難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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死に勝る敗北

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 黒、ハートが魔物の力を纏う。
 一挙手一投足、その全てが死へと直結する。
 もちろん、油断など許されない。1秒の遅れ、思考の遅れが命取りになる。
 黒、ハートは分かっていた。長年の騎士、皇帝としての経験から――が、僅か数秒だけ動きが止まる。
 踏み込みの足が止まり、体から力が抜ける。
 敵の攻撃ではない――。正面の敵性存在、その者が顔を隠していたフードを取ったからだ。
 素顔を晒した程度で動きを止める訳がなかった。ただ、相手が相手であった。
  そのフードの下の素顔を晒す行為1つで、黒の動きを停止させるには充分過ぎた――

 「お前、は……」
 「おい、何の冗談だよ。コイツは……」

 黒、ハートの目の前で、顔を覆い隠すその真っ白なフードを取る。
 どこにでも居る顔で、特に魔法を使った訳では無い。
  ただ、素顔を晒した。普通の黒髪、イケメンの分類に入れられる整った顔立ち、最も特徴的な片耳のピアス――
 その黒髪を2人は、覚えている。否、忘れる筈はない。
 共に切磋琢磨し、共に騎士の最高峰を目指して走り出した――友人であるから。
 男は、ピアスを揺らしながら、黒、ハートに笑みを向ける。
 硬直した黒、ハートを見て釣り上がる口角が押さえられない。

 「本物……か?」

 ハートの問い掛けに、男は嘘など付けない確固たる証拠を提示する。
 それを見て、黒は完全に心が――砕けた・・・






 「天地、とどろけ。――《アルファカイウス  》」







 男の背後から、巨大な十字架を背負った。痛々しいまでに縫合の痕が残る化け物が現れる。
 真っ白な長髪を揺らしながら、顔の皮膚は無く。
    一部の肉が顔に残るだけの半分骸骨、半分肉というおぞましい顔の魔物ギフトが男に呼ばれる。
 両手両足に鎖が巻き付き、動く度にジャラジャラと音を上げる。
 ボロ布1枚を腰に巻いて、十字架を背負った魔物が吠える。

 「さぁ、力を解き放てよ……黒――」
 「何の冗談だよ……どうして、生きてる。いや、生きてるなら、何で……何で、連絡の1つもしなかったッ!!」

    黒が声を荒げる。
    ハートも困惑して、戦闘どころではない。もちろん、黒などまともな精神状態ではない。

 「なぜ、黙ってたか……か。それは――お前を、殺す為だ」

 男の指先が黒の胸を狙う。
 魔物アルファカイウスの開口部から放たれた魔力のレーザーが黒の肩を貫く。
 寸前で避けて、致命傷は避ける。僅かでもタイミングがズレていようものなら、今の一撃で黒は終わっていた。

 「流石は、黒だ。そうじゃなきゃ……ちっとも、楽しめない」
 「どうして、生きてる。どうして、戦う。どうして……」
 「どうして? 簡単だ――」

 男の後ろで、同じくフードを取った2人が黒、ハートの前に立った。
 この男同様、後から顔を晒した2人にも黒とハートは面識があった。
 ハートよりも、黒はその者達の顔を忘れはしない。
 決して、忘れてはならない。
 それが、黒にとって《呪い》でもあり《覚悟》でもあった。
 だが、その覚悟はこの日崩れた。
  驚きと悲哀の表情を隠す事無く。ぐちゃぐちゃの表情に髪をぐしゃぐしゃに掻いて、その現実から目を背けようとする。
  何せ、敵として眼前に立っている者達は、黒にとってかけがえのない者達であったからだ。
  もはや、黒は剣を取る事は出来ない。心の不安定さに拍車が掛かる。


 かつての同胞を前にして――


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