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慶弥の章ー脇役でも全力の男ー
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「俺……弱ぇな。あのとき赤ん坊だった社やちさはともかく、侑兄もカイ兄も発症してねぇのに」
「恐怖症を患ってる人を俺は弱いとは思わないな。誰にだって怖いもんはある」
よっこいせ、と侑兄は俺の隣に座る。じじくせぇな。
俺は侑兄の服が汚れるんじゃないかとチラリと思ったがもう遅い。俺が「そうかな」と訊くと「そうさ」と侑兄は答える。
侑兄の落ち着いた声に、俺は感情が昂ってしまう。「俺……」と切り出した声が震えていた。
「俺……悔しい、侑兄……」
「慶弥……」
「悔しいんだ……」
鼻がツンとして、熱い涙が一気に溢れる。
侑兄は悲痛な声で俺の名を呼ぶと、そっと俺の肩に手を回し抱き寄せてくれた。温もりが俺に安心感をもたらし、更に涙が流れる。
「くやじぃよ……っ」
「……うん」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃに泣く。二十歳前の男がマジ面目丸潰れだけど、止まらなかった。
モールの入り口の辺りがざわつく。たぶん開店時間だ。
やっと涙が止まった俺は、「サンキュ……侑兄」と体を離す。面前の侑兄は「大丈夫か。ステージやれるか?」と眉尻を下げる。
俺はごしごし顔を拭って「おう!」と安心させるようにニカッと笑った。
「思いっきし泣いてスッキリしたし最高のステージにする! スカウト来てるかもしれないしなっ」
俺がおどけて言うと、侑兄もようやく微笑んだ。「ああ、応援してるからな」と右拳を出す。
俺も右拳を突き出して、侑兄のそれにゴツンとぶつけたのだった。
「恐怖症を患ってる人を俺は弱いとは思わないな。誰にだって怖いもんはある」
よっこいせ、と侑兄は俺の隣に座る。じじくせぇな。
俺は侑兄の服が汚れるんじゃないかとチラリと思ったがもう遅い。俺が「そうかな」と訊くと「そうさ」と侑兄は答える。
侑兄の落ち着いた声に、俺は感情が昂ってしまう。「俺……」と切り出した声が震えていた。
「俺……悔しい、侑兄……」
「慶弥……」
「悔しいんだ……」
鼻がツンとして、熱い涙が一気に溢れる。
侑兄は悲痛な声で俺の名を呼ぶと、そっと俺の肩に手を回し抱き寄せてくれた。温もりが俺に安心感をもたらし、更に涙が流れる。
「くやじぃよ……っ」
「……うん」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃに泣く。二十歳前の男がマジ面目丸潰れだけど、止まらなかった。
モールの入り口の辺りがざわつく。たぶん開店時間だ。
やっと涙が止まった俺は、「サンキュ……侑兄」と体を離す。面前の侑兄は「大丈夫か。ステージやれるか?」と眉尻を下げる。
俺はごしごし顔を拭って「おう!」と安心させるようにニカッと笑った。
「思いっきし泣いてスッキリしたし最高のステージにする! スカウト来てるかもしれないしなっ」
俺がおどけて言うと、侑兄もようやく微笑んだ。「ああ、応援してるからな」と右拳を出す。
俺も右拳を突き出して、侑兄のそれにゴツンとぶつけたのだった。
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