転生悪役令嬢と不良くん。[第一部*完]

高殿アカリ

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第一章 再会は突然に

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「聞いてない聞いてない。これでストーリー変わっちゃったらどうしてくれるわけ?!」

「あ? つか、ここどこだよ」



真緑の髪をした不良くんの呟きに、私の頭痛は最高潮に達した。



「っ、うぅ」



思わずその場に蹲った私の視界に、ノエルたちと不良くんが映る。



「大丈夫か」



ふわりと浮遊を感じ、不良くんに持ち上げられたのだと知った。



「お前、何者だ!」



レジナルドが腰に下げていた長剣を引き抜く。

サイモンはノエルを後ろ手に庇い、警戒している。



「あたまが、いたい」



私の呟きは不良くんにしか届いていない。



「おい、今は争っている場合じゃねぇ。病院はどこだ」



紳士に子どもたちを諭す高校生の姿に不覚にも胸がきゅんとした。

しかし、当に限界を超えていた頭痛に私は意識を手放したのであった。




目が覚めた時、私は乗ってきた馬車の中にいた。

がやがやと外から数人の声が聞こえてきた。



先程までの痛みはすっかり無くなり、代わりに不良くんの存在を思い出していた。



「トラックに轢かれたとき、助けようとしてくれた人、だよね?」



何故、彼はこの世界にいるんだ。

彼が私と同じ転生者でないことは、現代の姿のままであることにより明白だった。



元の肉体のままこちらに来てしまった。

それはつまり、元の世界の彼は死んでいないということになる。



そこで私の思考は停止した。

で? ってことだ。



私が転生した理由も、不良くんが転移した理由も、正直納得できる理由があるのかどうかすらも、今の私にわかるわけがなかった。

どう考えても素材が足りない。幾ばくかの仮説を立てることは可能だが、それを立証する方法も時間もなかった。



あちらの世界にいた不良くんが『こいまほ』の世界に来てしまったことで、彼は恐らく行方不明扱いになっているだろう。

彼が元の世界に戻る方法を場合によっては一緒に探してあげることも吝かではない。



とは言え、まずは今日のことだ。

今日を乗り越えなければ、最低な明日が待っていることは明白で。

幸いにも、イレギュラーな出来事が起こったとは言え、今日はまだ終わっていない。



否、イレギュラーな不良くんという存在の介入により、最悪の事態は防げたのかもしれない。

この頭痛を利用させてもらおう。渡りに船、というやつだ。
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