難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

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1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】

炉の力《Ⅰ》

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  高濃度魔力領域内の魔力の約8割がその一撃に使用される。

  それほどの凄まじい一撃――

  言葉で、一言表すのであればその表現が正しい。
  ただ、人によって、その《凄まじい》の重さは違っている。


  「……スゴイな」

  思わず、遠くから見ていた暁とハートが、瓦礫を押し退けてその場所へと視線を向ける。
  辺り一帯が砂嵐に呑み込まれたかのように、一撃によって生じた砂塵が立ち込めている。
  半壊した建物、まだ無事であった建物。それら全てが、等しく瓦礫となって山となる。
  ローグの放った一撃が生み出した爆発的なエネルギーによって、イシュルワの下層部は完全に地盤もろとも崩れる。

  ポッカリと開いた巨大なクレーターの中から、黒竜と共に空へと舞い上がる黒――

  「……完全に、国を潰したよな」

  眼下に広がる瓦礫の山に、黒がその凄まじい魔力の余波を感じる。
  高濃度魔力が、ある人物を中心にして徐々に収まる。

  地面に大量の汗を流して、呼吸が粗くなり膝から崩れる。
  全身の魔力を1点に、凝縮しただけでも十分過ぎる程なのに、黒が展開した高濃度魔力領域内の魔力までも味方にした。
  その一撃は、黒でも扱える代物ではない。
  それを扱っておきながら、五体満足で生きているローグの肉体の頑丈な所が異常なのかもしれない。
  黒だけがローグの隣へと降りて、そろ疲れ切った体に僅かな回復を施す。

  「生きてる……よな?」
  「……ぁあ、少し……疲れた」

  黒竜が風を発生させ、砂塵を消し飛ばす。
  奥の瓦礫が僅かに動くのを感じ取って、ローグ、黒が臨戦態勢を取る。

  瓦礫の落ちる音の後に、全身血だらけで半身を焼き焦がしたウォーロックが潰れた片目で、ローグを睨む。
  この世のすべてを憎むような。そんな目をローグにだけ向けていた。
  満身創痍どころか、なぜ生きているのか不思議なほどの生命力のウォーロックを見て、黒が今まで以上に警戒する。

  ――皇帝でも、防ぐのは厳しい。

  その一撃を至近距離で食らって、半身損傷で生存している。
  そんな人間が、黒とローグの中で脅威として認識されない。そんな筈はない。
  先程までのような舐めた態度や油断した行動1つで、自分達の立場が逆転する。
  ウォーロックがそうだった様に、自分達もその可能性は十分にあった。

  「……さ……ん……が……」
  「「……」」

  ウォーロックの到底聞き取れない呪言のような言葉にすらも警戒しながら、黒とローグが間合いを測りながら詰める。

  次の瞬間――遠い地点から、瓦礫の落ちる音が響く。

  黒の後頭部を狙って、遠い場所から跳躍する人影に黒がいち早く気付く。
  その場で瞬時に姿勢を低くして、頭部を狙った蹴りを避ける。
  狂ったような表情に、焦点が合わない目――
  この国の兵士同様に、薬による強化を施したようにも見える。ただ、今までの兵士達とはその量が違ってすらも見える。

  「中毒か、お前は――」
  「ちゆうとぐ? こゃきゃははは!!!!」

  もはや言葉を交わす事すら不可能となり果てる。
  飛び掛かるキャロンへと黒がハイキックで迎え撃つ。その蹴りよって、頭蓋骨から鈍い音を響かせる。
  だが、折れ曲がった首や凹んだ頭部を揺らしながら、キャロンは起き上がる。
  魔力によって強化された蹴りを以てしてもキャロンは殺せない。
  凹んだ程度で、すぐに魔力が溢れて回復する。

  「魔力が、肉体の形を保とうとしてやがる――肉体、自らの自動再生か……」
  『むぅ、面倒じゃな――消し飛ばす、か?』
  「最悪は、だな……地面に縫い付けるとかもアリかもな――」

  猛攻を仕掛けるキャロンを軽くさばきながら、時間をかけながらゆっくりと治療され始めるウォーロックの姿を見て、黒が思わず舌打ちをする。
  速度では、勝るとも劣らないキャロンとでは油断は出来ない。速度だけでも相当厄介な相手である。

  だが、時間は掛けれない。

  僅かに反れた意識を突いて、キャロンの突きが黒の頬を掠める。

  「ヤッター、当たっ――」


  漆黒の魔力が、キャロンの目前で弾ける。
  高濃度な魔力によって、漆黒の魔力はより不気味な黒さを持って可視化される。
  先程のローグの渾身の一撃とは比べようがないが、それでもキャロンの顔に襲う衝撃は計り知れない。

  「――!!??」

  片目の眼球が飛び出し、鼻と歯は砕け上顎もぐちゃぐちゃになり。
  陥没した顔が目にしたのは、紫色の稲妻を目元から大気中に走らせた。
  バケモノの顔――

  キャロンの身に恐怖が駆け巡り、顔が完治しても――全身の硬直が解けない。
  体を縛る巨大な鎖が、地面に縫い付ける様に縛り付いて離さない。

  「――シッ!!」

  再び炸裂する魔力が、棒立ち状態だったキャロンの体をがれきの山の中へと吹き飛ばす。
  起き上がらないキャロンを横目に、治療を始めたウォーロックの下へと駆け出す。
  そんな黒に気付いて、怪物達を呼び寄せて、黒の相手をさせる。
  サイズは様々だが、異常な耐久性と数が脅威だと認識している黒が立ち止まる。

  「ふん! そのまま待っていろ。すぐに、回復して――相手をしてやる!!」

  黒へと叫んだウォーロックだったが、歳のせいなのかボケやすい。
  再び、ローグ・・・の存在が視界から消える。

  「……ゥ、ッ――!!」

  ローグが迫る。反応が遅れたウォーロックの顔を拳が捉えていた。

  魔力による強化はあれど、漆黒の稲妻は出ない。

  ただのパンチを魔力で僅かに強化しただけの攻撃――
  とは言え、ウォーロックの生身の肉体にパンチの衝撃が直に届いたのは事実である。
  治療が僅かに途切れ、横へとフラフラと動くウォーロックの隙を狙って、化け物達の隙間から跳躍した黒の飛び蹴りがウォーロックを瓦礫の山に叩き付ける。

  「ローグ!! 退いてろ!」
  「……いや、任せてねてられねーよ……」
  「全力の漆黒だぞ! 反動が抜けてねーだろ!!」
  「……やかましい。戦いに、集中しろ!!」

  瓦礫が2箇所で吹き飛ぶ。
  肉体を完全に化け物と化したキャロンが雄叫びを上げながら、黒へと迫る。
  脇へと詰めたローグの魔力攻撃が、肉の鎧を貫いてキャロンに内部へと到達し、内側からダメージを与える。

  ギャオオオオオ――!!

  口から大量の血液を吐き出して、崩れる肉片の隙間から僅かにキャロンの肉体が垣間見えた。
  元となった人物の肉体から突き破る様に肉塊が出ているが、弱点となる本体の体は残っている。
  もしやと思って、ローグがつま先でキャロン自身へと攻撃を与えた。

  ギャァァァ――!!

  掠った程度であるから、肉体は完全に崩壊はしなかった。
  だが確実にダメージを与えれた。その事に、確かな手応えを感じた。

  「……なるほど、本体はあくまでソイツ自身か――」
  「良い発見だな。俺も、試すか――」

  化け物へと転じたウォーロックの肉の腕を避けて、懐へと迫ってからの一撃で巨体が大きく後退する。
  透かさず、魔力を用いた魔力攻撃で内部にダメージを与える。
  ローグとは異なり、まだ体の動く黒がさらに続けて肉塊へと攻撃を与える。
  巨体の半身が弾けて、中央で露出したウォーロックへと黒の漆黒の稲妻が炸裂する。

  凄まじい魔力の一撃は、それだけでも破壊力はとてつもない物である。
  それを弱点である本体に受けた――
  ウォーロックの口から響く悲鳴は、間近の黒が耳を塞がなければ鼓膜が破れるほどでもあった。

  「クソ野郎が、ふざけんな……」
  「耳が、イカれたか?」
  「少し、うるさかっただけだ」

  2人を挟む様に、巨大な肉塊の化け物が2人へと迫る。


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