【完結】悪役令嬢ですが、ヒロインに愛されてます。

梨丸

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9 不穏な影

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 アラン……いえ、は婚約破棄宣言の後、王宮魔術師の解術によって氷漬けから解放され、二ヶ月の謹慎処分を下された。
 自業自得ね。

 椅子に座り、大きく伸びをする。
 私は無事(?)に婚約破棄ができた。
 婚約破棄の旨を伝えるとお母様もお父様も困り顔をしていたが、王族からの申し出ということで承認してくれた。

 明日はシャーロッテと買い物に行く約束をしている。
 シャーロッテと会ってから、アラン王子との婚約破棄作戦のため、遊びに行くことが滅多になかった。
 
 外を見ると、闇が深まっている。
 そろそろ寝なきゃね。
 ランプを消し、眠りについた。



 待ち合わせ場所の大鐘広場に着くと、シャーロッテが既に待っていた。

 「ごめん遊ばせ」
 「ちょっと、アリシア様。貴族ってバレないようにしなきゃですよ。口調も直さなきゃ」

 小声で注意される。
 ここ、大鐘広場はいわゆる貴族の街ではない。
 私はお忍びで来ているので、ドレスではなく焦茶のブラウスにスカート。
 シャーロッテ曰くのびのびと遊ぶために、民衆に紛れないといけないらしい。

 「待たせてごめん、なさい」
 「その意気です!」

 言い直すとシャーロッテは嬉しそうに笑った。

 「どうせなら、私のことアリシアって呼んでもいいわ」
 「え、いいんですか!?アリシア!!」

 聞き返した癖にすぐ呼び捨てを使っている。
 
 「お二人方、とても目立っていますよ」
 「あら、エリオット」
 「エリオットさん!」

 エリオットは荷物運び要員として私が呼んだ。
 シャーロッテは二人きりで行きたかったと頬を膨らませていたが。


 「ショッピング、スタートですね!」

 手始めに近くにあった洋装店に入る。

 シャーロッテは真紅の皮でできたコートを買っていた。
 太陽の光を集めたような金髪にはなんでも似合う。
 そう褒めると、彼女は顔を真っ赤にした。
 エリオットが横で「それは主に男性が使う口説き文句ですよ」と解説をしてくれた。
 口説いたつもりはないのだけれど。
 エリオットも何か気に入ったものがあったようで、店の人と何か話している。

 楽しい。

 こんな気持ちになったのはいつぶりだろうか。
 少なくとも、今日気兼ねなく買い物をできているのはシャーロッテとエリオットのおかげだ。
 
 二人の様子を眺め、そのままディスプレイウインドウに視線を移す。
 どんな物が陳列されてるのかしら。
 そんな淡い考えだった。
 しかし、私はそこでを目にした。


 それは、の姿だった。
 二人は大鐘広場で何かを話している。

 汗が顔をつたい、落ちる。
 なんで、なんで居るのよ。
 フラハティ男爵令息はシャーロッテへのストーカー行為で捕まったし、アラン王子も謹慎処分を下されたはずだった。
 
 エリオットとシャーロッテは買い物を続けている。
 二人とも、アラン王子たちに気づいていないようだ。
 アラン王子とフラハティ男爵令息は歩き始めている。

 こっそりと店外へと出た。
 ごめんなさい、シャーロッテ、エリオット。

 気づかれないようにこっそり跡をつける。
 二人は何かを話しながら、路地裏へと入っていった。
 急いでそれについていく。
 
 路地裏に入ると、いたのはフラハティ男爵令息ただ一人だった。
 しまった。
 反射的に後ろを振り向く。
 後ろにはアランが鉄パイプを持ってーーーー。

 ボカッ。

 意識が遠くなる。

 

 若草色の服を手に取る。
 この服、アリシア様に似合いそうだ。
 アリシア様に薦めるため、振り向く。


「この服、アリシアに似合いそうですよ!あれ、アリシア、様……?」




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