stray Crow

慧サト

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社の章ー秘密の欠片ー

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 侑兄はゆっくりと目を開ける。腹を括ったように強い眼差しで俺達をぐるりと見た。

「出掛けるぞ。慶弥、今日はバイト休みだったな」
「あ、ああ……」
「俺は竹淵さんに車を借りてくる。カイ、お前は皆の支度を手伝ってやってくれ」
「はい……」

 慶弥とカイ兄に早口で告げると侑兄は踵を返し玄関に向かう。その背に俺は「侑兄!」と呼び掛けた。立ち止まった侑兄は「安心しろ」と振り返らずに言う。


「『俺達の家』に帰るだけだ」







 妙な空気のなか朝食を食べ、俺達は門の前に準備された竹淵のジジイの車に乗り込む。
 旧いタイプの白い普通車だが、俺達は余裕で座れた。タバコの臭いが染み付いている。それが不愉快で顔をしかめていると、運転席の侑兄が後部座席を見た。ちなみに助手席にはカイ兄が、後部座席には俺とちさと慶弥が座っている。

「お前達、御守りは持ってるな?」

 侑兄が確認し、俺達は頷いた。
 御守りは、いつも肌身離さず持っているよう侑兄から渡されているものだ。見た目は普通の御守り。中身は知らねえけど。
 侑兄も頷くと車を発進させる。ちさが「お菓子持ってきた方が良かったかな……」と呟いた。どこまでもマイペースな奴……。
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