断罪済み悪役令嬢に憑依したけど、ネトゲの自キャラ能力が使えたので逃げ出しました

八華

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特殊エリア1

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 王子の部屋での話が済むと、特殊エリアの入り口に案内された。

 特殊エリアは地図上には無く、この世界の各地にあるワープゾーンから移動する。その1つは、王城の中にあった。
 元は公爵家の人たちが閉じ込められていた牢屋。そこに悪魔のダンジョンの入り口ができて、それを潰すと、今度は特殊エリアへのワープポータルが出現したそうだ。
 元が牢屋の上に、悪魔の呪いの大元となった場所だ。地下の空気は、以前に私が閉じ込められていたときよりさらに澱んでいて、すごく不気味だった。

「ふと思ったんだけど、パーティー5人以上で攻略しようとは考えなかったの?」

 ゲームと違うんだから、人数制限に縛られていないかもしれない。凶悪な魔物に5人だけで挑まず、人海戦術を使えるなら使いたいよね。

「いや、ゲームの設定は生きている。5人ごとに別次元に飛ばされる感じだった」

 入るだけなら死なないから、一応複数パーティーで入ってはみたそうだ。でも、5人ごとに別の場所に飛ばされて、大声をあげても他のパーティーの人には一切届かなかったらしい。
 ゲームだと、この特殊エリアや各ダンジョンは、パーティーごとに生成されるインスタンスエリアになっていた。それと同じみたいだ。

「特殊エリアは全20階層のダンジョンだ。1階ごとに出現する敵のレベルが51~70まで上がっていく。それぞれの階にフロアボスが居て、倒すと次の階に進める。階段入り口で、元の世界に戻るか進むか選択ができる。再度入るときは、一度行った階であれば好きな階層から入れる」

「うん」

「俺たちが紛れ込んだ“乙女ゲームシナリオ”は、トリップ前の最新アップデートで追加されたイベントだ。“女神の導”は、最下層レベル70エリアのクリア報酬。教会にアイテムを捧げれば、城の呪いが解ける」

 それくらいで、概要の確認は済んだ。今日はここで解散かなと思っていたんだけど、

「じゃあ、皆、装備の用意は出来ているか?」

 悠真君は続ける気だったらしい。

「ああ、アイテム鞄に一式入っているよ」

 アンジェラさんは魔道具の空間拡張鞄に、常に仕事道具を入れていた。

「オレも棒術用の武器はいつも携帯してるぞ」

 ラビリオ君は裸で武器だけ持ってる。
 獣人は基本裸で、種族特性で毛皮が丈夫になっていくそうだ。

「それじゃあ、今から攻略開始するか」

「……は?」

 当たり前のように言う悠真君に、思わず聞き返してしまった。

「ちょっと待って、私、魔導士でいくんでしょ? レベル21よ。なんで50レベルからのダンジョンに入らなきゃいけないの。」

「あまり時間をかけたくない。ここならレベルが効率よく上がるぞ? 俺の姫巫女レベル51と英人の魔法剣術士51はここで上げた。貴族子息どももここで50近くにまでしてある」

 そういえば、悪役令嬢断罪場面にいた貴族子息たちは、使い物にならなくなったと以前に聞いてたな。……あれって、悠真君が男の子だからショックを受けたとかじゃなく、レベル上げがえぐすぎて心折られてたの!??

「……大丈夫だ。レナちゃんが居る。アンジェラさんも美人だ。前みたいに心が砂漠になるヘタレ男パーティーじゃねぇ……」

 英人君が小声でブツブツ呟いている。面会前の彼が腑抜けていたのは、そういう理由か。

 何か、攻略に挑む前から暗雲が立ち込めている気がしてきたよ。



 一度、地下牢のある階から出て、上階の客室で装備を整えた。
 私の魔導士装備は、レイナが牢に入れられたときに没収された中から準備されていた。大貴族が使っていたものだけに、品質は良かった。

「獣人は装備を身につけないって聞いていたが、本当だったんだな」

 悠真君が不思議そうにラビリオ君の柔らかい毛を触っている。

「この毛が強い防御力を持つとはなぁ」

「オレから見たら、人間の方が変だぞ。重いものを身に着けたら、動きが悪くなるぞ」

 ラビリオ君は、ウサギ型の獣人だから気にならないけど、いつもナチュラルに全裸だ。背中に魔法鞄のリュックだけ背負っている。
 手には、両端に金属の飾りのついた棒1本。素材は軽くて丈夫な木材らしい。装飾は自分でやってそうだな。

「身軽にして完全な回避盾か。ゲームでは人型しか選べなかったから、戦ってみるまでどういう動きか想像できない」

 悠真君は興味深々で楽しそう。ゲーマーの血が騒いでいるな。


「さて、レベル上げだが、当初は俺がヒーラーで姫巫女、英人が魔法剣術士で、盾1攻撃3回復1でいく」

「理由は?」

 アンジェラさんが悠真君にたずねた。

「レベル差のついたパーティーには奇襲がある。実力差の激しいメンバーでパーティーを組むと、上位メンバーに合わせた敵が奇襲してくる。俺と英人のメインはレベル70だが、今レベル70の敵に奇襲されると、さすがになす術がない」

「レベル差で奇襲? ああ、以前にレナと入ったダンジョンで襲われたのはそれか」

 ああ、その説明、私、……アンジェラさんたちにうまくできなかったんだ。

「すみません。迷惑をかけたのに、私、ちゃんと言ってなかったですよね」

「いや、いい。今なら分かるが、前提が突拍子もなさすぎて、あのとき説明に困ったのは理解できる」

「……すみません」

 私はひたすらアンジェラさんに頭を下げるしかなかった。

「気にするな。事件の後、レナはダンジョン行きを拒んで、生産するようになっただろ。気持ちはわかってる」

 アンジェラさんの器の大きさに救われるなぁ。

 私たちのやり取りが済むと、悠真君がまた話し出した。

「レベル50を過ぎると、奇襲はなくなる。あれは、初心者に無理やりパワーレベリングさせるベテランを規制するためにつくられた制度だ。全員50超えをしたら、予定通りの編成に戻す。ラビリオとアンジェラは、何かスキルを獲得したら教えてくれ。それで判断する」

「分かった」

 ラビリオ君が頷く。ラビリオ君はあんまり喋らないけど、話の流れは分かってる感じだ。

 ゲームでパワーレベリングに規制があるのは、初心者保護のためって聞いたことがあるな。
 規制のなかった頃は、よくベテランが、本人としては良かれと思って、初心者を強引なレベル上げに連れて行ってしまい、すぐにレベル50にしてしまう問題が起きていた。
 それだと、ゲームを始めたばかりのプレイヤーは、試行錯誤する楽しみを奪われてしまう。低レベルのうちに易しい敵で慣れておかないと、その後のプレイがうまくいかなくなって、辞めてしまう人が多かったそうだ。
 一方でレベル50以上の特殊エリアはもともとガチ勢用だ。好きなように効率プレイしてくれっていうスタンスらしい。


「それじゃあ、いくぞ」

 悠真君が特殊エリアへのポータルを起動した。
 今のパーティー編成で一番低レベルは私だ。無事に帰ってこれるかな。心配だけど、ポータルは問題なく起動して、淡い光とともに、私たちを特殊エリアへと転送した。

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