146 / 231
1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】
不安
しおりを挟むハート、黒、ルシウスの3人がバーの個室に集まる。
「久しぶりだね……ハート君」
「あぁ、ルシウスは……変わらんな」
「そんな事はないよ。ただ、変化を恐れているだけさ……」
「ルシウスは、変わらなくて良い筈だ。俺やハートと違って、平和を望んでいる。悪いな……イヤな役目を背負わせて」
黒の言葉をルシウスは、首を横に振って返す。
グランヴァーレの避難民を受入てから、直ぐ防衛拠点として部隊を編成し、イシュルワ軍を数回追い返している。
周辺都市は既に占拠され、ビフトロ以外のグランヴァーレ領地はイシュルワの手が掛かっている。
「なら、他の都市を回って奪還しながら……イシュルワを目指す方がいいか」
「イヤ、他の都市の解放には僕が動く。それに、ローグさん達は、本国でやるべき事がある筈だ」
黒の提案をルシウスは断って、真っ直ぐイシュルワへと目指す事を提案する。
しかし、それではルシウス達ビフトロの守りが甘くなる。
既に、ローグ、トゥーリ、ガゼルの3人の皇帝がビフトロに滞在している。
イシュルワにとって、彼ら3人は本国の怨敵としての認識が強い。
その上、黒、ハート、未来の3人も加わって全軍投下してでもお釣りが戻ってくるほどの好機である。
その状況下で、6人がイシュルワを目指せば倭と四大陸を唯一繋げる《ビフトロ》と言う拠点を失う。
そうなれば、地理的に挟み撃ちを食らう可能性も高い。
「いえ、行ってください。ここは、私達が必ず守ります――」
扉が開かれる。バーの個室へと屈強なボディガードの共に、杖を手にした少女が黒達の前に姿を現した。
別れた後からしばらく経っているので、彼女の雰囲気の変わり様に驚かされた。
「イオ・グランヴァーレ――。少し、大人びたな」
「ここでの生活は、今までの私に無い物をくれました。人と人との繋がり……恐怖と絶望の中でも諦めない強い心。そのすべてをルシウス様から教わりました」
「イヤイヤ、そんな対した事はしていないよ。みんなの心の支えになったのは、イオ様の献身的な行動の賜物……僕は、守る事しか出来ていない」
イオの子供や怪我人に対する。献身的な言動によって、ビフトロへと避難したグランヴァーレの者達や周辺都市の避難民は少なからず救われていた。
現状の自分に出来得る限りの事を率先して行い、絶えず誰かを励まし続けた。
彼女の行動が引き金となって、多くの者達がビフトロの防衛に力を入れた。
その結果、今日までビフトロが残り続けた。ルシウスのような力が無くとも人は立ち上がる事ができる。
国を守り、大切な者達を守る事が出来た。
「ルシウスとイオの2人が、頑張ったから……今がある」
「2人だけじゃないだろ……グランヴァーレとビフトロのみんなが頑張ったからだろ? 黒――」
ハートが、グラスの中にあった酒を勢い良く流し込んで隣の黒が黙々と食べていた刺し身を奪う。
イオが広場で炊き出しがあると言って、ルシウスを除く3人が広場へと向かう。
炊き出しの匂いが黒とハートの空腹感を刺激する。
大勢の人で集まる炊き出しの会場で、よく見ると未来と心の2人が手伝いをしていた。
「あっ――。2人共、温かいご飯だよ」
「エプロン借りて、炊き出しの手伝いか?」
「流石に、何もしないってのはね……それに、心ちゃんやトゥーリさんが手伝ってるのを見て、自然と動いたの」
「そうか、そう言えば……アイツらの姿が見えねーな」
「ローグとガゼルか? どっかでこき使われてる筈だ。2人共、じっとしてる柄じゃないだろ?」
「うん。多分だけど、防衛強化がどうとかで……砦の方にいるのかな?」
「何の話? 私とルーちゃんも混ぜてッ!」
「あっ、危ないよ。心ちゃん」
黒、ハートと楽しく喋る未来の3人の輪の中に、ルシウスと心が加わって先程の侵略行為の雰囲気を吹き飛ばすように5人は笑う。
遠目から大勢の人の笑い声を聞いて、イオが自分の守るべき者達の笑顔を目に焼き付ける。
イオの隣に、ローグが歩み寄る。ボディガードから少し距離をおいてローグが尋ねる。
「不安か……?」
ローグの質問を肯定し、震える手を握りしめる。
必ず、もう一度イシュルワ軍は攻めて来る。黒達が不在のビフトロを守る事が可能なのか。
イオの心中を不安の渦では荒れていた。
だったが、隣のローグがルシウスの事について思った事を述べた。
「……俺は、黒とハートの強さを知っている。とは言っても、養成所出身じゃない。ただの同世代の一人だからな、出会ったのも遠征に参加した時の数回程度……。だが、その強さは伊達じゃない。それは、ルシウスも同じだろうな」
「……根拠でも、あるんですか?」
「根拠か……難しいな。ただ、強いのは確かだな。アイツらの隣で生き残った化け物の1人だからな――」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる