stray Crow

慧サト

文字の大きさ
上 下
7 / 71
ちさの章ーわたしの家族を紹介しますー

6

しおりを挟む
「……カイお兄ちゃん……熱……」

 カイお兄ちゃんは、わたしの言葉にちょっと目を丸くすると、バツが悪そうに首を傾けます。
 カイお兄ちゃんは体が弱く、よく熱を出すのです。今朝も調子が悪そうでした。顔色の悪さが気になります。
 心配するわたしに、「ちさに隠し事は出来ませんね」とカイお兄ちゃんは穏やかに笑います。

「でも大丈夫ですよ。もう下がりましたから」
「……ほんと?」
「本当ですよ、嘘は吐きません。でも……」

 そう言うと、悪戯っ子のようにカイお兄ちゃんは唇に人差し指をあてます。『シーッ』のポーズです。
 そんな姿もサマになるのですから美人は得です。我が兄ながら惚れ惚れしてしまいます。

ゆう兄さんには秘密ですよ? 心配なさるから……」

 『侑』とはわたし達の一番上の兄の名です。
 カイお兄ちゃんのお願いをわたしは素直に聞きます。隠し事が増えたなぁ、とぼんやり思っていると社がつっけんどんに口を挟みました。

「なあカイ兄、腹へったんだけど」

 なんちゅう奴でしょう。カイお兄ちゃんの具合が悪かったというのに労りの言葉も無いとは。
 でも、カイお兄ちゃんは嫌な顔ひとつせず「ああ、すみません社。おやつにしましょうね」と微笑み、わたしたちを家の中へ促します。聖母なの?
 カイお兄ちゃんは料理も上手で上品で頭も良くて、本当に優しいのです。

 ……ふだんは。
しおりを挟む

処理中です...