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7 特別な朝食
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鳥のさえずりが聞こえてくる。
……朝?
「おはようございます、アリシア様」
どうやら、あのままベッドに顔を突っ伏した形で寝てしまったようだ。
シャーロッテもついさっき起きたようで髪が乱れている。
「……すごい寝癖ね。鳥の巣みたい」
「ふふ、アリシア様も相当なものですよ」
手鏡を差し出される。
私の髪はさながらライオンのたてがみのようだ。
ふっと口もとが緩んだ。
次の瞬間、私たちは笑っていた。
「アリシア様、寝るとそんな髪型になるんですね。紙に描いて残しておきたいです!」
帳面を取り出す彼女を必死で止める。
休んだことで落ち着いたようだ。
声をあげて笑っているシャーロッテを見て少し安心する。
ノック音が聞こえた。
「お嬢様方、朝食のお時間です」
ドアを開けると、サービスワゴンを引いたエリオットが立っていた。
「これって……」
貴族は基本、ダイニングルームやダイニングホールで食事をとる。
自室で食事をとることは、病気の時以外、滅多にない。
すなわち、自室で食事をとることは特別感があり、強い憧れを持つ行為である。
「でも、いいのかしら。お母様とお父様は……?」
心配そうな私にエリオットはちっちっちっ、と指を振る。
そして人差し指を口にあて、片目を瞑る。
「旦那様も奥様も既に仕事に行かれました。今日は、特別ですよ」
シャーロッテと私は顔を見合わせた。
ベッドの上に座り、スコーンを取り分ける。
「エリオットさんも如何ですか?」
「いえ、私は……」
首を振るエリオットの口にスコーンを詰め込む。
「客人がこう言っているのよ。お言葉に甘えなさい」
エリオットは驚いたように目を見開き、肩を振るわせながらこう言った。
「で、では、お言葉に甘えさせていただいて」
「何がおかしいの?」
「いえ、何でも」
「だから何よ!」
私とエリオットのやり取りをシャーロッテが笑う。
釣られて、私たちも笑い声を上げた。
屋敷中に笑い声が響き渡った。
それから、私とシャーロッテは婚約破棄作戦を着々と進めていった。
シャーロッテは順調にアランとの仲を深めていき、私も順調(?)にアランとの関係を悪くしていった。
関係性をより悪くした引き金はお茶会の後、彼をねじ伏せたことだろうか。
いい仕事をしたわ。
あのストーカー事件の後、シャーロッテはより、私にベタベタになった。
アランに怪しまれるから、貴族院ではあまり接点を作らないようにと言ったら、ロッカーに毎日手作りのお菓子が詰められるようになった。
あのストーカーもシャーロッテも、やり方は違えど似たようなものなのかもしれない。
エリオットにこの作戦を伝えると「知ってましたよ。とっくの昔から」と返された。
どの時点で気づいたんだろうか。
末恐ろしい男だ。
シャーロッテにアランとの近況を尋ねてみると最近は彼が「シャーロッテと結婚したい」と言い出したようだ。
それに対して彼女は、「私も、アラン様と結婚できたらな」などと期待をもたせる発言を連発している。
彼女曰く、「結婚できたら」の続きは述べていないとのこと。
罪深い女ね。
私はというと、婚約破棄を円滑に受けるため、お母様とお父様に話をした。
「お母様、お父様。私、アランと婚約破棄をしたいの。浮気されていて私、悲しいわ」
涙ぐんでみせる。
基本的に、王族相手に婚約破棄を要求するなんてこと土台無理な話だ。
勿論、両親は私の主張に猛反対。
しかし、私はそれを狙っていた。
今、両親の頭の中には私たちから、婚約破棄は要求できないという考えが刷り込まれた。
要するに、突然王族から婚約破棄を言い渡された時、「アリシアも言っていたし受けてもいいかな」という考えが生じる。
なんだかんだいって、自分の子供に甘い両親だ。
こんな刷り込みをわざわざしなくても良かったような気もするが、念には念を。
明日は私の一八歳の誕生パーティーが行われる。
婚約破棄を受けるには絶好のシュチュエーションだ。
さあ、婚約破棄を受ける準備は整った。
……朝?
「おはようございます、アリシア様」
どうやら、あのままベッドに顔を突っ伏した形で寝てしまったようだ。
シャーロッテもついさっき起きたようで髪が乱れている。
「……すごい寝癖ね。鳥の巣みたい」
「ふふ、アリシア様も相当なものですよ」
手鏡を差し出される。
私の髪はさながらライオンのたてがみのようだ。
ふっと口もとが緩んだ。
次の瞬間、私たちは笑っていた。
「アリシア様、寝るとそんな髪型になるんですね。紙に描いて残しておきたいです!」
帳面を取り出す彼女を必死で止める。
休んだことで落ち着いたようだ。
声をあげて笑っているシャーロッテを見て少し安心する。
ノック音が聞こえた。
「お嬢様方、朝食のお時間です」
ドアを開けると、サービスワゴンを引いたエリオットが立っていた。
「これって……」
貴族は基本、ダイニングルームやダイニングホールで食事をとる。
自室で食事をとることは、病気の時以外、滅多にない。
すなわち、自室で食事をとることは特別感があり、強い憧れを持つ行為である。
「でも、いいのかしら。お母様とお父様は……?」
心配そうな私にエリオットはちっちっちっ、と指を振る。
そして人差し指を口にあて、片目を瞑る。
「旦那様も奥様も既に仕事に行かれました。今日は、特別ですよ」
シャーロッテと私は顔を見合わせた。
ベッドの上に座り、スコーンを取り分ける。
「エリオットさんも如何ですか?」
「いえ、私は……」
首を振るエリオットの口にスコーンを詰め込む。
「客人がこう言っているのよ。お言葉に甘えなさい」
エリオットは驚いたように目を見開き、肩を振るわせながらこう言った。
「で、では、お言葉に甘えさせていただいて」
「何がおかしいの?」
「いえ、何でも」
「だから何よ!」
私とエリオットのやり取りをシャーロッテが笑う。
釣られて、私たちも笑い声を上げた。
屋敷中に笑い声が響き渡った。
それから、私とシャーロッテは婚約破棄作戦を着々と進めていった。
シャーロッテは順調にアランとの仲を深めていき、私も順調(?)にアランとの関係を悪くしていった。
関係性をより悪くした引き金はお茶会の後、彼をねじ伏せたことだろうか。
いい仕事をしたわ。
あのストーカー事件の後、シャーロッテはより、私にベタベタになった。
アランに怪しまれるから、貴族院ではあまり接点を作らないようにと言ったら、ロッカーに毎日手作りのお菓子が詰められるようになった。
あのストーカーもシャーロッテも、やり方は違えど似たようなものなのかもしれない。
エリオットにこの作戦を伝えると「知ってましたよ。とっくの昔から」と返された。
どの時点で気づいたんだろうか。
末恐ろしい男だ。
シャーロッテにアランとの近況を尋ねてみると最近は彼が「シャーロッテと結婚したい」と言い出したようだ。
それに対して彼女は、「私も、アラン様と結婚できたらな」などと期待をもたせる発言を連発している。
彼女曰く、「結婚できたら」の続きは述べていないとのこと。
罪深い女ね。
私はというと、婚約破棄を円滑に受けるため、お母様とお父様に話をした。
「お母様、お父様。私、アランと婚約破棄をしたいの。浮気されていて私、悲しいわ」
涙ぐんでみせる。
基本的に、王族相手に婚約破棄を要求するなんてこと土台無理な話だ。
勿論、両親は私の主張に猛反対。
しかし、私はそれを狙っていた。
今、両親の頭の中には私たちから、婚約破棄は要求できないという考えが刷り込まれた。
要するに、突然王族から婚約破棄を言い渡された時、「アリシアも言っていたし受けてもいいかな」という考えが生じる。
なんだかんだいって、自分の子供に甘い両親だ。
こんな刷り込みをわざわざしなくても良かったような気もするが、念には念を。
明日は私の一八歳の誕生パーティーが行われる。
婚約破棄を受けるには絶好のシュチュエーションだ。
さあ、婚約破棄を受ける準備は整った。
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