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10 拉致
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目が覚めると、そこは殺風景な白い部屋だった。
手足が椅子に括り付けられ、固定されている。
視界は奪われていなくて良かった。
ほっとし、周りを見渡す。
どこを見ても白い壁、壁、壁。
無機質な風景が広がっている。
手足を動かしてみるとかろうじて指先が動いた。
このまま炎術を使えば……いける。
と私が考えた時、乱雑に扉が開かれた。
「お嬢様が、いない……?」
エリオットさんにアリシア様のことを伝えると、唖然とした。
アリシア様の居場所は知らないようだ。
どうしよう。
汗が流れ落ちる。
エリオットさんは魔法石を店の床に置き、そのまま魔法陣を描き始めた。
店主さんが止めに入ったけど、そんなのお構いなしだ。
「荒神ガイアよ。アリシアの所在地を示せ」
魔法陣が輝き出す。
エリオットさんが一呼吸置き、こう言った。
「アリシアの居場所がわかった」
「──というわけで、アリシア、俺と婚約を結び直そう」
延々とアラン王子の話を聞かされ続けている。
もううんざりだ。
いい加減黙ってくれないかしら。
さきほど、ドアを蹴り飛ばして入ってきたのはアラン王子だった。
髪の毛を燃やしてチリジリにしようと思ったが、魔法が使えないようにしている結界が張られているようだ。
残念ながら燃やすことは出来なかった。
手足をきつく固定されているので、なす術なく話を聞くはめになった私は、アラン王子が復縁を迫ってくるのを聞かされ続けている。
エリオットの言い分を省略すると、私が居なくなったことでアラン王子の補佐をしてくれる人が居なくなったのでとても困っている。
復縁してやってもいいぞ☆というなんとも自己中心的な主張にため息が止まらない。
「なあ、アリシア。復縁してやるよ!」
「そのような馴れ馴れしい呼び方をしないでいただきたいわ。アラン王太子殿下」
すかさず切り込む。
もう我慢の限界だ。
ぶん殴って黙らせてやりたい。
「はあ、今がどういう状況なのかわかっていないようだなあ」
アレン王子が心底呆れたように言った。
「お前は今、俺の手のひらの上ってことだ」
「だから?」
全く動じない私にアレン王子が痺れを切らしたようにこう叫んだ・
「なんだその淡白な態度は!だから俺に婚約破棄されたんだ!!この先お前のことを愛してくれる人なんて誰もいないだろうな!!」
悔しいが、同意せざるを得ない。
表情が全く変わらない、常に冷酷。
こんな女なんか愛してくれる人はどこにもいないだろうな。
「確かにそうね」
「はん!だから言ったろう。俺と復縁すれば……」
「ちょっと待ったあああ!」
バンッと大きな音が部屋中に響いた。
シャーロッテが息を切らし、エリオットは顔色ひとつ変えずに部屋に入ってきた。
「しゃ、シャーロッテと誰だお前は!」
シャーロッテを見る目に焦りが宿り、エリオットを見た時にはその目に憎しみが宿った。
「シャーロッテ!どういうつもりだ!その男と恋仲にあるから俺の誘いを無碍にしたのか!?」
まだシャーロッテに未練があるのか。
私に復縁を迫っておきながら、未練がましい男ね。
「ちょ、勝手な解釈しないで下さい。私は……」
「私はシャーロッテ様と恋仲にはありません」
シャーロッテが訂正しようとすると、エリオットがキッパリと断言した。
私と二人きりの時以外では、あまり自分の意見を言わないのに。
少し驚いた。
「と、トニーはどうした!見張りをさせていたはずだ!」
エリオットは「ああ」と嘲笑を浮かべた。
「これのことですか?」
エリオットが首ねっこを掴み、アラン王子の前に放りなげた。
アラン王子は呆気に取られている。
先ほどまで自分が優勢に立っていると思っていたからだろう。
「お嬢様、帰りましょう」
手を差し出される。
手足を拘束されているので身動きが取れないのだけれど、ふざけているのかしら。
「お、大人しく返すとでも……」
アラン王子が言いかけた言葉を飲み込む。
瞳が大きく揺れた。
彼の視線の先には、扉があり、ユーベルク騎士団長がいた。
「敬愛なるアラン王太子殿下。お久しぶりです」
ユーベルクとは婚約してから何度か会ったことがある。
若いうちに騎士団長の地位を築いた実力者で、アラン王子の幼馴染だそうだ。
彼はそのまま、アラン王子の方へゆっくり歩いていった。
そしてアラン王子の目の前でぴたりと止まった。
「失礼致します」
がちゃん。
アラン王子の腕に腕輪のようなものがはめられた。
手足が椅子に括り付けられ、固定されている。
視界は奪われていなくて良かった。
ほっとし、周りを見渡す。
どこを見ても白い壁、壁、壁。
無機質な風景が広がっている。
手足を動かしてみるとかろうじて指先が動いた。
このまま炎術を使えば……いける。
と私が考えた時、乱雑に扉が開かれた。
「お嬢様が、いない……?」
エリオットさんにアリシア様のことを伝えると、唖然とした。
アリシア様の居場所は知らないようだ。
どうしよう。
汗が流れ落ちる。
エリオットさんは魔法石を店の床に置き、そのまま魔法陣を描き始めた。
店主さんが止めに入ったけど、そんなのお構いなしだ。
「荒神ガイアよ。アリシアの所在地を示せ」
魔法陣が輝き出す。
エリオットさんが一呼吸置き、こう言った。
「アリシアの居場所がわかった」
「──というわけで、アリシア、俺と婚約を結び直そう」
延々とアラン王子の話を聞かされ続けている。
もううんざりだ。
いい加減黙ってくれないかしら。
さきほど、ドアを蹴り飛ばして入ってきたのはアラン王子だった。
髪の毛を燃やしてチリジリにしようと思ったが、魔法が使えないようにしている結界が張られているようだ。
残念ながら燃やすことは出来なかった。
手足をきつく固定されているので、なす術なく話を聞くはめになった私は、アラン王子が復縁を迫ってくるのを聞かされ続けている。
エリオットの言い分を省略すると、私が居なくなったことでアラン王子の補佐をしてくれる人が居なくなったのでとても困っている。
復縁してやってもいいぞ☆というなんとも自己中心的な主張にため息が止まらない。
「なあ、アリシア。復縁してやるよ!」
「そのような馴れ馴れしい呼び方をしないでいただきたいわ。アラン王太子殿下」
すかさず切り込む。
もう我慢の限界だ。
ぶん殴って黙らせてやりたい。
「はあ、今がどういう状況なのかわかっていないようだなあ」
アレン王子が心底呆れたように言った。
「お前は今、俺の手のひらの上ってことだ」
「だから?」
全く動じない私にアレン王子が痺れを切らしたようにこう叫んだ・
「なんだその淡白な態度は!だから俺に婚約破棄されたんだ!!この先お前のことを愛してくれる人なんて誰もいないだろうな!!」
悔しいが、同意せざるを得ない。
表情が全く変わらない、常に冷酷。
こんな女なんか愛してくれる人はどこにもいないだろうな。
「確かにそうね」
「はん!だから言ったろう。俺と復縁すれば……」
「ちょっと待ったあああ!」
バンッと大きな音が部屋中に響いた。
シャーロッテが息を切らし、エリオットは顔色ひとつ変えずに部屋に入ってきた。
「しゃ、シャーロッテと誰だお前は!」
シャーロッテを見る目に焦りが宿り、エリオットを見た時にはその目に憎しみが宿った。
「シャーロッテ!どういうつもりだ!その男と恋仲にあるから俺の誘いを無碍にしたのか!?」
まだシャーロッテに未練があるのか。
私に復縁を迫っておきながら、未練がましい男ね。
「ちょ、勝手な解釈しないで下さい。私は……」
「私はシャーロッテ様と恋仲にはありません」
シャーロッテが訂正しようとすると、エリオットがキッパリと断言した。
私と二人きりの時以外では、あまり自分の意見を言わないのに。
少し驚いた。
「と、トニーはどうした!見張りをさせていたはずだ!」
エリオットは「ああ」と嘲笑を浮かべた。
「これのことですか?」
エリオットが首ねっこを掴み、アラン王子の前に放りなげた。
アラン王子は呆気に取られている。
先ほどまで自分が優勢に立っていると思っていたからだろう。
「お嬢様、帰りましょう」
手を差し出される。
手足を拘束されているので身動きが取れないのだけれど、ふざけているのかしら。
「お、大人しく返すとでも……」
アラン王子が言いかけた言葉を飲み込む。
瞳が大きく揺れた。
彼の視線の先には、扉があり、ユーベルク騎士団長がいた。
「敬愛なるアラン王太子殿下。お久しぶりです」
ユーベルクとは婚約してから何度か会ったことがある。
若いうちに騎士団長の地位を築いた実力者で、アラン王子の幼馴染だそうだ。
彼はそのまま、アラン王子の方へゆっくり歩いていった。
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「失礼致します」
がちゃん。
アラン王子の腕に腕輪のようなものがはめられた。
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