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1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】
反逆の狼煙《Ⅱ》
しおりを挟むクラトの元に、ウォーロックの兵士が真っ青になりながら用件を伝える。
兵士にとって、ウォーロックからの無理難題よりも目の前のクラトとに用件を伝える事の方が難しく。
生きた心地はしなかった――
「あぁ、彼から……彼女達を渡せだったかな? うん、構わないよ。元よりそのつもりだ――」
兵士の驚きよりも先に、部屋の奥から出て来たやたらと不機嫌な女性にメイド2人を付けて、用意したドレスに着替えるようにクラトが命じる。
「少しは、綺麗にしておこう……彼の為にもね」
「へぇ、誰かも知らない男の為に、私達に綺麗に着飾れって言うのね……ムカつく。絶対、殺してやる」
「ミシェーレさん。私達今は、人質ですよ。少しでも逆らったら、殺されちゃいます」
「良いわよ……返り討ちにしてあげる」
握り拳を作るミシェーレを見て、困惑するエヴァを見て、クラトが微笑む。
テーブルのワインを喉へと流し込んで、グラスを空にする。
仕切りの向こう側で、女性4人がドレスの着替えをする。しばらくして、やはり女性らしく綺麗なドレスに嬉しそうな声がする。
だが、ソファーから立ち上がったクラトが、扉の向こう側から聞き慣れない足音が聞こえて、兵士に警戒するように告げる。
「4人とも、動かないで――」
クラトの呼び掛けに、エヴァとミシェーレが思わず体を硬直させる。
扉が開かれ、外で待っていた兵士を惨殺した男が、部屋へと侵入する。
衣服は土や泥で汚れ、不気味な顔は狂喜に歪んでいた。
「……キャロン・アッシム、この部屋に立ち入るな。2度は、言わないよ?」
「……俺は、強くなくちゃ……ダメなんだ……」
うわごとのように、ブツブツと同じ言葉を繰り返す。やたらと不気味で、以前のような面影は完全に消えている。
そして、目の前の兵士を邪魔だと言わんばかりに壁際でまで蹴り飛ばす。
クラトが動くよりも先に、仕切りからこちらの様子を見ようと顔を出したエヴァの腕を掴んで、部屋の隅へと移動する。
「クソッ!! ……キャロン……以前、忠告はしましたよね? それは、覚えていますか?」
「黙ってろ……俺は、強くなる。女も、酒も、命も俺の思うがままだ。その為に、俺は強くなくちゃいけない……」
キャロンの手にしたナイフが、エヴァの喉元に突き付けられる。
涙目のエヴァが、ミシェーレへと助けを求める。しかし、動こうとしたミシェーレとクラトを前に、キャロンは目にしたナイフでエヴァのドレスの胸元を切り裂く。
エヴァの悲鳴が室内に響く。メイド2人が思わず目を背け、クラトが蔑むような目をキャロンに向ける。
「軽蔑しますよ。キャロン・アッシム……国の皇帝であるアナタが、たった1度の敗戦でここまでクズに成り下るとは――失望しましたよ」
「うるせぇ……俺は、偉いんだ。強くて、偉くて、誰よりも王であるべき人間だッ!!」
エヴァの可愛らしい下着姿の肌に、キャロンの手が伸びる。
エヴァの目から涙が溢れ、堪らずミシェーレが動く。
キャロンがそれを待っていたかのように、ナイフをミシェーレへと向ける。
――が、風景が一変した事に彼は、気付いた。
ホテルの室内であったのに、キャロンは屋外に立っていた。
そして、それに気付いた1秒後に――右斜に振り下ろされた拳が頭蓋をグチャグチャに砕き、脳、眼球、顎が地面に縫い付けられる。
「はてはて、許し難いほどのクズが……私の妹に触れるな――」
男が、顔の包帯を苦しかったのか早々に取って捨てる。右腕の肉片や血液を払ってその場を後にする。
拳一発で、地盤が大きく陥没している。その中央には、頭部が消えた男と思われる遺体が残っているだけであった。
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