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脱獄しました2
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レイナ・ヴェネディクトは、この世界の貴族の娘だった。
日本のオタク女子である私のフィルターを通して言うなら、今の彼女は、いわゆる悪役令嬢モノで婚約破棄されて断罪された直後の公爵令嬢だ。
彼女はつい先程まで、この国の第一王子の婚約者だった。
それを、通っていた学園の卒業パーティーで断罪されて婚約破棄された。
で、その王子様は大好きな男爵家の庶子の娘と結ばれて、私は牢屋で処刑を待っている。
「滅茶苦茶な話よね……」
恋愛関係のトラブルで地下牢行き、弁護士もつかないって、現代日本人からしたら考えられない。
ただ、私が牢に入れられたのは、王子の好きな子を苛めたからというより、父の不正が発覚したせいかもしれない。
王子様は大好きなヒロインとともに、うちの公爵家の不正を調べて、国王に報告し、そのせいで私との婚約破棄が通ってしまったのだ。
「だから、父が捕まるのはどうしようもないとして、私まで連座で牢に入れられるっていうのは、前近代的というか、どうかと思う」
けれど、こっちの世界は前世みたいな法治国家じゃなく、強い者の身勝手が、どこまでも通ってしまう。
ヴェネディクト家が不正した貴族なのか、政争に負けて没落した貴族なのかも判断しかねるけど、とにかくこうなったら、晒し者で一族公開処刑されて、庶民のうっ憤を晴らすイベントに使われる。そういう野蛮な世の中だ。
「剣と魔法の世界だもんね。ほんと、“ステータスオープン”とか言ったらステータスが出てもおかしくないくらいに」
*******
レイナ・ヴェネディクト
17歳・女
ジョブ:魔導士
LV:21
HP:4321
MP:5678
(以下略)
*******
……本当に出たわ。
「ナニコレ。え、え??」
ステータスに近いものはこの世界に存在した。教会にある巨大水晶で鑑定すると、大まかな適性が分かり、それでジョブを選べるのだ。
他にも、犯罪者を探すための水晶玉なんてものもあったはず。
ただ、今見えているデータみたいに数値化された画面は、どこにも無いものはずだ。鑑定には魔道具の水晶玉が必要で、“ステータスオープン”などという呪文を、レイナは聞いたことがなかった。
「……なんだけど、“私”、コレと似たものを見たことあるなぁ」
そう、さっき思い出したところの、
「日本の私、“鈴木麗奈”がやっていたオンラインゲームのステータス画面そっくり!」
《キーワード・“鈴木麗奈”を確認しました。ロックを解除します。》
「へ……?」
*******
スズキ・レナ
17歳・女
ジョブ:神聖術士
LV:50(55)
HP:22000
MP:27000
(以下略)
*******
頭の中で、シャキーンって音がして、目の前でステータス画面が入れ替わった。
「何これ。え、えぇ!?」
服が変わっている。さっきまで着ていたドレスじゃない。
これ、ゲームで着ていた白のローブだ!
「どういうこと!? 私、麗奈に戻った? “レイナ・ヴェネディクト”は消えたってこと?」
呟くと、またシャキーンという音が聞こえた。
*******
レイナ・ヴェネディクト
17歳・女
ジョブ:魔導士
LV:21
HP:1234
MP:5678
(以下略)
*******
「…………」
「……“鈴木麗奈”」
シャキーン
「“レイナ・ヴェネディクト”」
シャキーン
「“鈴木……」
なるほど。名前がキーワードで、切り替えが可能ってことか。
すごい早着替えができてちょっと面白いな。
日本のオタク女子である私のフィルターを通して言うなら、今の彼女は、いわゆる悪役令嬢モノで婚約破棄されて断罪された直後の公爵令嬢だ。
彼女はつい先程まで、この国の第一王子の婚約者だった。
それを、通っていた学園の卒業パーティーで断罪されて婚約破棄された。
で、その王子様は大好きな男爵家の庶子の娘と結ばれて、私は牢屋で処刑を待っている。
「滅茶苦茶な話よね……」
恋愛関係のトラブルで地下牢行き、弁護士もつかないって、現代日本人からしたら考えられない。
ただ、私が牢に入れられたのは、王子の好きな子を苛めたからというより、父の不正が発覚したせいかもしれない。
王子様は大好きなヒロインとともに、うちの公爵家の不正を調べて、国王に報告し、そのせいで私との婚約破棄が通ってしまったのだ。
「だから、父が捕まるのはどうしようもないとして、私まで連座で牢に入れられるっていうのは、前近代的というか、どうかと思う」
けれど、こっちの世界は前世みたいな法治国家じゃなく、強い者の身勝手が、どこまでも通ってしまう。
ヴェネディクト家が不正した貴族なのか、政争に負けて没落した貴族なのかも判断しかねるけど、とにかくこうなったら、晒し者で一族公開処刑されて、庶民のうっ憤を晴らすイベントに使われる。そういう野蛮な世の中だ。
「剣と魔法の世界だもんね。ほんと、“ステータスオープン”とか言ったらステータスが出てもおかしくないくらいに」
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レイナ・ヴェネディクト
17歳・女
ジョブ:魔導士
LV:21
HP:4321
MP:5678
(以下略)
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……本当に出たわ。
「ナニコレ。え、え??」
ステータスに近いものはこの世界に存在した。教会にある巨大水晶で鑑定すると、大まかな適性が分かり、それでジョブを選べるのだ。
他にも、犯罪者を探すための水晶玉なんてものもあったはず。
ただ、今見えているデータみたいに数値化された画面は、どこにも無いものはずだ。鑑定には魔道具の水晶玉が必要で、“ステータスオープン”などという呪文を、レイナは聞いたことがなかった。
「……なんだけど、“私”、コレと似たものを見たことあるなぁ」
そう、さっき思い出したところの、
「日本の私、“鈴木麗奈”がやっていたオンラインゲームのステータス画面そっくり!」
《キーワード・“鈴木麗奈”を確認しました。ロックを解除します。》
「へ……?」
*******
スズキ・レナ
17歳・女
ジョブ:神聖術士
LV:50(55)
HP:22000
MP:27000
(以下略)
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頭の中で、シャキーンって音がして、目の前でステータス画面が入れ替わった。
「何これ。え、えぇ!?」
服が変わっている。さっきまで着ていたドレスじゃない。
これ、ゲームで着ていた白のローブだ!
「どういうこと!? 私、麗奈に戻った? “レイナ・ヴェネディクト”は消えたってこと?」
呟くと、またシャキーンという音が聞こえた。
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レイナ・ヴェネディクト
17歳・女
ジョブ:魔導士
LV:21
HP:1234
MP:5678
(以下略)
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「…………」
「……“鈴木麗奈”」
シャキーン
「“レイナ・ヴェネディクト”」
シャキーン
「“鈴木……」
なるほど。名前がキーワードで、切り替えが可能ってことか。
すごい早着替えができてちょっと面白いな。
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