38 / 71
カイの章ー生きる意味ー
1
しおりを挟む買い物や掃除を済ませてから、大好きな庭の手入れをする。僕の日課だ。
花の状態を見つつ、根元に水を丁寧にかけていく。元気がない子には栄養剤も。そして「元気を出して下さい」と声も掛ける事も忘れない。
ハタから見たら危ない人だけど、植物にも感情があるらしいから別に構わないだろう。一説に過ぎないけれど。
植物を育てるのは、いい。心が安らぐ。
「やあ、いたいた。こんにちはカイくん」
道場と家を隔てる門扉が開き、老齢に近い男性が入ってくる。
ほぼ白髪のボサボサ頭に無精髭、シワの入った褪せた色のスーツ。清潔感は皆無だ。しかし、年齢の割に筋肉質で眼光が鋭い。それは刑事だった時の名残だろうか。
「竹淵さん……!」
僕はちょっと吃驚して立ち上がる。一応恩人である彼の来訪はいつも突然だ。アポなど一切ない。
「相変わらず美人だねぇ」
竹淵さんは頭を掻きながら僕の方へやってくる。久々会ったが軽口も相変わらずだ。僕は微笑みながら、もてなしのお菓子を何にしようか考えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる