難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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難攻不落

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 並み居る異形がその体を保てず、崩れて消える。
 灰と成り果てて朽ちて消えるよりも先に、体を欠損させて黒の視界から消える。
 力を込めて、地面を蹴る。ビルよりも高い高さへと飛び上がり、そのまま空を飛翔する。
 振り上げた拳が、異形の顔や胴体を容易く穿つ。拳を直撃させ、強大な魔力で強固な魔力障壁だろうと防壁だろうと関係なく打ち砕く。

 ――その姿は、鬼神そのモノであった。

 目に付く異形が端から倒される。地面に倒れ、灰化が進む異形達が次々と山のように積まれる。
 鋭利な牙や爪、巨木のような剛腕、研ぎ澄まされた刃であっても、黒の命には届かない。
 迫り来る攻撃を目前で叩き落とし、飛び掛る小型や特異型の異形の脳天を1体1体丁寧に蹴りや拳で叩き潰す。
 頭部が弾け、動かなくなった胴体を足場に、高度を保つ為に再び空高く飛ぶ。
 ――異形が減って行く。顕現させた魔物バハムートだけでもこの数を相手にするのは難しくはない。

 しかし、黒は自ら手を下す――

 失った魔力に体を慣らす為に、敢えて徒手格闘術による近距離戦闘を維持する。

 「流石は、難攻不落・・・・だな」
 「どういう意味でしょうか?」

 翔の発言に、見習い上がりの騎士が尋ねる。
 現在の倭に属する騎士の8割以上が、黒や翔達の戦闘技術本気の戦いを知らない。
 当然、黒焔騎士団の功績の全てを知らない。
 だが、見習い上がりというのはそういうものであった。
 黒達が活躍していたのは、黒達が学生時代。知名度や名声が広回ろうとも、誰も本当の強さや戦いは知らない。
 知っているとすれば、実際に現場に居合わせた現役の騎士や老騎士程度――
 見習い上がりの者達では、詳細なデータなど持っていない。
 故に、難攻不落という称号を耳にしても、その意味など知る由もない。

 《難攻》――その者の進む先、攻め入れぬ地であろうとも進み全てを蹴散らしながら、進み続ける。
 《不落》――その者が立つ場所、困難を極める戦局であろうとも、落城する事はない。

 称号――

    皇帝やその他、力を締めした騎士に与えられる称号二つ名はその者の戦い方を表しているモノもある。
 翔の《縦横無尽》もそれに該当する。戦局を一振りでひっくり返しながら、果てを行き交う様を表している。
 黒の《難攻不落》も同じである。たった1人であっても、戦局を変化させる事が出来る。
 さらに、落城寸前であってもその城や防衛線は崩れはしない。
 どんなに強固な拠点であっても、黒の進む道筋を妨げる事は出来ない。

 皇帝の持つ力を最も簡単に示す。倭を囲む異形が軒並み殲滅される。
 後に残るは、灰が空を舞う幻想的な光景だけであった。

 「終わった……全部、だ」
 『――肉体の《負荷》を《魔力で相殺》する。相変わらず、膨大な魔力量に言わせた危険な戦い方だな。こっちがヒヤヒヤする』
 「よく言うぜ。その魔力の源は、誰だ?」

 黒竜が空へと吠え、鉛色の空を魔力の余波で吹き飛ばす。
 晴れ晴れとした青空の下で、結界が解かれた倭から一人の女性が黒の下へと駆け寄る。
 栗色の髪を靡かせ、まだ異形が残っている可能性や危険性などお構い無しに黒へと抱き着いた。
 2年――。2年と数ヶ月の時間を経て、黒と未来はようやく互いを抱き締める事が叶う。
 未来の後を、白達十二師団長が暖かく見守る。碧、茜が梓の側に寄り添いながら兄と義姉の再会を見守る。

 「ホント、最高……2年ぶりの再会。二人共、絵になる」
 「そうね。ここまで、長かったから――」

    翔が指で構図を取りながら、隣の白とここまでの長い道のりで味わった苦痛を思い返す。
 涙を流して、未来は黒を強く抱き締める。もう二度と失わないように――
 黒の領域から、ボロボロのボロ雑巾と化したトレファを雑に引きずって、ハートが顔に付着した血液を袖で拭いながら現れる。
 返り血と思われるその血を拭ってから、黒の下へとトレファを乱暴に投げる。
 ボロ雑巾のトレファの肉体は、八雲の再生が行われていない。

 「感動の再会……。その邪魔して悪いけど……後で、コイツを八雲の魔力で再生させる。その後は、黒に任して良いよな?」
 「あぁ、ありがとな。コイツは俺が、片付ける」

 未来から離れて、地面に倒れるトレファを睨む。
 正面のハートが投げ渡してきた八雲を黒は片手で受け取ろうと手を伸ばす。
 ――が、2人の間を通り抜けた人影によって、八雲が奪われてしまう。
 黒、ハートの2人が瞬時に反応し、八雲を奪った人影に躊躇う事無く全力で攻撃を叩き込む。
    しかし、2人の叩き込んだ筈の・・拳から血が流れ、顔を苦痛で歪めたハートに、黒が魔法による治療を施す。
    2人の前で、純白のコートに身を包まれた人物が姿を現して、黒がその者を視界から逃さないように臨戦態勢を取る。
    コートの人物の後ろに、仲間と思われる人物2人が遅れて合流する。
    一人の横には、ボロ雑巾のトレファの姿があった。
    油断していたとは言え、黒とハートの2人を出し抜いてトレファと八雲の2つを奪って見せた。

     前方の3人組を睨みながら、2人は――息を吐く。

    中央の八雲を手にしている人物は、2人と同等かそれ以上の実力を有している。
    それは、この場合の全員の首筋に刃が突き付けられている事を表している。

    出し惜しむ事は、死に直結する――

    黒、ハートの2人が全身に魔力を巡らせ、魔物の力をその身に纏う。


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