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ダンジョン攻略と4人の新人騎士
エピローグ ザ・ライトスタッフ(あっ軽い人々)
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「お前たち!よく戻った!!」
「聞いたぞ?随分なダンジョンボスだったそうだな。」
…相変わらずうるさい。
「…はぁ…。」
俺はロイヒの大声に辟易し、ため息をつく。
ダンジョンを攻略した俺たちは、
女王へ攻略達成の報告を行うべく、
王都へ戻っている。
そして今は、王城の応接室で謁見の間に呼ばれるのを待っている。
先触れに簡単にだが報告していた、
ダンジョンボスが爵位持ちの魔族だった件は、
先輩騎士達をも驚かせた。
先輩騎士の中には、未だ魔族を見たことが無い者も多いため、
無理はないだろう。
しかも、その爵位持ちの魔族を倒したのは新人騎士だったという報は、
魔族と戦った事のある者にさえ、
驚嘆を持って迎えられた。
結果、王城の応接室だというのに、
ロイヒがいつもの大声で4人の新人騎士を賞賛している。
魔物の中で特に知能、戦闘力の高いモノを魔族と呼び、普通の魔物とは区別する。
しかも今回倒したのは、その魔族の中でも特に危険な爵位持ちだった。
アルノバルのような爵位持ちの魔族とも戦った、
ロイヒとヴァルシが興奮するのも仕方ない…のだが、
…うるさい。
「アルフリーヌ!さすが名門アークストルフ家の子女だ!!」
「伝家の大楯、さぞ活躍したのだろうな。」
「は、はい…ありがとうございます。」
「エイク!お前もアタッカーとして腕を上げたな!」
「お前の二刀流に並ぶ者なしだな。」
「あー…ありがとうござい…ます。勿体無いお言葉。」
「サスティ!この偉業はお前の回復、補助魔法あったればこそだ!!」
「お前の補助魔法、誇っていいぞ。」
「オホメイタダキコウエイデス。」
「ミラ!お前の大剣がとどめを刺した聞いたぞ!」
「お前の一番手柄だな。」
「あ、ありがとうございます!ただ、とどめを刺したのは私ではなく…。」
皆、一様に歯切れが悪い。
そのため、応接室に重い空気が流れ、
「~~~~~~~~~っっっっっ!!!
なんだというのだっ、お前ら!
爵位持ちの魔族を討ったんだ!!もっと喜べっ!!!」
結果ロイヒが切れた。
仕方ないだろう。
ロイヒ達上役や先輩達が考えた役割を、
俺のアドバイスとはいえ勝手に変えて、それで勝利したのだ。
あまり大きな声では言えない事実だろうし、
ロイヒ達に気を遣うアルフリーヌ達の気持ちはよくわかる。
ここは、原因を作った俺が釈明すべきだろう。
「あー、ちょっといいか?」
言いかけた所で、
「まさか!お前たち、このケダモノに何かされたのかっ!!?」
「なるほど、それで浮かない顔を…。」
ロイヒとヴァルシが俺を睨む。
おいおい、とんだ誤解だよ。
面倒だし、早めに誤解を解こう、
「あー…」
「そんな事はありませんわっ!!」
アルフレーヌがロイヒ以上の大声で否定する。
「お言葉ですが!ハヤト様はそのような方ではありませんでしたっ!」
エイクも続いて、俺を弁護してくれる。
「な、なんだお前たち、いきなりっ!
あ!口止めされているのかっ!!卑怯なヤツめっ!!」
「いや、姉上。ちょっと待とう。」
「そうか、口に出すのも憚られるような事をされたのかっ!!
貴様、そこへ直れっ!団長として、私が叩っ斬る!!」
ヴァルシの制止も聞かず、ロイヒが俺に突っかかる。
「団長殿!ハヤト様は私達にとても紳士的に接していただきました!」
「そして、的確に、ご指導いただきました!」
「姉上っ!」
「う…うむ…。」
サスティとミラの弁護とヴァルシの一喝で、
ロイヒがやっと止まった。
「その結果、ダンジョンボスを討つ事が出来ました。」
「ハヤト師匠のおかげですわっ。」
「「師匠っ?!」」
ロイヒとヴァルシがハモる。
「どうだ、ロイヒ?ヴァルシ?疑いは晴れたか?」
「う~…。」
「姉上、4人がここまで言うのだ。信じよう。」
「ふんっ!」
ロイヒは鼻息で返事すると、ソファへどっかと腰掛ける。
「ハヤト、悪かったな。」
「納得してもらえたようで良かったよ。」
未だ俺を睨みつけるロイヒを横目に、ヴァルシの謝罪を受け入れる。
「しかし、ここまでウチの団員が心酔するとは、
余程適切な指導だったようだな。」
「ああ、それな。ジョブを変えてみたんだ。」
「?」
「私、タンクから大剣使いになりましたわ!」
「え?ではタンクは…。」
「私がタンクになりました!」
「なんとっ?!」
「あのー、ちなみに、私はヒーラー兼アタッカーに…。」
「何っ?!」
「あ、私はこれからは魔法アタッカーに専念します。」
「……そ、そうか。」
自分たちの与えたジョブをあっさり変更され、
少し傷心気味のヴァルシの肩を叩き、
「ま、適材適所ってやつだ。」
「馴れ馴れしく触るな。」
「あ、すんません。」
ヴァルシに思い切り払われた手を撫でていると、
「皆様、お待たせしました。」
衛士が応接室に現れた。
「謁見の間へお越し下さい。」
「はいっ!」
皆、勢いよく立ち上がるが、
俺はこれからする報告の事を考えると、
気が重くなり、腰も重くなった。
「ハヤト様、どうされました?」
「師匠、どこか具合でも?」
エイクとアルフレーヌが俺を覗き込む。
「いや、なんでもない、大丈夫だよ。」
俺は笑いながら席を立つ。
ああ、面倒なことにならないといいが…。
つづく
ーーーーーーーーーーー
読了ありがとうございました。
今回で[ダンジョン攻略と4人の新人騎士の章]は終わりです。
次回から新章の予定です。
新しい土地、新しい登場人物を用意しております。
引き続きお付き合いいただけますと、幸いです。
「聞いたぞ?随分なダンジョンボスだったそうだな。」
…相変わらずうるさい。
「…はぁ…。」
俺はロイヒの大声に辟易し、ため息をつく。
ダンジョンを攻略した俺たちは、
女王へ攻略達成の報告を行うべく、
王都へ戻っている。
そして今は、王城の応接室で謁見の間に呼ばれるのを待っている。
先触れに簡単にだが報告していた、
ダンジョンボスが爵位持ちの魔族だった件は、
先輩騎士達をも驚かせた。
先輩騎士の中には、未だ魔族を見たことが無い者も多いため、
無理はないだろう。
しかも、その爵位持ちの魔族を倒したのは新人騎士だったという報は、
魔族と戦った事のある者にさえ、
驚嘆を持って迎えられた。
結果、王城の応接室だというのに、
ロイヒがいつもの大声で4人の新人騎士を賞賛している。
魔物の中で特に知能、戦闘力の高いモノを魔族と呼び、普通の魔物とは区別する。
しかも今回倒したのは、その魔族の中でも特に危険な爵位持ちだった。
アルノバルのような爵位持ちの魔族とも戦った、
ロイヒとヴァルシが興奮するのも仕方ない…のだが、
…うるさい。
「アルフリーヌ!さすが名門アークストルフ家の子女だ!!」
「伝家の大楯、さぞ活躍したのだろうな。」
「は、はい…ありがとうございます。」
「エイク!お前もアタッカーとして腕を上げたな!」
「お前の二刀流に並ぶ者なしだな。」
「あー…ありがとうござい…ます。勿体無いお言葉。」
「サスティ!この偉業はお前の回復、補助魔法あったればこそだ!!」
「お前の補助魔法、誇っていいぞ。」
「オホメイタダキコウエイデス。」
「ミラ!お前の大剣がとどめを刺した聞いたぞ!」
「お前の一番手柄だな。」
「あ、ありがとうございます!ただ、とどめを刺したのは私ではなく…。」
皆、一様に歯切れが悪い。
そのため、応接室に重い空気が流れ、
「~~~~~~~~~っっっっっ!!!
なんだというのだっ、お前ら!
爵位持ちの魔族を討ったんだ!!もっと喜べっ!!!」
結果ロイヒが切れた。
仕方ないだろう。
ロイヒ達上役や先輩達が考えた役割を、
俺のアドバイスとはいえ勝手に変えて、それで勝利したのだ。
あまり大きな声では言えない事実だろうし、
ロイヒ達に気を遣うアルフリーヌ達の気持ちはよくわかる。
ここは、原因を作った俺が釈明すべきだろう。
「あー、ちょっといいか?」
言いかけた所で、
「まさか!お前たち、このケダモノに何かされたのかっ!!?」
「なるほど、それで浮かない顔を…。」
ロイヒとヴァルシが俺を睨む。
おいおい、とんだ誤解だよ。
面倒だし、早めに誤解を解こう、
「あー…」
「そんな事はありませんわっ!!」
アルフレーヌがロイヒ以上の大声で否定する。
「お言葉ですが!ハヤト様はそのような方ではありませんでしたっ!」
エイクも続いて、俺を弁護してくれる。
「な、なんだお前たち、いきなりっ!
あ!口止めされているのかっ!!卑怯なヤツめっ!!」
「いや、姉上。ちょっと待とう。」
「そうか、口に出すのも憚られるような事をされたのかっ!!
貴様、そこへ直れっ!団長として、私が叩っ斬る!!」
ヴァルシの制止も聞かず、ロイヒが俺に突っかかる。
「団長殿!ハヤト様は私達にとても紳士的に接していただきました!」
「そして、的確に、ご指導いただきました!」
「姉上っ!」
「う…うむ…。」
サスティとミラの弁護とヴァルシの一喝で、
ロイヒがやっと止まった。
「その結果、ダンジョンボスを討つ事が出来ました。」
「ハヤト師匠のおかげですわっ。」
「「師匠っ?!」」
ロイヒとヴァルシがハモる。
「どうだ、ロイヒ?ヴァルシ?疑いは晴れたか?」
「う~…。」
「姉上、4人がここまで言うのだ。信じよう。」
「ふんっ!」
ロイヒは鼻息で返事すると、ソファへどっかと腰掛ける。
「ハヤト、悪かったな。」
「納得してもらえたようで良かったよ。」
未だ俺を睨みつけるロイヒを横目に、ヴァルシの謝罪を受け入れる。
「しかし、ここまでウチの団員が心酔するとは、
余程適切な指導だったようだな。」
「ああ、それな。ジョブを変えてみたんだ。」
「?」
「私、タンクから大剣使いになりましたわ!」
「え?ではタンクは…。」
「私がタンクになりました!」
「なんとっ?!」
「あのー、ちなみに、私はヒーラー兼アタッカーに…。」
「何っ?!」
「あ、私はこれからは魔法アタッカーに専念します。」
「……そ、そうか。」
自分たちの与えたジョブをあっさり変更され、
少し傷心気味のヴァルシの肩を叩き、
「ま、適材適所ってやつだ。」
「馴れ馴れしく触るな。」
「あ、すんません。」
ヴァルシに思い切り払われた手を撫でていると、
「皆様、お待たせしました。」
衛士が応接室に現れた。
「謁見の間へお越し下さい。」
「はいっ!」
皆、勢いよく立ち上がるが、
俺はこれからする報告の事を考えると、
気が重くなり、腰も重くなった。
「ハヤト様、どうされました?」
「師匠、どこか具合でも?」
エイクとアルフレーヌが俺を覗き込む。
「いや、なんでもない、大丈夫だよ。」
俺は笑いながら席を立つ。
ああ、面倒なことにならないといいが…。
つづく
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読了ありがとうございました。
今回で[ダンジョン攻略と4人の新人騎士の章]は終わりです。
次回から新章の予定です。
新しい土地、新しい登場人物を用意しております。
引き続きお付き合いいただけますと、幸いです。
応援ありがとうございます!
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