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新章 序章は終わりを告げる――【佇む『観測者』は、脚本を綴る】
その手に魂を《Ⅰ》
しおりを挟む黒、ハート、ローグ、トゥーリ、ガゼルと共に四大陸へと渡る話は、未来も聞いている。
詳しい詳細ははぐらかされたが、未来は知っている。
黒が何かを意図的に話をはぐらかせるのは、自分や大切な者達に影響牙及ぶ可能性があると言う事に。
「食べ物とかは、あっちで良いかな?」
夕飯の買い出しに市場に来ていた未来が、辺りを見回す。
人で賑わうこの市場を見て、脅威が去った事をより強く実感する。
ふと、市場の奥から歓声の様な湧き上がる声が聞こえる。
未来が顔を人の波から顔を覗かせると、巨大なテーブルに積まれる完食した大皿や鍋などの食器。
店の奥から次から次へと運ばれる料理が、テーブルに座る彼女の胃の中へと消える。
「おかわり、下さい」
「「店長ーッ!!」」
厨房の奥で人が倒れる音が聞こえ、これ以上のおかわりが来ないと知るとフキンで口を拭いて彼女は立ち上がる。
豊満なバストが揺れ、水色の短髪とボーイッシュな服装の彼女と未来は目を合わせた。
「――未来ちゃん!」
「――心ちゃん!」
店員にお金を渡して、服などの入った買い物袋を片手に帰路へと向かう未来と心が仲良く話し込む。
同じ養成所の出身で、王の世代である2人――
2年ぶりのショッピングを堪能して、互いに2年ぶりの再会に堪らず笑みが溢れる。
そして、未来の知らない情報を心が持ち出して、心を連れて未来は黒の元へと向かう。
母親の見舞いから帰ってきて、紺色の袴に着替えた黒がジュラルミンケースにしまってあった銃やナイフなどの装備の点検をしている。
その黒へと未来が食い気味に尋ねた。
「……どういう事?」
「ん? あぁ、心から聞いたのか……そのまんまだよ。心も四大陸に連れて行く」
「心ちゃんは、倭でもイシュルワでも無い。心ちゃんと一緒だと、心ちゃんの所属する国にまで影響が出ちゃうよ」
「それは、心配しないで……私の所属は《グランヴァーレ》だから」
心が胸に手を当て、自分の所属する国が既に争いの渦中だという事を告げる。
そして、黒の狙いが自然と読めた。
「……心ちゃんを利用して、ルシウスくんをぶつける気?」
「まさか、ただ……友人として心を国に送るだけだ。それに、ルシウスがイシュルワを攻撃するかどうかは、本人次第だ。心を利用する気は更々ない。まして言えば、俺1人で事足りる」
「ふぅー。俺1人で事足りる。カッコいいやん」
「心、バカにしてるだろ?」
藤乃、文乃から渡された木箱から《篭手》と二刀一対の銀装飾が施された《直刀》を黒は手に取る。
忍びが身に着ける黒色の篭手とは対象的に、直刀は豪華でまるで祭具のようでもあった。
「……それって、黒ちゃんの?」
「確かに、学生の頃は持ってなかったよね? 新しく用意したの?」
「コレは……梓から預かった大事な物だ。……ホントに、大事な――」
黒が、梓から武具を受け取る数時間前――
薫に行ってくるとだけ告げて、病室から1人出ていく。
白、碧達が黒に考え直す様に言い寄るが、梓が2人に手を出して静止させる。
「黒の覚悟を薫さんも私も理解した。これ以上の文句は、許しません」
「では、梓様は……黒を本当に行かせるつもりですか?」
「えぇ、薫も私も覚悟は出来ている。それに、ただ行かせるつもりは毛頭ない――」
「「え――!?」」
白だけでなく黒もまた同様なリアクションをして、黒の首を使んで梓が開いた《空間魔法》の入口への黒が投げ入れられる。きっと、2人で帝国へと向かったと推測される。
残った白が、碧、茜の3人で病室へと入る。黒の前で凛々さを一生懸命保っていたが、薫が三人の顔を見て途端に泣き崩れる。
白が戻ったのに、今度は黒が居なくなる予感がした。その事に、薫の心は酷く苦しめられた。
碧、茜の2人が両隣から母親を抱き締める。病室から出て、扉の前で無言を貫いた竜玄が白へと指摘する。
「――殺気が漏れてるぞ」
「……黒が覚悟を決めた。なら、私は黒の代わりに――家族を護る」
「逞しいな……それで、どうするんだ? 頼る相手はいるのか?」
「……うるさい」
髪を靡かせながら、白は別の入院患者の元へと向かって行く。
その後ろ姿を眺めながら、我が子の成長を実感して少しウルッと来た竜玄が、年老いて涙もろくなったのを痛感する。
そんな事を考えていると、ポケットの端末が振動する。
メール宛先が梓だと分かり、黒と共に帝国へと向かった梓からの連絡であればその要件も安易に予想出来た。
「……たく、行動力だけは現役だよな」
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