stray Crow

ちさの章ーわたしの家族を紹介しますー

3

　キャンディをモゴモゴさせながら訊くわたしの姿を認めると、猫人間はそのタレ目を鋭くさせ睨んできます。子供特有の細い体で立ち上がり「あ？　お前こそなに食ってんだよ」とスゴみます。が、残念ながら全く怖くありません。
　何故なら、わたしよりも猫人間の背の方が断然低いからです。迫力というものがありません。

　猫人間はわたしの兄、境木社。同じ水鏡小学校の四年生、9歳です。

　え？　同い年ならわたしと双子なんじゃないかって？
　確かに誕生日も同じだし、普通ならそうかもしれません。けれど違います。
　とりあえず、わたしにはあと三人兄がいるので、そちらを紹介してから追々説明しますね。


　わたしは社の問いをガン無視してスタスタ歩き始めます。「おいシカトすんな能面女」とか何とか後ろでほざいてますがスルー。
　社は無類のキャンディ好きなので、バレたらきっと烈火のごとく怒ります。そうしたら実に面倒で不愉快です。
　あげれば良かったのに……と思ったそこの貴方。貴方は無粋です。わたしは社の兄としての威厳を尊重しているのです。
　例えば、エビフライが一本食卓に残っているとします。親は子供に譲ります。上の子は下の子に譲ります。
　ね？　そういう事です。

　え、意味が分からない？
　大丈夫です、言っている私もよく分かっていません。