで哀れ感を演出する。
ちょうどホールのど真ん中でアランが止まった。
アランのそばにいたシャーロッテが目配せをしてくる。
婚約破棄宣言が、来る。
ごくりと息を飲んだ。
「今ここに宣言する!アリシア・アンリエッタ!君との婚約をただ今から破棄させてもらう!そして、横にいるシャーロッテと婚約させてもらう!!」
パーティーホールの真ん中で、馬鹿でかい声で婚約破棄を宣言するアラン。
しかもドヤ顔ときたもんだ。
筋金入りの馬鹿ね。
ホールの中心からざわめきが広がっていく。
アランがフン、と鼻を鳴らしこちらを見てくる。
今更縋ってきても知らない、というような目つきだ。
「私は、アラン王太子殿下の御心のままに。婚約破棄、お受けいたしますわ」
うやうやしく頭を下げる。
アランは、心底驚いたような顔でこちらを見た。
縋ってくるとでも思ったのか。
勘違いも甚だしい。
「ふ、ふん。後から後悔しても知らないからな。なあ、シャーロッテ」
その場にいた皆の視線がシャーロッテに注がれる。
彼女は満面の笑みを浮かべた。
そして、こう言った。
「気持ちの悪いことを言わないで。馬鹿野郎」
ホール全体が静まり返った。
「は、はあ?どういうことだ。シャーロッテ」
アランが前のめりになり、シャーロッテに掴み掛かる。
シャーロッテがその手を振り払う。
パン、と乾いた音がした。
「言葉通りの意味ですが。アラン様」
彼女が鋭い視線をアランに向ける。
シャーロッテのそんな表情を見たのが初めてでぞくりとした。
ホールにいた皆も固まっている。
「ふ、ふざけるなああああ!!!」
次の瞬間、アランはシャーロッテに殴りかかっていた。
パキン。
そんな音がホール全体に響き渡った。
アランは凍っていた。
醜い表情のまま。
「私が上級魔法を使えること、お忘れになったのですか?」
氷漬けになったアランにシャーロッテが冷ややかな笑みを向ける。
ホール全体の空気が凍りつく。
完全なる静寂。
「もうよい!」
しかし、凛とした声がその静寂を破った。
何人かの騎士に囲まれ、男が一人こちらへ寄って来た。
あれは……アドルフ国王陛下!?
想定外のことが起こり、当惑してしまう。
ホールの皆も困惑した表情で「なぜ、ここに国王陛下が……?」と囁きあっている。
今日は国王陛下と王妃に用事ができ、パーティーに参加できないと知らされていたのに。
シャーロッテは小さく首を振っている。
何も知らないようだ。
国王陛下はシャーロッテと私の前に立ち、こう言った。
「すまなかった!!」
「「へ?」」
頭を下げられる。
何が起こっているのか理解できない。
「うちの馬鹿息子が多大なる迷惑をかけてしまった」
騎士たちによって氷漬けのアランが担ぎ出される。
そして、陛下はホール全体に向き直り、こう言った。
「アランに構わず、この後もパーティーを楽しんでくれ」
ホールから出ていく陛下を見つめる。
格好いいわ、国王陛下。
アランの性格が捻じ曲がっているのは育て方の問題ではないようだ。
「あ、アリシア様あ……」
シャーロッテが膝から崩れ落ちる。
よっぽど緊張していたようだ。
「お嬢様、お役に立ちましたでしょうか」
先ほどの騎士の一人がホールの中に戻ってきた。
思わず、額に手を当てる。
「エリオット……。貴方ねえ、私に相談してくれてもよかったじゃない」
「サプライズ感を出したくて」
どうやら、先程の出来事はエリオットが仕組んだことのようだ。
エリオットも騎士だったのを忘れていた。
ホールにいたほとんどの人間は何が起こったのかまだ理解できていないかのように戸惑いの色を見せていた。
エリオットが飲み物を渡してくる。
「どうぞ、お嬢様方」
三人でグラスをぶつける。
カチン、と心地良い音がする。
「「「乾杯」」」
作戦の成功に祝福を。
パーティーはまだ始まったばかりだ。
今日は私の一八歳の誕生日である。
そのため、以前より大規模な催しとなる。
エリオットにドレスを選んでもらったところ、かなりの時間がかかってしまった。
一月なので、雪の色にするかどうか悩んでいたのだ。
ちなみに、シャーロッテのドレスは私がチョイスした。
パーティーホールの扉を開ける。
バン、と大きな音がした。
皆の視線が私へと集まってくる。
「お待たせ致しました。皆様」
優雅にお辞儀をし、ボーイから飲み物を受け取る。
この葡萄ジュース、美味しいわね。
ボーイにジュースを製造したメーカーを尋ねようとした時である。
アランがズンズンと歩いて来た。
なぜこんなにも間の悪い男なんだろうか。
腕を掴まれ、引っ張られる。
敢えて抵抗はしない。
「ちょっと、お辞めになって」などと叫んで哀れ感を演出する。
ちょうどホールのど真ん中でアランが止まった。
アランのそばにいたシャーロッテが目配せをしてくる。
婚約破棄宣言が、来る。
ごくりと息を飲んだ。
「今ここに宣言する!アリシア・アンリエッタ!君との婚約をただ今から破棄させてもらう!そして、横にいるシャーロッテと婚約させてもらう!!」
パーティーホールの真ん中で、馬鹿でかい声で婚約破棄を宣言するアラン。
しかもドヤ顔ときたもんだ。
筋金入りの馬鹿ね。
ホールの中心からざわめきが広がっていく。
アランがフン、と鼻を鳴らしこちらを見てくる。
今更縋ってきても知らない、というような目つきだ。
「私は、アラン王太子殿下の御心のままに。婚約破棄、お受けいたしますわ」
うやうやしく頭を下げる。
アランは、心底驚いたような顔でこちらを見た。
縋ってくるとでも思ったのか。
勘違いも甚だしい。
「ふ、ふん。後から後悔しても知らないからな。なあ、シャーロッテ」
その場にいた皆の視線がシャーロッテに注がれる。
彼女は満面の笑みを浮かべた。
そして、こう言った。
「気持ちの悪いことを言わないで。馬鹿野郎」
ホール全体が静まり返った。
「は、はあ?どういうことだ。シャーロッテ」
アランが前のめりになり、シャーロッテに掴み掛かる。
シャーロッテがその手を振り払う。
パン、と乾いた音がした。
「言葉通りの意味ですが。アラン様」
彼女が鋭い視線をアランに向ける。
シャーロッテのそんな表情を見たのが初めてでぞくりとした。
ホールにいた皆も固まっている。
「ふ、ふざけるなああああ!!!」
次の瞬間、アランはシャーロッテに殴りかかっていた。
パキン。
そんな音がホール全体に響き渡った。
アランは凍っていた。
醜い表情のまま。
「私が上級魔法を使えること、お忘れになったのですか?」
氷漬けになったアランにシャーロッテが冷ややかな笑みを向ける。
ホール全体の空気が凍りつく。
完全なる静寂。
「もうよい!」
しかし、凛とした声がその静寂を破った。
何人かの騎士に囲まれ、男が一人こちらへ寄って来た。
あれは……アドルフ国王陛下!?
想定外のことが起こり、当惑してしまう。
ホールの皆も困惑した表情で「なぜ、ここに国王陛下が……?」と囁きあっている。
今日は国王陛下と王妃に用事ができ、パーティーに参加できないと知らされていたのに。
シャーロッテは小さく首を振っている。
何も知らないようだ。
国王陛下はシャーロッテと私の前に立ち、こう言った。
「すまなかった!!」
「「へ?」」
頭を下げられる。
何が起こっているのか理解できない。
「うちの馬鹿息子が多大なる迷惑をかけてしまった」
騎士たちによって氷漬けのアランが担ぎ出される。
そして、陛下はホール全体に向き直り、こう言った。
「アランに構わず、この後もパーティーを楽しんでくれ」
ホールから出ていく陛下を見つめる。
格好いいわ、国王陛下。
アランの性格が捻じ曲がっているのは育て方の問題ではないようだ。
「あ、アリシア様あ……」
シャーロッテが膝から崩れ落ちる。
よっぽど緊張していたようだ。
「お嬢様、お役に立ちましたでしょうか」
先ほどの騎士の一人がホールの中に戻ってきた。
思わず、額に手を当てる。
「エリオット……。貴方ねえ、私に相談してくれてもよかったじゃない」
「サプライズ感を出したくて」
どうやら、先程の出来事はエリオットが仕組んだことのようだ。
エリオットも騎士だったのを忘れていた。
ホールにいたほとんどの人間は何が起こったのかまだ理解できていないかのように戸惑いの色を見せていた。
エリオットが飲み物を渡してくる。
「どうぞ、お嬢様方」
三人でグラスをぶつける。
カチン、と心地良い音がする。
「「「乾杯」」」
作戦の成功に祝福を。
パーティーはまだ始まったばかりだ。
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