難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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新章 序章は終わりを告げる――【佇む『観測者』は、脚本を綴る】

王ではなく。友として《Ⅰ》

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  黒が、珍しくデスクに座って、パソコンで送られたデータを睨む。
  書かれている内容を流して、椅子の背もたれに体を委ねる。
  椅子がギシギシと音を奏で、天井を見上げる。
  開かれた窓から風が吹き抜けて、カーテンがフワッと揺れる。

  「何だよ……何か言いたげだな? バハムート」
  『むぅ……宿主マスターなりの考えがあっての人選何じゃろ? なら、文句はない……』
  「ありそうだが?」
  『……お前の事が、キライになりそうだ』
  「なら、好いてくれている間に……色々終わらせとくか」

   パソコンのデータと共にメールを送る。宛先は黒の少ない友人の一人へ。
  データの中身は数枚の写真。きっと、ハッキングでデータの中を見られたとしてもバレて困る物ではない。
  メールの文章も同じくバレて困る物ではない。ただ、一言添えてあるだけだ。

  ――今から、遊びに行く。

  テーブルに置かれていた携帯端末を手に取って、黒は誰かへと連絡を入れる。
  端末の向こう側で誰かが慌ただしく動いているのが声だけでも分かる。
  本来の姿とは別の人型として顕現しているバハムートが、白色のワンピース1枚の薄着でソファーに寝そべる。
  風が髪を揺らし、青い瞳が空を見詰める。








  倭の中央に建てられた巨大な大学病院のエントランスで、黒は両隣の妹達に動きを制限させられていた。
  事の発端は父親である竜玄りゅうげんが、うっかりみどりあかねあずさの居る前で黒が黙って倭から立ち去ろうとしている事を口にしたからであった。
  その結果、梓の指示と計画によって黒が倭を立つ前に身柄を抑えられた。
  そして、家族が揃ってある場所へと来ていた。

  「……見舞いなら、全員で来なくて良いだろう。かえって迷惑だろ?」
  「だから、1人で先にお見舞いを済まして、早々に四大陸に向かうつもりですか? 兄さん……」
  「そうそう、2年ぶりにみんな兄妹が揃ったんだよ。お母様もきっと喜ぶもん!」
  「……喜び過ぎて、ぶっ倒れるに金賭けて良いぞ」

  3人の前に女性が近付く。白色の髪を揺らして、女の子らしいヒラヒラとしたワンピースに腰に赤色のリボンを巻いた橘白がバックから端末を取り出して、梓と再び連絡を取り合う。
  この病院の患者の1人に、黒達の母親がいる。2年前の大規模作戦によって命を失ってしまった白や傷付き倒れる黒の背中を見て、精神的に追い込まれた。
  帝国大竜牙帝国では、その精神的トラウマが呼び起されると危惧して、この倭で療養している。
  そして、今日――2年ぶりの親子白と母の再会が計画されている。
  黒が力を取り戻した事は、既に魔力で分かっていると父親から告げられており、少し機嫌の悪い黒の頬を白が引っ張る。

  「そう言う所が、まだ子供よね。……未来ちゃんを任せて、大丈夫かしら?」
  「……このまま、入院患者の仲間入りさせてやろうか?」

  こんな病院の中で、喧嘩を始めようとした黒の頭を梓の扇子が――ピシッ――と、振り下ろされる。

  「ここは、病院です。お静かに、それと……碧、茜、白。私の後ろに」
  「「「ハーイ」」」
  「……俺は?」
  「……隣でいいでしょ」
  「雑だな~……」

  梓の後に付いて行って、母親の病室へと向かう。既に部屋の前で藤乃ふじの文乃ふみのの2人が立っていた。
  部屋に入るのを躊躇っているのか、少し困惑した表情で梓に助けを求めていた。

  「2人共、入らねーのか? ……なるほど、兄貴か?」
  「「……ハイ」」

  梓達が部屋を恐る恐る覗くと、黒や白達の父親である橘竜玄たちばな りゅうげんがベッドの横で正座していた。
  黒と似た黒髪の父親が病室の中で正座していると、まるで黒が正座しているみたいであった。
  それ故、隣の茜が黒に耳打ちする。
  ――隣で、黒兄くろニィも正座したら? と、少し小馬鹿にする様に笑いながら黒の頬を人差し指で突っつく。
  鬱陶しい事、この上ないが……竜玄の隣で既に正座している長男の姿を見て、全員が何で母親の病室で正座しているのか分かる。

  「……ナース、手を出した口説いたみたいだな。バカか……」
  「昔の竜玄息子を見ているみたいね。はぁ、頭が痛い」
  「梓ちゃん、親子ね。灰がチャラいのは、父さん似よね」
  「黒兄もチャラくなったら、面白――いや、楽しいよね」
  「茜、兄さんで遊ばない。それと、チャラいのは2人だけで十分よ」

  病室の前で黒、梓、白、茜、碧が喋っていると病室からフォークが投げられる。
  そのフォークを黒がノールックで掴み取り、余裕の笑みを浮かべる。
  が、指が音を響かせると同時に、フォークに仕込まれた術式が黒の指先から脳へと電流の様に走る。
  痺れた黒が病室へと倒れる。

  「碧、茜……こっちへ、いらっしゃい」

  優しい母の声だった。しかし、2人の目に入ってきたのは、笑みを浮かべつつもその奥は怒っている。
  そんな母、《橘薫たちばな かおる》の笑みであった。

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