原初のスライム〜初めての生命体になって世界を創造しよう〜

雲霓藍梨@うんげいあいり

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楽しい創造

遺伝子

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 ぱちゅん。

 楽しくなって、休憩しながらも少しずつスライム仲間を増やしていたある時。
 少し遠くまで移動していたスライムとの感覚共有が、突然、途切れた。
 最期に感じたのは、吸収しようとした以上に水を吸い過ぎて、身体が弾ける感覚だった。

(そんな……どうして?)

 あいつはそこにあった水を、ただ飲もうとしただけだ。なにか予想もしなかった物がそこにはあるのだろうかと、恐る恐る例の場所へと向かう。

 着いた先にあったのは、砂浜と穏やかな波が打ち寄せる海だけだ。
 いくらスライムの動きが鈍いからといって、波にさらわれる程では無い。


 ——ゆっくりと波に触れる。


 ぎゅるり。

(っ?!)

 海水を吸おうともしていないのに、身体の中に水が入ってくる感覚がして、慌てて触手のように細く伸ばした身体の一部を引っ込めた。

(………もしかして、浸透圧か?)

 スライムは動いた時の音からも分かる通り、ほとんど水分で出来ている。ならば、海水との塩分濃度差で水が体内に流入してきてもおかしくないのではないか?
 そう思い至って、俺は頭(は無いけど)を悩ませた。

(うーん、このままじゃ海に出れないなぁ…)

 地球の生命の誕生は、海からだったという。
 海は浮力があるから、身体を大きくする事も地上より楽にできると思っていたのに。

(これじゃあ“進化”も難しいぞ…?)

 スライムは単細胞生物。だから、仲間を増やしたら合体して、多細胞生物になってみようと思っていた所だった。
 だから海に入りたい。——でも入れない。

 まずはスライムとしての進化が必要だ。

 俺はようやくその事を自覚して、“進化の方法”を探る事にした。




 まずは耐性が着くかどうか。
 何匹かのスライムに、何度も海水に触れては離れる事を繰り返させて、経過を観察する。

 次に身体のコーティング化。
 同じく何匹かのスライムに身体のエネルギーを体表に集め、身体が硬質化するかどうかを試してみる。膜ができれば、外部からの侵入を防げるかも知れない。

 最後に、遺伝子情報の書き換えだ。
 これは俺がしてみる事とする。草を取り込んで、自分にその遺伝子情報がインプットされた事を確認したので、自分自身の遺伝子も知覚できるのでは?と考えた事による。
 もし自分の構造を知り、変えられるのなら、今後何にでもなれるという事だ。


——夢が、広がる。




 まず、他のスライムにさせる事についてはそれぞれに指示を出して、俺は自分の遺伝子情報の可視化を試みる。
 “異物”として取り込んだ草を知覚するのはそれなりに楽だった。だが、自分を知るのは予想以上に難しい。
 俺は全身にエネルギーを流動させて、身体の隅々まで意識を巡らせた。

 血管がある訳でも無いこの身体だが、何かの流れの通り道のような物を感じる。
 リンパ管?——いや、それよりももっと、原始的で、本質的な“何か”。
 スッとある概念が意識に浮かんだ。

 それは、“魔力”だった。

 ここは異世界。それなら存在する物も、原理も、地球とは違うだろう。
 思考を切り替え、意識して、自分を満たすエネルギー自体にフォーカスする。
 すると——


(……見えた)


 身体の内側で、構成する情報が立体的に浮かび上がってくる。

 まるで絡み合う光の糸のように。
 無数の点と線が繋がり合い、緻密な構造を作り出していた。
 それは肉体の設計図。
 俺という存在を成り立たせている、根源のコード。

 自分の“正体”が、初めて目に見える形でそこにあった。
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