難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】

反逆の狼煙《Ⅰ》

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  下層部の人間が、下層部の監視室を占拠した話を受けて、ウォーロックはお抱えの治安維持部隊を派遣した。
  銃口を向けられても、彼らは狼狽える事無く。突き進むので、腕や足などの急所を避けた発砲で暴動を先導した者や参加者を連行した。
  下層部の牢屋では、また暴動が起きた際に開放されると危惧して、地上の牢屋へと移送される。
  暴動、とは言え。ウォーロックにとって、彼らは貴重な労働資源である。
  ただの暴動1つで、失うにはあまりにもデカイ出費である。

  「下層部の暴動は、黒竜帝の仕業かね?」
  「いえ、黒竜の反応こそありましたが、暴動との関連は無いと思われます。下層部を見回った兵の報告で、武装していた事に目を付けられた。と話しております。その武装を奪った為に、今回の暴動が起きたと言っております」
  「……なるほど、下層部の見回りの人数を増やす様に言っておけ。それと、武装は奪われないように気を付けろ。怪しい奴は、殺さない程度であれば銃の使用を認める」

  ハッ――と、短く敬礼した軍人が去った後の執務室で、ウォーロックは報告書をビリビリに破り捨て、テーブルに積まれた書類を邪魔だと言わんばかりに床にぶちまける。
  イラ立ちを抑える為に、テーブルや飾られた絵画や高価な花瓶などを破壊する。
  杖で叩いて、物を倒して、椅子を窓から投げ捨てる。

  「……皇帝共を呼べ。大至急だ」

  端末を開いて、イシュルワの最大戦力を下層部へと突入させる。
  イシュルワの殆どの騎士が下層部へと降りる。
  その中に、ヘルツとティンバーの姿もあった。
  だがしかし、トタン住居内や下層部の隅から隅まで捜索しても黒の魔力の痕跡はあれど、姿形が見当たらなかった。
  捜索の指揮を任された男がイラ立ち、近くの部下や建物に当たり散らすのを下層部の面々は恨むように見ている。

  「……行くぞ。カス共の臭いが染み付く」

  数日に分けて大捜索が行われたが、何一つ手掛かりはなく。最終的な判断は、地上へと姿を眩ませたと言う判断に決まった。
  大勢の騎士を投入しても発見に至らなかった事に、腹を立ててウォーロックはある場所へと向かう。
  そこは、厳重な警備で守られた牢屋であった。多くの部下を引き連れて、警備が震えるその部屋の扉を開けさせる。

  「……せ、接触はお控えください……どうか、どうか」
  「分かっている。お前達も中に入れ――」

  中は牢屋と言っても他の牢屋は異なって、まるでホテルの1室のようであった。
  牢屋に似付かわしくない、メイド服を着せられた女性が2人。壁際で固まっている。
  発せられる男の魔力に当てられ動けないようにも見える。
  警備の者達やウォーロック自身ですら、その男の魔力に尻込みする。

  「魔力を……抑えてくれんか? 何、取って食おうとは言わん」
  「まぁ、そうだろうな。食われるのは、お前の方だからな――高齢者」

  ウォーロックが杖を両手で握り、男の向かい側に座る。
  何処で傷の治療を受けたのだろうとは見れば分かる。だが、顔の包帯は未だ取れない。
  クラトに紹介された時は、何処かの誰かと激戦を繰り広げたかのような痛々しい傷があった。
  そんな傷も数日程度で綺麗に完治している。

  多くの傷を負っていた時よりもマシにはなっている。それゆえ、ウォーロックは男の顔は知らない。

  その上、名前も知らない――

  ただ、クラト曰く。――強い、との事であった。
  だから、機嫌を損なわないように豪華な部屋に若い女を2人付けた。
  だが、眼の前の男は以前と魔力を放っている。震え上がるほどに、皮膚を突き刺す鋭利な魔力が痛い。

  「用件は、何だ? 外は、やけに楽しい・・・パーティーの最中のようだが?」
  「いや、パーティーはパーティーでも……何処からか、小汚いネズミが入り込んでな。今は、それ所じゃない。小汚い2匹が……な」
  「……へぇ、なるほど」
  「それよりも、酒などはどうだ? イシュルワ1の高級酒だ。それに、若い女達は気に入ったか? 言えば、どちらも用意する。ただ、条件があっ――」

  ウォーロックの言葉を最後まで聞くよりも先に、男が条件を口にする。

 「――俺に、黒竜バハムートを殺せ。とでも言うつもりか?」

  男の鋭い眼光に、ウォーロックに激震が走る。

  クラトから聞かされたのは《強い》と《危険》の2つだけであった。

  強いのは一目みて分かる。だが、どう言った事で、男の地雷を踏み抜くかが分からなかった。
  それ故、ウォーロックは男の機嫌を損なわないように言葉を選ぶしかなかった。
  包帯で表情も読み難く。酒も女も未だに手は出した痕跡すらしない。
  男であれば、飛び付いて喜ぶ筈のご馳走・・・を前に、男はただ黙ってこちらを見ている。

  (この男、何なんだ……一体、何者なんだ――!!)

  現状ですら、自分の思い描いた通りに事が進まず。腹を立てているのに、さらに事が上手くいかない。
  だが、ウォーロックに希望の光が差し込んだ。

  「そうだな。そこの女も良いが……クラト、だったか? アイツの連れていた2人の女が欲しいな。当然、俺の物にする……丁寧に扱えよ――?」 
  「も、もちろんだとも……すぐにクラトが連れていた女を呼ぶ。しかし、あの女共もクラトの大切な物でな……他の者達で――」

  ウォーロックが笑みを浮かべて、他の女に変えるように助言するも、部屋の窓が一瞬で消し飛ぶ。
  テーブルの上に置かれた高級酒の飲み口が指先一つで開けられ、ウォーロックの頭にその中身が注がれる。

  ビチャビチャ――と、アルコールが床を濡らす。
  頭、衣服、ソファーが酒によって濡れる。

  「お前が、俺に意見するなよ?」
  「……」
  「クラトの近くに居る女を2人、俺の下に連れて来い……余計な知恵は回すな。少しでも異変を覚えたら、即殺す。――いいな?」

  グチャグチャになった部屋から男は退室し、別の部屋へと案内される。
  その際に、ウォーロックが用意したメイド2人と高級酒を持って出て行く。
  部屋に残されたウォーロックが当たり散らし、ストレスが頂点まで達する。


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