stray Crow

社の章ー秘密の欠片ー

1

　その日は眠れなくて、ずっと部屋で起きていた。ま、明日休みだからいいけどな。
　学習机にかじりついて、図書館からコピーしてきた事件のデータを読む。もちろん俺たちが生まれた年のだ。


　まだ手がかりは何も掴めていない。何しろ一年分だ。ちさに手伝ってもらえたらいいが、ぼんやりしたアイツの事だ、見落としがあるかもしれない。危なっかしいんだ。


　そんな時だった。俺の部屋のドアがノックされたのは。日本家屋だが、俺たち子供部屋は洋室だ。
　時計を見ると午前２時を回っている。幾らなんでも兄貴たちも寝てるだろう。こんな時間に誰だ？

「社……」

　ドアを開けると、ちさが立っていた。表情がねえから夜中見るとこえぇなコイツ、と思いながら「何だよ」と訊く。すると「とりあえず部屋入れて……」と要求してきた。何だ？　何か様子が変だ。

　中に入れると、座るでもなくボーッとちさは突っ立っている。
　こいつ……もしかして寝惚けてんのか？声を掛けようとしたその時、ちさが口火を切った。

「今……夢、見た。小さい頃の……わたし、忘れてた……」

　俺は眉をひそめる。「忘れてたって……実際あった事か？」と問うと、ちさは小さく首肯した。