4 / 27
4
しおりを挟む
十年後、シノニムは魔王城へと向かっていた。
あの日の復讐心だけを頼りにここまでやってきたのだ。
魔物討伐に勤しんだ彼の十年間を人々は「勇者」と名付けた。
真っ赤に染まる髪を揺らし、勇者となった彼は城の内部へと足を進める。
行く手を阻む魔物たちをなぎ倒しながら、大広間を駆け抜けていった。
頬に付着した血液を乱暴に手の甲で拭う。
上がる息を整える間もなく、シノニムは謁見室に続く観音開きの扉を大きく力いっぱいに押し開けた。
そこにはこの世界に魔物を蔓延らせる諸悪の根源、「魔王」がいるはずであった。
だが、赤い革張りの立派な玉座に座する魔王の姿を見て、シノニムは驚愕に口を開いた。
「どうして、君が……」
立ち竦むシノニムに向かって、玉座に座る少女は懐かしさを含んだ微笑みを魅せた。
「久しぶりね、シノ」
シノニムの胸元にかかっているペンダントが重くのしかかったような気がした。
彼は乾いた唇を舐めて口を開いた。
「……麗」
そう、魔王城にいたのは幼馴染の少女、初恋の君だった。
成長した春野麗の姿がそこにあった。
あの日の復讐心だけを頼りにここまでやってきたのだ。
魔物討伐に勤しんだ彼の十年間を人々は「勇者」と名付けた。
真っ赤に染まる髪を揺らし、勇者となった彼は城の内部へと足を進める。
行く手を阻む魔物たちをなぎ倒しながら、大広間を駆け抜けていった。
頬に付着した血液を乱暴に手の甲で拭う。
上がる息を整える間もなく、シノニムは謁見室に続く観音開きの扉を大きく力いっぱいに押し開けた。
そこにはこの世界に魔物を蔓延らせる諸悪の根源、「魔王」がいるはずであった。
だが、赤い革張りの立派な玉座に座する魔王の姿を見て、シノニムは驚愕に口を開いた。
「どうして、君が……」
立ち竦むシノニムに向かって、玉座に座る少女は懐かしさを含んだ微笑みを魅せた。
「久しぶりね、シノ」
シノニムの胸元にかかっているペンダントが重くのしかかったような気がした。
彼は乾いた唇を舐めて口を開いた。
「……麗」
そう、魔王城にいたのは幼馴染の少女、初恋の君だった。
成長した春野麗の姿がそこにあった。
0
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる