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高等部2年生
エウロとデート(アリア編)2/2
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エウロの耳が真っ赤だ。
顔はよく見えないけど、同じく真っ赤なんだろうなって思う。
触れたい衝動に駆られている私はといえば、もちろん嫌ではない。
断る理由もなく、エウロと手を繋いだまま買い物を続ける。
色々と買い物をした後、近くにあったお店でお昼を済ませる。
お店を出ると、エウロが笑顔で口を開いた。
「この後どうする?」
「そうだねー」
買いたい本は買ったからなぁ。
それよりも困った。
まだまだエウロの近くにいたい、触りたい気持ちがなくなっていない。
「広場の外れに休む所があるから、何の本を買ったか見せ合おうか?」
「いいね。そうしよう!」
広場の方へと向かいながら、再びエウロが私の手を取った。
2人で手を繋ぎ、広場の外れにあるベンチへと座る。
夢中になって本を見せ合っていると、顔の距離がいつもより近い事に気がついた。
エウロも気がついたのか、お互いに無言で見つめ合う。
さっきより、顔が近づいた気がする。
私が近づいたのか、エウロが近づいたのかも分からない。
このままだと……キスしちゃいそうだ。
考えている間にも、どんどんと顔が近づいていく。
「──エ、エウロくん!!」
突然、エウロの名前を呼ばれたことで、近づいていた顔がぱっと離れる。
声がした方にいたのは──
「……ネヴェサさん?」
驚いたようにエウロが席を立った。
「もう我慢なりませんわぁ。これなら私の行為が知られた方がまだ良いですわぁ」
ネヴェサさん?
ネヴェサさん……ネヴェサさん、ネヴェサさん!!
そうだ! 思い出した!!
広場で本を見ていたら、ネヴェサさんに会ったんだ!
「ううっ。なぜ逆の催眠が掛かっててしまったのでしょうぅ。私が初心者だからでしょうかぁ」
涙目で私とエウロの元へと歩いてくる。
何の事か分からずに首を傾げていると、ネヴェサさんが私の前に立った。
私に水晶を見せ「催眠を解きますぅ」と言っている。
混乱しつつも、なぜかすーっと私の心の奥底にネヴェサさんの言葉が入ってきた。
……ん? あれ!?
さっきまでのエウロに触れたい衝動が収まっている!!
「……なぜ私に催眠を掛けたんですか?」
私に催眠を掛けた経緯について尋ねると、ネヴェサさんが気まずそうに話し始めた。
「催眠術を使える家系で育った私は、幼少期に“黒魔術”を使う家系とありもしない噂を立てられ過ごしてきましたの」
催眠術かぁ……。
別館の人たちは、私の幼なじみ達とは違った個性を持ってる人たちの集まりだよなぁ。
ジュリアが男性の幼なじみを『一癖も二癖ある』と話していたけど、男性陣に限らず、女性陣もそうなのかもしれない。
「さらには親に頼まれ、ずっと自分勝手で偉そうなジュリアのご機嫌を取って過ごしてきましたの」
……親に頼まれて仲良くしてたんだ。
それにしても、ジュリアと一緒に過ごす事を想像しただけで、楽しくなさそうな日々に思えてしまう。
「ずっとずっと楽しくない日々でしたの。それでも……幼なじみ達も私と同じく楽しそうではなかったので、我慢できましたの」
仲間意識みたいなものかな?
「それに……いずれ私だけの王子様が現れて、私をこの楽しくない世界から救ってくれると思ってましたぁ」
……う、うん。なるほど?
「楽しくない要因のジュリアがいなくなった後も、なぜか楽しくない日々が続いてましたが……」
儚げな美しさを持ったネヴェサさんだからかもしれないけど、随分と悲しそうに見える。
「まず変わったのはソフィーでしたぁ。久しぶりに話したソフィーは表情が柔らかくなり、何より学校を楽しんでいるように見えたのですぅ」
静かに、ゆっくりとネヴェサさんが話を続ける。
「ライリー、最近ではユーテルも……私以外の幼なじみ達がどんどん楽しい学校生活を過ごしている姿を見かけるようになりましたぁ」
ああ、ライリー……さんね。
会う度に『お母様のようだ、お母様のようだ』と言われるからかな。
いまだに抵抗があって、“さん”が取れない唯一の人なんだよなぁ。
ユーテルさんが楽しんでいるように見えるのは、ルナに恋したからだと思う。
でもその前からユーテルさんだけは……無駄な動きが多いからかな?
私から見ると、毎日が楽しそうに見えたけどな。
ずっと一緒にいる幼なじみ達の目には違って見えたのかもしれない。
「近い内に私にも楽しくない日々を壊してくれる人が現れると思っていたら、エウロくんが現れたのですぅ」
ネヴェサさんの言葉を聞いて、エウロが驚いた表情をしている。
どうやらネヴェサさんの気持ちに全く気がついていなかったようだ。
私に言われたくないだろうけど、エウロって恋愛に鈍そうだよね。
……いや、私に言われたくないだろうけど。
「エウロくんはいつも私の話を楽しそうに聞いてくれて、幼なじみ達が楽しんでいる姿を見るのがなぜかつらいという私の醜い気持ちにも優しく寄り添ってくれて……」
なんかエウロらしいな。
「『俺も昔、つらい、かっこ悪い気持ちを話して、それでも受け入れてくれた人がいて楽になった事がある。話を聞いてもらえるだけでも楽になると思うから、いつでも聞くよ』と、言ってくれたんですぅ。それなのに……」
ネヴェサさんが私を上目遣いで、ジトーッと睨んでくる。
少し……いや、かなり怖い。
「エウロくんの話にアリアさんが登場する機会が多いとは思っていましたが、エウロくんから嬉しそうに『アリアと“イーブル”に2人で行く約束をしてるんだ』と言われるまでは、好きだとまでは思っていませんでしたぁ。極めつけは、“あのテスタコーポ”での告白ですぅ」
──さぁ、ここで整理をしてみよう。
① ネヴェサさん、エウロを好きになる。
➁ エウロが私を好きという事にネヴェサさんが気がつく。
➂ ネヴェサさん、エウロを避ける。
④ だがしかし、私とエウロが2人で仲良くデートをするのは耐えられなかった。
➄ 邪魔をしようと私に催眠をかけるが、なぜか逆の催眠に掛かり失敗。
ソフィーの幼なじみ達も欲しい物は手に入る家系だし、何でもそつなくこなしそうなのに不器用な人が多いなぁ。
だからなのか、なぜか怒れないし、憎めない。
「エウロくんだけが私を分かってくれましたの。やっと私だけの王子様が現れたと思ったのにぃ」
エウロがネヴェサさんの前に立つ。
「その……急に避けられたから、俺が何か失礼なことを言ってしまったんだと思ってた」
自分の頭に手を置き、少し困った表情をしている。
「……エウロくん」
「ごめん!」
深々とエウロが頭を下げた。
「俺には好きな人がいるから」
顔を上げたエウロが、申し訳なさそうな表情をしている。
「それに『俺だけが分かってくれた』ってネヴェサさんは話してくれたけど……それ、アリアの受け売りだから」
「えっ?」
えっ?
たった今、ネヴェサさんの言葉と私の心の中が綺麗にシンクロした。
「ネヴェサさんに俺の言葉が響いたのだとしたら、それは“アリアの言葉”だから。かっこ悪い俺を受け入れてくれたのも、それでもかっこいいと言ってくれたのもアリアなんだ」
もう一度、エウロが頭を下げた。
「もしネヴェサさんに誤解されるような態度を取ってしまったとしたら、それは俺のせいだ。ごめんな」
「……頭を上げてください」
ネヴェサさんに言われ、エウロが頭を上げる。
「エウロくんが私の王子様ではない事は分かりましたわぁ。また楽しくない日常に戻るだけですからぁ」
そうそう! その言葉がずっと気になってた!!
「ネヴェサさん!」
「な、なんですかぁ? 結果的に悪い催眠じゃなかったんですからぁ……」
私が怒ると思ったのか、少したじろいでいる。
「ネヴェサさんは、他力本願すぎます!」
「えっ?」
きっぱりとネヴェサさんに伝える。
「あ、でも、話を聞いていないだけで、本当は楽しくない日々を脱却する努力をしていたのだったらごめんなさい」
少し聞いた話だけで決めつけるのも申し訳ないから、先に謝っておこう。
「ただ現れる保証のない人を何年も待つより、自分で行動した方が遥かに早く、自分の望んだ日々を手に入れる可能性が高いと思います」
“こういう関係”じゃなかったら、仲良くなれたかもって思うからかな?
「私はジュリアみたいな幼なじみがいなかったから……周りに恵まれてたから、ネヴェサさんの気持ちは分かってあげられませんが、自分から楽しくなれるよう行動した方がいいと思いますよ?」
ついつい話に熱がこもってしまう。
「行動しても変わらないかもしれませんよぅ」
「行動しなかったら何も変わりませんよ?」
きょとんとした顔で、ネヴェサさんが私を見る。
「やり方は極端で間違っていましたが、今日のように行動に移せばいいと思います」
幼なじみが楽しんでいる姿を見るのが“なぜかつらい”と言ったネヴェサさん。
同じ所に立っていたはずの幼なじみが変わってるのに自分は変わらない。
満たされない気持ちのままだったら、そりゃ焦っちゃうよね。
「どう行動していいのか分からないのでしたら、私……」
と、言いかけて止める。“私”は嫌かもしれない。
「ソフィーやエウロに相談してもいいと思いますよ」
エウロが頷き、笑い掛ける。
「もちろん。いつでも聞くよ」
私とエウロの言葉に、ネヴェサさんが驚いたように目を見開く。
しばらく何も言わずに黙った後、ふいにネヴェサさんが微笑んだ。
「……人が良くてお節介な2人ですねぇ。ふふっ」
少しだけ肩の力を抜いたような、自然な笑顔だった。
気を取り直したネヴェサさんは私に向かって丁寧に謝罪すると、街の入り口の方へと去って行った。
静かになったところで、ふと先ほどの事を思い出す。
……もしも催眠が掛かってなかったら、あのままエウロとキスしてたのかな?
それともしていなかったのかな?
エウロも同じことを思い出したのか、自然と目が合う。
少し沈黙した後、照れながらも気まずそうに笑い合った。
顔はよく見えないけど、同じく真っ赤なんだろうなって思う。
触れたい衝動に駆られている私はといえば、もちろん嫌ではない。
断る理由もなく、エウロと手を繋いだまま買い物を続ける。
色々と買い物をした後、近くにあったお店でお昼を済ませる。
お店を出ると、エウロが笑顔で口を開いた。
「この後どうする?」
「そうだねー」
買いたい本は買ったからなぁ。
それよりも困った。
まだまだエウロの近くにいたい、触りたい気持ちがなくなっていない。
「広場の外れに休む所があるから、何の本を買ったか見せ合おうか?」
「いいね。そうしよう!」
広場の方へと向かいながら、再びエウロが私の手を取った。
2人で手を繋ぎ、広場の外れにあるベンチへと座る。
夢中になって本を見せ合っていると、顔の距離がいつもより近い事に気がついた。
エウロも気がついたのか、お互いに無言で見つめ合う。
さっきより、顔が近づいた気がする。
私が近づいたのか、エウロが近づいたのかも分からない。
このままだと……キスしちゃいそうだ。
考えている間にも、どんどんと顔が近づいていく。
「──エ、エウロくん!!」
突然、エウロの名前を呼ばれたことで、近づいていた顔がぱっと離れる。
声がした方にいたのは──
「……ネヴェサさん?」
驚いたようにエウロが席を立った。
「もう我慢なりませんわぁ。これなら私の行為が知られた方がまだ良いですわぁ」
ネヴェサさん?
ネヴェサさん……ネヴェサさん、ネヴェサさん!!
そうだ! 思い出した!!
広場で本を見ていたら、ネヴェサさんに会ったんだ!
「ううっ。なぜ逆の催眠が掛かっててしまったのでしょうぅ。私が初心者だからでしょうかぁ」
涙目で私とエウロの元へと歩いてくる。
何の事か分からずに首を傾げていると、ネヴェサさんが私の前に立った。
私に水晶を見せ「催眠を解きますぅ」と言っている。
混乱しつつも、なぜかすーっと私の心の奥底にネヴェサさんの言葉が入ってきた。
……ん? あれ!?
さっきまでのエウロに触れたい衝動が収まっている!!
「……なぜ私に催眠を掛けたんですか?」
私に催眠を掛けた経緯について尋ねると、ネヴェサさんが気まずそうに話し始めた。
「催眠術を使える家系で育った私は、幼少期に“黒魔術”を使う家系とありもしない噂を立てられ過ごしてきましたの」
催眠術かぁ……。
別館の人たちは、私の幼なじみ達とは違った個性を持ってる人たちの集まりだよなぁ。
ジュリアが男性の幼なじみを『一癖も二癖ある』と話していたけど、男性陣に限らず、女性陣もそうなのかもしれない。
「さらには親に頼まれ、ずっと自分勝手で偉そうなジュリアのご機嫌を取って過ごしてきましたの」
……親に頼まれて仲良くしてたんだ。
それにしても、ジュリアと一緒に過ごす事を想像しただけで、楽しくなさそうな日々に思えてしまう。
「ずっとずっと楽しくない日々でしたの。それでも……幼なじみ達も私と同じく楽しそうではなかったので、我慢できましたの」
仲間意識みたいなものかな?
「それに……いずれ私だけの王子様が現れて、私をこの楽しくない世界から救ってくれると思ってましたぁ」
……う、うん。なるほど?
「楽しくない要因のジュリアがいなくなった後も、なぜか楽しくない日々が続いてましたが……」
儚げな美しさを持ったネヴェサさんだからかもしれないけど、随分と悲しそうに見える。
「まず変わったのはソフィーでしたぁ。久しぶりに話したソフィーは表情が柔らかくなり、何より学校を楽しんでいるように見えたのですぅ」
静かに、ゆっくりとネヴェサさんが話を続ける。
「ライリー、最近ではユーテルも……私以外の幼なじみ達がどんどん楽しい学校生活を過ごしている姿を見かけるようになりましたぁ」
ああ、ライリー……さんね。
会う度に『お母様のようだ、お母様のようだ』と言われるからかな。
いまだに抵抗があって、“さん”が取れない唯一の人なんだよなぁ。
ユーテルさんが楽しんでいるように見えるのは、ルナに恋したからだと思う。
でもその前からユーテルさんだけは……無駄な動きが多いからかな?
私から見ると、毎日が楽しそうに見えたけどな。
ずっと一緒にいる幼なじみ達の目には違って見えたのかもしれない。
「近い内に私にも楽しくない日々を壊してくれる人が現れると思っていたら、エウロくんが現れたのですぅ」
ネヴェサさんの言葉を聞いて、エウロが驚いた表情をしている。
どうやらネヴェサさんの気持ちに全く気がついていなかったようだ。
私に言われたくないだろうけど、エウロって恋愛に鈍そうだよね。
……いや、私に言われたくないだろうけど。
「エウロくんはいつも私の話を楽しそうに聞いてくれて、幼なじみ達が楽しんでいる姿を見るのがなぜかつらいという私の醜い気持ちにも優しく寄り添ってくれて……」
なんかエウロらしいな。
「『俺も昔、つらい、かっこ悪い気持ちを話して、それでも受け入れてくれた人がいて楽になった事がある。話を聞いてもらえるだけでも楽になると思うから、いつでも聞くよ』と、言ってくれたんですぅ。それなのに……」
ネヴェサさんが私を上目遣いで、ジトーッと睨んでくる。
少し……いや、かなり怖い。
「エウロくんの話にアリアさんが登場する機会が多いとは思っていましたが、エウロくんから嬉しそうに『アリアと“イーブル”に2人で行く約束をしてるんだ』と言われるまでは、好きだとまでは思っていませんでしたぁ。極めつけは、“あのテスタコーポ”での告白ですぅ」
──さぁ、ここで整理をしてみよう。
① ネヴェサさん、エウロを好きになる。
➁ エウロが私を好きという事にネヴェサさんが気がつく。
➂ ネヴェサさん、エウロを避ける。
④ だがしかし、私とエウロが2人で仲良くデートをするのは耐えられなかった。
➄ 邪魔をしようと私に催眠をかけるが、なぜか逆の催眠に掛かり失敗。
ソフィーの幼なじみ達も欲しい物は手に入る家系だし、何でもそつなくこなしそうなのに不器用な人が多いなぁ。
だからなのか、なぜか怒れないし、憎めない。
「エウロくんだけが私を分かってくれましたの。やっと私だけの王子様が現れたと思ったのにぃ」
エウロがネヴェサさんの前に立つ。
「その……急に避けられたから、俺が何か失礼なことを言ってしまったんだと思ってた」
自分の頭に手を置き、少し困った表情をしている。
「……エウロくん」
「ごめん!」
深々とエウロが頭を下げた。
「俺には好きな人がいるから」
顔を上げたエウロが、申し訳なさそうな表情をしている。
「それに『俺だけが分かってくれた』ってネヴェサさんは話してくれたけど……それ、アリアの受け売りだから」
「えっ?」
えっ?
たった今、ネヴェサさんの言葉と私の心の中が綺麗にシンクロした。
「ネヴェサさんに俺の言葉が響いたのだとしたら、それは“アリアの言葉”だから。かっこ悪い俺を受け入れてくれたのも、それでもかっこいいと言ってくれたのもアリアなんだ」
もう一度、エウロが頭を下げた。
「もしネヴェサさんに誤解されるような態度を取ってしまったとしたら、それは俺のせいだ。ごめんな」
「……頭を上げてください」
ネヴェサさんに言われ、エウロが頭を上げる。
「エウロくんが私の王子様ではない事は分かりましたわぁ。また楽しくない日常に戻るだけですからぁ」
そうそう! その言葉がずっと気になってた!!
「ネヴェサさん!」
「な、なんですかぁ? 結果的に悪い催眠じゃなかったんですからぁ……」
私が怒ると思ったのか、少したじろいでいる。
「ネヴェサさんは、他力本願すぎます!」
「えっ?」
きっぱりとネヴェサさんに伝える。
「あ、でも、話を聞いていないだけで、本当は楽しくない日々を脱却する努力をしていたのだったらごめんなさい」
少し聞いた話だけで決めつけるのも申し訳ないから、先に謝っておこう。
「ただ現れる保証のない人を何年も待つより、自分で行動した方が遥かに早く、自分の望んだ日々を手に入れる可能性が高いと思います」
“こういう関係”じゃなかったら、仲良くなれたかもって思うからかな?
「私はジュリアみたいな幼なじみがいなかったから……周りに恵まれてたから、ネヴェサさんの気持ちは分かってあげられませんが、自分から楽しくなれるよう行動した方がいいと思いますよ?」
ついつい話に熱がこもってしまう。
「行動しても変わらないかもしれませんよぅ」
「行動しなかったら何も変わりませんよ?」
きょとんとした顔で、ネヴェサさんが私を見る。
「やり方は極端で間違っていましたが、今日のように行動に移せばいいと思います」
幼なじみが楽しんでいる姿を見るのが“なぜかつらい”と言ったネヴェサさん。
同じ所に立っていたはずの幼なじみが変わってるのに自分は変わらない。
満たされない気持ちのままだったら、そりゃ焦っちゃうよね。
「どう行動していいのか分からないのでしたら、私……」
と、言いかけて止める。“私”は嫌かもしれない。
「ソフィーやエウロに相談してもいいと思いますよ」
エウロが頷き、笑い掛ける。
「もちろん。いつでも聞くよ」
私とエウロの言葉に、ネヴェサさんが驚いたように目を見開く。
しばらく何も言わずに黙った後、ふいにネヴェサさんが微笑んだ。
「……人が良くてお節介な2人ですねぇ。ふふっ」
少しだけ肩の力を抜いたような、自然な笑顔だった。
気を取り直したネヴェサさんは私に向かって丁寧に謝罪すると、街の入り口の方へと去って行った。
静かになったところで、ふと先ほどの事を思い出す。
……もしも催眠が掛かってなかったら、あのままエウロとキスしてたのかな?
それともしていなかったのかな?
エウロも同じことを思い出したのか、自然と目が合う。
少し沈黙した後、照れながらも気まずそうに笑い合った。
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