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12 お兄様
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──やはりこうなるか。
私を挟んで、シャーロッテとエヴァン兄様がにこにこしながら座っている。
エヴァン兄様は医学の勉強で隣国に行っており、今日帰ってくると連絡が来たので、シャーロッテと会わせないようにしたかったのに。
シャーロッテと兄様が私のことで暴走するのは目に見えている。
エリオットが目で訴えてくる。
「(エヴァン様を止められなくて、すみません)」
「(しょうがないわ)」
目で会話している私たちに気づいたのか、兄様が口を開いた。
「目で会話しないでさ、口で会話しようよ。ね!リア、エリオット」
口は笑っているが目は笑っていない。
仲間外れにするなということか。
黙って二人で頷く。
「アリシアのことリアって呼んでるんですね。特別感があって羨ましいです!」
「え、そうだよね。君とは気が合いそうだ」
シャーロッテと兄様は仲良く談笑している。
この二人のコンビは危ない。
直感的にそう悟った。
「あ、でも、ダメだよ。リアって呼んじゃ。リアって呼んでいいのは僕だけなんだ」
兄様がシャーロッテの口に人差し指を当てる。
無駄にスキンシップが多いので見ているこちらがハラハラしてくる。
「あ。それならアリスなんてどうです?」
「いいね!それならいいよ」
「絶対にやめて頂戴」
このまま二人で暴走されると何が起こるのかわからない。
どう対処すべきか考えていると、兄様の声色がいきなり変わった。
「そういえば、アラン元王太子殿下と婚約破棄したんだってね」
「そ、それは……」
言い淀んでしまう。
兄様は幼少期から、私がアランと婚約することに難色を示していたと聞かされている。
兄様の反対を聞かず、婚約した私に怒っているんだろうか。
上目遣いで様子を窺う。
「それは良かった!日頃からあの人とは気が合わないと思っていたんだ」
兄様は満面の笑みを浮かべていた。
良かった。
胸を撫で下ろす。
しかし、その後その安心が無駄になることになる。
「でも、どうして婚約破棄した上に王位を剥奪されたんだ?」
兄様の無邪気な質問にその場が凍る。
私は、兄様の耳に婚約破棄と王位剥奪の真相が届かないように色々手回しをしていた。
超絶シスコンの彼は妹の私が傷つけられたとなると、正気を失うだろう。
そうなるとアランを殺しかねない。
シャーロッテがちらちらとこちらを見てくる。
果たして本当の理由を言ってもいいのだろうか。
「実はですね……」
兄様の出方を窺っている時、口火を切ったのはエリオットだった。
それから浮気の件、悪役令嬢の噂の件、拉致の件などアランの悪事がどんどん暴かれてゆく。
それに伴って兄様の顔がどんどん能面のようになっていく。
兄様は昔から強い怒りや不快感を感じると顔の筋肉が硬直する。
この様子から見るに、かなりキレている。
「ちょ、エリオット……」
「これでお話はおしまいです」
私が止めに入った頃にはエリオットの話は終わっていた。
狼狽えていると兄様は恐ろしいほど整った笑顔を見せてこう言った。
「よし、殺りにいくか」
立ちあがろうとする兄様をシャーロッテと一緒に必死で止める。
「一旦落ち着きましょう!!」
「そうですわ、兄様」
エリオットは知らんふりをしている。
「ちょっと!エリオットも止めなさいよ!こうなったのは貴方のせいでもあるんだから!!」
私の訴えに、エリオットは答えなかった。
──疲れた。
自室で椅子にもたれかかる。
シャーロッテと兄様はいまだに応接間で話し込んでいる。
結局、兄様には私からの頬へのキスで勘弁してもらったけれど、エリオットは最後まで私たちの手助けをしてくれなかった。
こちらを真顔で見ていただけだ。
兄様を怒らせた原因は彼のせいでもあるのに、本当に何なのかしら。
少し苛立ちを覚え、呼び鈴を鳴らす。
「エリオットにどういうつもりか訊かないと」
私を挟んで、シャーロッテとエヴァン兄様がにこにこしながら座っている。
エヴァン兄様は医学の勉強で隣国に行っており、今日帰ってくると連絡が来たので、シャーロッテと会わせないようにしたかったのに。
シャーロッテと兄様が私のことで暴走するのは目に見えている。
エリオットが目で訴えてくる。
「(エヴァン様を止められなくて、すみません)」
「(しょうがないわ)」
目で会話している私たちに気づいたのか、兄様が口を開いた。
「目で会話しないでさ、口で会話しようよ。ね!リア、エリオット」
口は笑っているが目は笑っていない。
仲間外れにするなということか。
黙って二人で頷く。
「アリシアのことリアって呼んでるんですね。特別感があって羨ましいです!」
「え、そうだよね。君とは気が合いそうだ」
シャーロッテと兄様は仲良く談笑している。
この二人のコンビは危ない。
直感的にそう悟った。
「あ、でも、ダメだよ。リアって呼んじゃ。リアって呼んでいいのは僕だけなんだ」
兄様がシャーロッテの口に人差し指を当てる。
無駄にスキンシップが多いので見ているこちらがハラハラしてくる。
「あ。それならアリスなんてどうです?」
「いいね!それならいいよ」
「絶対にやめて頂戴」
このまま二人で暴走されると何が起こるのかわからない。
どう対処すべきか考えていると、兄様の声色がいきなり変わった。
「そういえば、アラン元王太子殿下と婚約破棄したんだってね」
「そ、それは……」
言い淀んでしまう。
兄様は幼少期から、私がアランと婚約することに難色を示していたと聞かされている。
兄様の反対を聞かず、婚約した私に怒っているんだろうか。
上目遣いで様子を窺う。
「それは良かった!日頃からあの人とは気が合わないと思っていたんだ」
兄様は満面の笑みを浮かべていた。
良かった。
胸を撫で下ろす。
しかし、その後その安心が無駄になることになる。
「でも、どうして婚約破棄した上に王位を剥奪されたんだ?」
兄様の無邪気な質問にその場が凍る。
私は、兄様の耳に婚約破棄と王位剥奪の真相が届かないように色々手回しをしていた。
超絶シスコンの彼は妹の私が傷つけられたとなると、正気を失うだろう。
そうなるとアランを殺しかねない。
シャーロッテがちらちらとこちらを見てくる。
果たして本当の理由を言ってもいいのだろうか。
「実はですね……」
兄様の出方を窺っている時、口火を切ったのはエリオットだった。
それから浮気の件、悪役令嬢の噂の件、拉致の件などアランの悪事がどんどん暴かれてゆく。
それに伴って兄様の顔がどんどん能面のようになっていく。
兄様は昔から強い怒りや不快感を感じると顔の筋肉が硬直する。
この様子から見るに、かなりキレている。
「ちょ、エリオット……」
「これでお話はおしまいです」
私が止めに入った頃にはエリオットの話は終わっていた。
狼狽えていると兄様は恐ろしいほど整った笑顔を見せてこう言った。
「よし、殺りにいくか」
立ちあがろうとする兄様をシャーロッテと一緒に必死で止める。
「一旦落ち着きましょう!!」
「そうですわ、兄様」
エリオットは知らんふりをしている。
「ちょっと!エリオットも止めなさいよ!こうなったのは貴方のせいでもあるんだから!!」
私の訴えに、エリオットは答えなかった。
──疲れた。
自室で椅子にもたれかかる。
シャーロッテと兄様はいまだに応接間で話し込んでいる。
結局、兄様には私からの頬へのキスで勘弁してもらったけれど、エリオットは最後まで私たちの手助けをしてくれなかった。
こちらを真顔で見ていただけだ。
兄様を怒らせた原因は彼のせいでもあるのに、本当に何なのかしら。
少し苛立ちを覚え、呼び鈴を鳴らす。
「エリオットにどういうつもりか訊かないと」
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