8 / 23
本編【カレン編】
拷問室の天使
しおりを挟む
誰も知らない場所の地下室で、男は目を覚ました。
薄暗く、ジメジメしていて吐き気がする。
身体も、首も動かない。動かせない。
うっすら開けた目の前に見えるのは、なぜか真っ黒の喪服を着ている女のシルエット。
しかも、まだ若そうだ。
顔は黒いレースに隠れて見えないが、きっと美人に違いない。
妙な確信を胸に、男は内心舌なめずりをした。
(女か)
年端もいかないこの若い女の顔は、さぞ怯えた子犬のように震えているに違いない。
男は、そう高を括った。
だが、その女が手にしている『それ』を見た途端、悍ましい記憶が蘇った。
ああ、そうだ……。
そういえば、足の爪が無くなっているんだった……。
ぼやけたような痛みの輪郭が、みるみる明確になり、忘れていた恐怖を思い出していく。
「いくらであいつらに雇われた?! 私がその三倍、いや十倍の額をお前に出す! それでも足りないなら、私の召使として雇ってやる。住む場所にも、金にも困らない。だからやめろ! 今すぐ私を解放しろ!」
痛めつけられてもなお残っているそのずる賢さをもって、傲慢に命令しようとしたが、声が出ない。
気がつくと、喉に釘が数本、刺ささっていた。
「いっひゃあああああああああ!!」
声も出せずに悲鳴を上げると、半信半疑だった噂を思い出した。
『一族全員が拷問師』
この女も、その一味……。
女は、清らかな声で何かを告げていた。
それはまるで、この地獄のような空間に顕現した天使のようだった。
だがもはや、男にはその内容をいちいち理解する余裕はない。
男は、生まれて初めて神に祈り、助けを乞うた。
薄暗く、ジメジメしていて吐き気がする。
身体も、首も動かない。動かせない。
うっすら開けた目の前に見えるのは、なぜか真っ黒の喪服を着ている女のシルエット。
しかも、まだ若そうだ。
顔は黒いレースに隠れて見えないが、きっと美人に違いない。
妙な確信を胸に、男は内心舌なめずりをした。
(女か)
年端もいかないこの若い女の顔は、さぞ怯えた子犬のように震えているに違いない。
男は、そう高を括った。
だが、その女が手にしている『それ』を見た途端、悍ましい記憶が蘇った。
ああ、そうだ……。
そういえば、足の爪が無くなっているんだった……。
ぼやけたような痛みの輪郭が、みるみる明確になり、忘れていた恐怖を思い出していく。
「いくらであいつらに雇われた?! 私がその三倍、いや十倍の額をお前に出す! それでも足りないなら、私の召使として雇ってやる。住む場所にも、金にも困らない。だからやめろ! 今すぐ私を解放しろ!」
痛めつけられてもなお残っているそのずる賢さをもって、傲慢に命令しようとしたが、声が出ない。
気がつくと、喉に釘が数本、刺ささっていた。
「いっひゃあああああああああ!!」
声も出せずに悲鳴を上げると、半信半疑だった噂を思い出した。
『一族全員が拷問師』
この女も、その一味……。
女は、清らかな声で何かを告げていた。
それはまるで、この地獄のような空間に顕現した天使のようだった。
だがもはや、男にはその内容をいちいち理解する余裕はない。
男は、生まれて初めて神に祈り、助けを乞うた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる