難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

文字の大きさ
153 / 231
1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】

怪物《Ⅱ》

しおりを挟む


  ウォーロックが冷や汗を流しながら、建物のエレベーターを使って別の建物へと移る準備に移る。
  兵士からの連絡では、上からハートが、下から黒がこちらへと向かっている。
  どいう訳か、ウォーロックの位置が2人から丸見えで幾度と漏れ出る魔力を隠蔽しても位置を特定されている。

  遠く離れても黒が発している《恐怖》が、全身に纏わり付いて震えが止まらない。
  イラ立つウォーロックが杖を叩き付け、部下に時間稼ぎを命じる。
  数秒でも稼げれば申し分ない時間稼ぎではあるが、行わないに越した事はない。
  皇帝エンペラー大公マイスターも総動員して、自分の逃げる時間を稼ぐ。
  とびっきりの切り札があるとは言え、使わない方が断然良い。
  使い物にならないカス共に比べれば、切り札1つで黒とハートは倒せる。
  とは言え、1機造るのに相当な金額と資材・・を投じた。出来得るならば、使いたくはない――
  そこで、ウォーロックは次の一手を講じた。

  「ヘルツ、ハートを始末・・して来い。コレは、命令だッ!!」
  「……」
  「逃げたければ、逃げろ……そうなれば、下層部のガキ共・・・・・・・はどうなるかな?」
  「……ッぅ……ッ―― 」

  ヘルツが停止したエレベーターから降りたウォーロック達とは別方向へと向かって行く。
  唇から血が出るほどに、悔しさと怒りを噛み潰したヘルツの顔は鬼のような形相であった。
  しかし、ウォーロックはヘルツを恐れる事はあれど、害をなす事はないと知っている。
  黒やハート、ルシウスのようにヘルツにも弱点かあった。触れられたくない自分の命よりも大切な心臓・・をウォーロックは握っている。
  それ故、ウォーロックは黒、ハートから勝ちを掴み取る自信があった。

  弱者が強者に勝つには、強者が触れられたくない分部に触れる事が最も簡単である。
  その部分を使って、利用し、揺さぶり、言葉巧みに操る。

  「強者とは、言葉にすらできない優越感の塊だ。……格別だ」

  ニタニタ――と、笑みを浮かべる。ウォーロックが離れた別の建物へと向かうその道中で、迎えとして派遣されたクラトが見えた。
  元々、晩餐会に出席する手筈だった為か衣服は正装であった。

  「貴様、逃げておったのか?」
  「いえ、逃げてはいませんよ。ただ、晩餐会の途中で席を立つには……速すぎませんか・・・・・・・?」
  「……この展開は、お前の描いたシナリオ通りか? クラトッ!?」

  ウォーロックの怒り顔を見て、クラトは思わず――プッ――と、吹いた。
  堪え切れず、笑いが溢れてしまった。
  作戦が失敗し、財を投げ売って雇った者達が軒並み使い物にならなかった。
  その事に、クラトは笑ったのだ。

  「知ってましたよ。始めから、彼らに通用しないって」
  「なら、対策の1つや2つぐらい出して見せろッ!!」

  杖で床を思いっきり叩く。
  ウォーロックの怒り様を見て、クラトが溜息を溢した。
  ウォーロックの元で働く者達が不憫で仕方がない。この様子では、黒やハートの実力を目の当たりにしても自分の勝ちを確信していた筈だ。
  例え、多くの皇帝を従えていても、その純度はとても高いとは言えない。
  ――低い。質が低いと言う言葉が、彼らには当てはまる。
  建物上部のハート、下部の黒の実力を目の当たりすれば、彼らでは立ち塞がるこ事すら敵わないと分かるレベルである。

  それほどまでに、研鑽してきたレベルに差があった。
  その上、当然の如く。場数も死線の数も大きく異なる――

  本物の皇帝は、異形以外・・・・の戦い方を知っている。

  「――ん? おっと、彼女・・なら……あるいは」

  クラトの魔力感知に反応したのが、ハートの元へと向かう1人の女性――
  イシュルワの皇帝――《ヘルツ・アウター・ヴァイン》であった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...