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本編【シャーロット】
昇進祝いパーティー6 本当は会いたくない
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ロイとカレンは相変わらず地下倉庫にいた。
二人とも並び合うようにして貨物に腰掛けていた。
「今回の任務はシャーロットに会うことですが、本当は会いたくないんです」
ロイは告白した。
自分でも、なぜこのようなことを口走ったのか分からなかった。
カレンには、なぜか聞かれてもいないことを言ってもいいと思わせられる不思議な引力があった。
危険な女だ、とロイは思った。
拷問や尋問を生業としているからだろうか。
「どうして?」
「……答えたくありません」
「そう……」
カレンはそれ以上何も言わなかった。
静かな時間が流れていく。
ロイは、なぜカレンがペチャクチャとロイの内心を聞き出してこないのか疑問だった。
「どうしてそんなにおとなしいんですか?」
「え? ロイくんが喋らないから」
「僕だって、カレンさんが話さないと何も話せません」
「そんな、私だって、何を話せばいいか分からないのに」
「そうですか」
「共通点だね」
カレンが恐る恐る言う。
「どうしてそんなに怖がっているんですか? 怖いですか?」
「う、うん。ちょっとね」
「そう言えば、貴女の首を絞めたことがありましたね。それですか」
ロイはサラッと言う。
カレンを見ると、その白い首には、今日は真珠のネックレスが飾られている。
カレンはハッとしながら、自分の首を確かめるように触る。
「そ、それもあるけど……。ロイくん、いつも何考えてるかわかんないし……」
「なるほど、それは貴女も同じですよ」
「え?」
カレンは目を丸くした。
「首を絞められたのに、その人間と普通に会話をしているんですよ? 変な色で塗り絵もするし。普通じゃないでしょう、貴女」
カレンは呆気にとられた。
「『普通じゃない』か……。確かに私、いつも普通になれないかも。見た目は普通だけど。でも、そんなことを言ったらロイくんだってそうだよ? 女の子の首を絞めるなんて、あり得ない」
カレンはもはや滑稽になり、笑った。
ロイは何も言わなかった。
月の光が次第に陰っていく。
「もう出ましょう」
「うん」
ロイが倉庫の扉を開けようとすると、なぜか鍵がかかっていた。
「……開かない」
「うそ! 入ってきた時には開いてたのに」
ガチャガチャと揺さぶってみるも、やはり開かない。
「閉じ込められましたね」
ロイは淡々と言う。
「早くなんとかしないと、本当に出られなくなっちゃうよ!」
カレンがパニック気味に言う。
「どうしよう……。こんなところに勝手に入ったから」
鍵の造りを見ると、意外とシンプルな造りになっている。これならキーピックで開けられそうだ。
「仕方ないですね、開けましょう」
「え?!」
ロイが内ポケットからペンに偽造されているペン型のキーピックを取り出した瞬間、ロイは眉をひそめて言った。
「何か燃えてる……?」
「ロイくん見て!」
カレンが指差した方向に目を向けると、木箱から発火しているのが見えた。
「ロイくん、このままだと火事になっちゃう。早く止めないと」
「そのためにも早く開けないとですね」
ロイが魔術師のような手捌きで開錠する間、カレンは火元を見にいった。
近くにライターなどは見当たらない。自然発火か。
「カレンさん、開きました。早く逃げましょう」
「でも、火が」
「火は後でいいですから!」
「そんな!」
カレンがドレスの裾を使って鎮火させようと試みると、徐々に火が消えていった。
おかげでドレスに煤が付いてしまっている。
「消えた!」
「小さな火でよかったですね。早くここを出ましょう」
ロイはカレンの腕を掴むと、地下倉庫から一目散に逃げていった。
二人とも並び合うようにして貨物に腰掛けていた。
「今回の任務はシャーロットに会うことですが、本当は会いたくないんです」
ロイは告白した。
自分でも、なぜこのようなことを口走ったのか分からなかった。
カレンには、なぜか聞かれてもいないことを言ってもいいと思わせられる不思議な引力があった。
危険な女だ、とロイは思った。
拷問や尋問を生業としているからだろうか。
「どうして?」
「……答えたくありません」
「そう……」
カレンはそれ以上何も言わなかった。
静かな時間が流れていく。
ロイは、なぜカレンがペチャクチャとロイの内心を聞き出してこないのか疑問だった。
「どうしてそんなにおとなしいんですか?」
「え? ロイくんが喋らないから」
「僕だって、カレンさんが話さないと何も話せません」
「そんな、私だって、何を話せばいいか分からないのに」
「そうですか」
「共通点だね」
カレンが恐る恐る言う。
「どうしてそんなに怖がっているんですか? 怖いですか?」
「う、うん。ちょっとね」
「そう言えば、貴女の首を絞めたことがありましたね。それですか」
ロイはサラッと言う。
カレンを見ると、その白い首には、今日は真珠のネックレスが飾られている。
カレンはハッとしながら、自分の首を確かめるように触る。
「そ、それもあるけど……。ロイくん、いつも何考えてるかわかんないし……」
「なるほど、それは貴女も同じですよ」
「え?」
カレンは目を丸くした。
「首を絞められたのに、その人間と普通に会話をしているんですよ? 変な色で塗り絵もするし。普通じゃないでしょう、貴女」
カレンは呆気にとられた。
「『普通じゃない』か……。確かに私、いつも普通になれないかも。見た目は普通だけど。でも、そんなことを言ったらロイくんだってそうだよ? 女の子の首を絞めるなんて、あり得ない」
カレンはもはや滑稽になり、笑った。
ロイは何も言わなかった。
月の光が次第に陰っていく。
「もう出ましょう」
「うん」
ロイが倉庫の扉を開けようとすると、なぜか鍵がかかっていた。
「……開かない」
「うそ! 入ってきた時には開いてたのに」
ガチャガチャと揺さぶってみるも、やはり開かない。
「閉じ込められましたね」
ロイは淡々と言う。
「早くなんとかしないと、本当に出られなくなっちゃうよ!」
カレンがパニック気味に言う。
「どうしよう……。こんなところに勝手に入ったから」
鍵の造りを見ると、意外とシンプルな造りになっている。これならキーピックで開けられそうだ。
「仕方ないですね、開けましょう」
「え?!」
ロイが内ポケットからペンに偽造されているペン型のキーピックを取り出した瞬間、ロイは眉をひそめて言った。
「何か燃えてる……?」
「ロイくん見て!」
カレンが指差した方向に目を向けると、木箱から発火しているのが見えた。
「ロイくん、このままだと火事になっちゃう。早く止めないと」
「そのためにも早く開けないとですね」
ロイが魔術師のような手捌きで開錠する間、カレンは火元を見にいった。
近くにライターなどは見当たらない。自然発火か。
「カレンさん、開きました。早く逃げましょう」
「でも、火が」
「火は後でいいですから!」
「そんな!」
カレンがドレスの裾を使って鎮火させようと試みると、徐々に火が消えていった。
おかげでドレスに煤が付いてしまっている。
「消えた!」
「小さな火でよかったですね。早くここを出ましょう」
ロイはカレンの腕を掴むと、地下倉庫から一目散に逃げていった。
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