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1章 機械国家の永久炉――【仕掛けられる『皇帝』への罠】
天地、揺るがす王の力《Ⅰ》
しおりを挟む黒、黄の2人はハートが創り出した空間の中で拳を交えていた。
炸裂する殴打に合わせて、魔力が弾ける。
空気が振動し、破裂音が鼓膜を破く。
だが、そんな事など構う事なく。2人は、戦った。
踏み込み、互いの間合いを侵して攻撃を叩き込む。
纏った魔力が創り出した鋼をも超える鎧が互いの魔力で粉々に砕ける。
歯を噛み締め、後退る事も恐れる事もなく。
ただ、互いの魔力が尽きるまで殴り合う。
頬を掠めた互いの拳を横目に2人が取っ組み合う。
2人は、笑っていた。
まるで、子ども同士の喧嘩のように――
互いの内側から溢れる魔力が漆黒の稲妻となって、両者の体を焼き焦がす。
黒から手を離した黄の顔に黒のドロップキックが炸裂し、特大の稲妻が弾ける。
刈り取られる意識を叩き起こして、ドロップキックの後に地面に着した黒の胴体に――黄の真横から刈り取る様な蹴りが入る。
黒の脇腹を抉って、つま先が肉を捻じる。
脇腹を抱えて、地面を転がる黒の前で黄の魔法が発動する――
詠唱、手印、方陣などは一切使用せずに魔法が行使される。
とは言え、魔法による致命傷を狙った訳では無い。
最も有効打となり得る攻撃、漆黒の魔力を用いた。内部からの魔力攻撃――それに繋げさせる為の場面作りである。
連鎖的に地面が膨らみ、爆発し、走る魔力が黒の前で飛び散る土、砂埃。
俗に言う《目眩まし》――誰でも出来る簡単な兵法で、黒から僅かな隙を生んだ。
隙きとは言え、その一瞬の時間を逃さぬように全力で駆け出す。
視界を覆った後に、動きを読ませないように多方面から同時に仕掛ける。
そのまま撹乱し、生まれた一瞬にも満たない筈の隙を多方面からの対象の一瞬と繋ぎ合わせて、1秒以上の隙を無理矢理創り出した。
その手から黒へと渾身の力が放たれる。
黒の体をくの字に曲げて、勢い良く後方へと吹き飛ばす。
そのまま地面を滑るようにして追い付き、立て直す隙を潰して追撃を叩き込む。
地面に体を縫い付け、直ぐ様渾身の力で拳を振り下ろす。
割れ、捲れ上がる地盤――。地面を走る黒色の稲妻が小石を粉砕する。
漂う小石などの小さな破片、視界を遮る土煙の下に――黒はいない。
――逃した。
反省する黄のすぐ真横から、視界を覆い隠す土煙を吹き飛ばす程の勢いを持った黒の飛び蹴りが黄の防御した腕を持って行く。
骨が軋む。直撃、と同時に魔力による強化が施される。
そのまま追撃の回し蹴りが黄の体を一回転させ、頭から地面へと落ちる。
そのまま硬直した黄へと降り注ぐ魔力の嵐を全身を固めて耐え抜く。
降り注ぐ魔力の嵐の中で、同じく魔力の嵐に体をズタズタにされている黒が至近距離から漆黒の稲妻を叩き込む。
面白い程に地面を跳ねて、ハートの広大な結界の中を跳ね回る。
こちらへと飛んで来た黄を蹴り返し、再びボールのように跳ねる。
息を整えて、再び接近する黄へと拳を叩き込む。が、今度は黄が反撃を狙っていた。
勢いを利用して、黒の攻撃を紙一重で避ける。そのまま黒へと勢いを増したラリアットで地面に叩き付ける。
爆撃でも受けたような土煙の中で、上半身を地面に突き刺して身動きの取れない黒へと黄が背骨を砕きに掛かる。
地面から飛び出した黒の蹴りと黄の蹴りが衝突、凄まじい魔力同士が衝突する。
ガラスが割れるような音が響き、互いの漆黒の稲妻が衝突する。
純粋な戦闘力でも、黄は黒と互角に戦える。
そんな相手が、黒の中に封じ込めたかつての熱を更に呼び覚ます。
魔力で幾度と衝突し、互いに拳で真っ向から挑んだ。
そんな2人だから、自ずと分かり始めた。
――あぁ、まだ全力じゃない。と――
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