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1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】
激震轟く《Ⅱ》
しおりを挟むハートの一撃一撃を躱し続けるエドワードだったが、次第にその動きのキレが落ち始める。
一撃、二撃と漆黒の稲妻をモロに食らっている。生半可な防御ではその衝撃と威力は防ぐ事は出来ない。
それを知っている上で、ハートの漆黒の攻撃を防ぐだけでなく受け流し、カウンターの選択を選んだ。
(2発、か……時間をかけ過ぎると、影響が色濃く出てくるな――)
現在のエドワードに、ハートの全力攻撃を防ぐ事は不可能。まして言えば、漆黒の攻撃など防ぐ前に沈む。
ハートの魔力量は常人よりも少し多いレベルであり、エドワードとはほぼ同量である。
だが、量や質などが幾ら似ていても両者には、埋まらない絶対の差という物が存在する。
それが、《出力》――
それは、魔力量や濃度、漆黒の魔力などの練度などで大きく破壊力が変わる事はある。
そして、その者が扱った魔力に伴って発生する負荷とでも呼べるデメリットは大きく変わる。
魔力によって生まれた破壊力には、少なからず負荷が存在する。
負荷があるからこそ、高い出力の騎士は――諸刃の剣である。
その為、魔力の出力よりも安全な《魔力量》や《濃度》や《性質》などでその価値が判断された。
魔力量は、魔力の《多さ》である。
濃度は、魔力の《濃さ》指している。
性質は、 魔力の《練度の高さ》であり、漆黒はその最高到達点とされている。
出力は最もシンプルで、判断基準が分かり易い――
――破壊力である。
それが、ハートは異常なレベルに高い。
黒は、魔力量で数多くのデメリットや細かな条件などの拘束などの縛りを排除している。
その為、黒などの実力者は魔力などでその反動で抑えている。それが、普通である。
だが、元々の出力の高さが異常なハートは、魔力の酷使などで発生する筈の肉体的負荷が殆ど存在しない。
この世に生を受けてから、高い魔力出力に慣れた事で肉体へと受ける負荷にも強くなった。
それが、どれほどのアドバンテージなのか――エドワードは、この時点では知りもしなかった。
「……全力で、叩くぞ」
「それは、面白い。ならば、来い――ッ!!」
ハートの言葉に答えるように、2人の戦いを遠巻に見ていた兵士から安物の剣を借り受けて、エドワードが構える。
だが、ハートはエドワードの実力を知っている。
素手による格闘戦よりも、黒の妹である白のように武器を用いただけで、先程よりも数倍増しに強くなる者達がいる。
エドワードは、その分類に属する側の人物であった。
「……来い」
「――行くぞッ!!」
エドワードの構えを目にして、ハートが怒号と共に地面を蹴る。
地面を保護するコンクリートが剥がされ、周囲の建物が地震にでもあったかのように大きく揺れる。
エドワードの上段からの降り下ろし――。ハートの下段からの打撃――。その2つが衝突した。
イシュルワ全域に激震が走り、建物に亀裂や窓ガラスが割れるなどの被害が遠い場所でも起きる。
ハートの撃退を可能にする人物。顔を隠したあの男にウォーロックは依頼を出した。
依頼を出した本人もエドワードの事は顔を隠し、素性も一切知らない人物。
ただ、高い実力者と言う事しか知らなかった。
だが、これほどまでの実力者とは知りもしなかった。
「素晴らしい……素晴らしいッぞ――ッ!!」
その戦いぶりに歓喜し、手を叩くウォーロックがイシュルワの空で火花を散らし続ける両者の戦いを食いる様に見ていた。
その隣で、笑みを浮かべながらクラトが両者の戦いを見守る。
「さて、頃合いですかね……」
もう既に、観戦者となったウォーロックの事など放って、クラトがテラスから遠ざかる。
向かう先は、ある人物の待っている場所である。
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