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1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】

強い想い《Ⅰ》

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  状況は、極めて芳しくない――

  その理由は、ウォーロックの標的が判明したからであった。

  「黒――!!」
  「クソッ――!!」

  バハムートの力で、跳躍して対空攻撃を躱してウォーロックが狙う標的を守る為に素早く動く。
  空を駆けて、眼下に広がる光景に歯軋りする。

  そこには、大挙して押し寄せる。イシュルワの軍隊・・・・・・・が見えた。

  ――その狙いは、ビフトロであった。

  「――黒ッ!!」
  「――!?」

  足元から声が聞こえ、高度を急激に下げて地面へと着地する。
  目の前でから、武装したビフトロの兵士達が姿が見える。
  それを率いる人物は、黒の良く知る人物――《ルシウス・L・ビフトロ》――

  服が土や汗、火薬などで汚れた見た目にふくよかな体のこの男が前線に出ている。
  飛翔中に横目に砦の上では、ローグの仲間である。トゥーリ、ガゼルの姿が確認できた。
  砦の向こう側からは、魔力のみだが怪我人の手当に奮闘する未来みらいこころの2人も確認できた。
  
  ――全員、無事であった。

  「……今は、無事・・って所だな」

  黒が持って来て貰った水分を飲み干して、迫る敵軍の状況に付け加えるようにウォーロックの介入を知らせる。
  だが、ウォーロックなどよりも最も問題とされる存在の襲来を予期しておらず。
  黒とルシウスの2人は、揃って油断していた――

  上空から落雷のように現れた閃光が、砦の一部を着地と同時に粉砕する。

  響く爆撃音に、ルシウスが反応するよりも先に黒の体が消える。
  再び響く爆撃音の後に、砦前の防衛設備や壁などを破壊される。
  その先に、黒が土のうを背にして全身に土を浴びる。


  「ルシウス――!! 田村たむらだァ――!!」

  黒の叫びがルシウスの耳へと届く――

  だが、その時点でルシウスの真横へと敵意・・は迫っていた。
  瞬時に接敵した《田村宗治たむら そうじ》の一撃が、ルシウスの防御を打ち砕く。
  受ける寸前で腕で首を守った筈の防御を容易く上回る一撃の重さに思わず顔が歪む。

  漆黒の稲妻が大気中を走り抜ける――

  両腕で防いだとは言え、腕にはそれ相応の衝撃が伝わっている。
  完全に防げたとは到底言えないほどの衝撃が、ルシウスの堅牢な防御を容易く凌駕する。
  魔力で両腕を硬く出来なかったゆえか、首に凄まじい衝撃がダメージとして通ってしまう。

  ――やはり、完全に防ぐのは難しい。

  そう、ルシウスが感じるよりも先に宗治は動いた。常に死角から攻撃を与える事を意識して、その場でルシウスの攻撃を受けないように素早く立ち回る。
  地面を強く蹴って、迸る漆黒の稲妻がルシウスの眼前で弾ける。

  落雷でも落ちたかのように、弾ける魔力が宗治の猛攻にさらなる勢いと破壊力の2つを授ける。
  ルシウスの堅牢な守りをものともせずに、徐々にその守りを剥がして行く。

  「――最初のが、効いているみたいですね」
  「……昔よりも、断然強くなったよ。宗治くん……」
  「当たり前だ……守りたいからな――」

  振り上げた右足が、ルシウスへと振り下ろされる。
  避ける事が叶わず、防ぐ事も叶わずに肩へと踵が振り下ろされる。
  骨が軋み、魔力で強化された蹴りの衝撃がルシウスに膝を付かせる。

  「……さようなら、ルシウスさん」

  宗治の打拳がルシウスの顔面を捉え、生々しい音を上げる。
  仰け反るルシウスへと宗治が飛び掛かって、再び拳を叩き込む。
  地面を後頭部を叩き付け、確実に息の根を止める。

  宗治の拳から血が滴り落ちて、地面を赤く色付ける。

  「後は、砦を消せば……解放される」


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