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1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】

炉の力《Ⅱ》

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  こんなに、速く走れたのか――

  今までの自分とは、まるで別人のように軽く飛ぶように平地を駆け抜ける。
  イシュルワから遠く離れた場所へと子供達とシスターを送り、イシュルワの中でも信頼が出来る者達へと子供達を任せる。
  下層部出身の兵士で、自分の数少ない部下達に任せて、平地を全力で駆け抜けた――

  「お前は、私の事を――自由と言った。言ったのは、お前だ。なら、私は……私はの意思で!! お前を――黒竜帝の助けとなろう!!」

  遠く離れたこの場所からでも、2人の魔力を押し潰すほどに強大な魔力脅威を感じる。

  一刻を争う。

  平地を駆け抜ける足がもつれ、勢いそのままに前へと倒れる。
  その身体をティンバーが抱き抱えて、脇にヘルツを抱えたまま走る。

  「あら、ヘルツちゃんも……助けに行くのかしら?」
  「えぇ、黒が戦っているから……かな?」
  「……昔の、呼び方になっているわね。その方が、似合ってるわ」
  「――フフ、思い出したんだ。黒の強さが、羨ましかった事を」
  「えぇ、とっても強かったわよね。黒くんは――」

  ティンバーの腕から抜けて、2人は並走してイシュルワへと向かう。
  目前で、弾ける漆黒の魔力が黒とローグの物ではない。――と、理解するのに時間は必要ない。
  ティンバーが瓦礫の一部を蹴って、腰を入れた拳がで瓦礫を殴り飛ばす。
  大気を切り裂く速度で飛来する瓦礫が、ウォーロックが転じた化け物の顔に突き刺さる。

  「――ヘルツちゃん!!」
  「――!!」

  キャロンが転じた化け物が、ヘルツの襲来に気付く。
  が、その姿を視界に収めるのは不可能となっている。
  見上げた時点で、既に地面に着地しており。着地に気付いた時点で、攻撃が終わっている。

  横一閃――

  ボロボロの刀剣での全力の一撃。
  砕ける刀身――その不出来な一撃に、ヘルツは満足していた。
  不出来な一撃だからこそ、今の自分にその先が存在する。

  「あぁ、私の限界は――ここじゃない・・・・・・

  横一閃、放たれた一閃の修復が終わる。
  キャロンの不気味な笑みに、ヘルツの漆黒の稲妻が炸裂する。

  その神経を逆撫でする憎たらしい笑みを潰す為に、拳が魔力と共に放たれる。
  弾ける頭部の肉片が、未だに笑みを浮かべている。

  「……ムカつく」

  さらに溢れる魔力によって肉体をさらに大きく。より高い硬度を持って再構築される。
  黒以上の魔力量に、ハート以上の魔力出力、メリアナ以上の魔力操作――

  ――が、彼らは持ち得ない。

  王の世代最強の剣術使い  である。刀神・・に迫るヘルツの剣術の技量――
  剣の鬼・・・が、手にした斬術の最高到達点――

  そこに、魔力の最高到達点・・・・・・・・が合わさる。

  「黒、ハート、メリアナ……多分だけど、その3人でも狙って出せないでしょうね……だって、この一撃は私の覚悟・・の証だ!!」

  先程の横一閃、その程度だ。
  そう、キャロンは認識していた。故に、対した防御もしなずに攻めた。
  異常な回復力と魔力量によって、油断していた。


  皇帝との戦いは、全てに置いて気を配らなければならない――

  何故なら、皇帝は――


































  ――常に・・、新たな領域ステージに挑み続けているのだから。





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